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2025年1月の読書メーターまとめ

Ryo0809
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感想・レビュー
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144ナイス

2025年1月に読んだ本
17

2025年1月にナイスが最も多かった感想・レビュー

Ryo0809
旅を人生になぞらえたロードノベル。筒井作品にしては文学色が強く、軸がしっかりとしている。旅によって成長し、知識を得、人々と交わり、恋情が生まれ、故郷に戻り、さらに旅立つ。歴史、科学、政治、経済、社会学や文学など、旅人ラゴスは訪れる場所場所で伝道を続ける、高潔な人物像で描かれている。時代の水準に合わない急激な改革は、社会を却って破滅させるというラゴスに納得感を覚える。何かにつけて行き過ぎた風潮の強い現代社会への警告だったのだろうか…。
が「ナイス!」と言っています。

2025年1月の感想・レビュー一覧
17

Ryo0809
読了したといえるのか…。ハードSFの色合いが濃いのだが、SF一辺倒で押しまくるタイプの作品ではない。現代最先端の技術がもっと発展した未来社会のなかの人間個人を描く、といえばよいのか。それも、自己認識や幸福感、家族愛、人間愛という個人レベルへの課題に踏み込んでいる。人間は物質の集合体なのか。機械のように精密なのか。科学的にはそうなのだろうが、魂や心の問題はどうなるのか。この辺りの展開具合が複雑なのだ。科学技術と人間は、明るい未来だけではないのでは、と読ませるところにイーガンのテーマがあるように思える。
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Ryo0809
熟読しようと思いながら、面白さに引き込まれてページを繰る手が止まらない。「侍女の物語」の続編で、アンサー・ブックの位置づけにあたる作品だが、同一のバックボーンを持つ、双璧を成す仕上がりである。主要三人の視点から進行する抜群の構成とナラティブの豊かさ。全篇に漂う不安と疑心暗鬼。じりじりと昂る緊張感が終盤になって真迫の脱出劇へとつながる。歴史上、繰り返されてきた愚行をディストピアとして現出させたアトウッドの手腕と、きっちりと反映させた翻訳。素晴らしい翻訳作品に仕上がっている。
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Ryo0809
昔話風のファンタジー。野生児そのままともいえる少年と首だけの侍が繰り広げる奇妙な旅。過去を隠された二人が、次々と訪れる国々で出会う人々。少しずつ、おぼろげに明かされてゆく過去。御首と敬われたり、怨首と蔑まれたり。結局は、知恵をつけすぎた人間が招くジレンマ。「波賀理の国」を過ぎた二人が、たとえ忌わしい過去を生きたとしても、一緒に旅を続ける姿に安心を覚えた。
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Ryo0809
ほのぼのとしながら読了。鬼たちのユーモラスな言動が楽しい。小鬼と民の物語は、日本の昔話の雰囲気がたいへん良く、本来なら悪役の鬼が少女を懸命に助ける姿にホロリとする。ファンタジーでもあり、昔話でもあり、美しくも儚く、人情もののようにみえて世の常の厳しさを教えているようでもあった。各話の出だしの数行は、含蓄に富む。西條奈加の奥行きの深さが伺える作品であった。
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Ryo0809
圧巻の歴史ミステリー。第二次世界大戦のナチ戦犯を追いつめてゆく姿を描く。戦犯者として故国を離れ、米国で暮らすハントレスを含め、登場人物たちの造形は非常に優れている。そのモデルとなる実在者があったとはいえ、異なるキャラをここまで落とし込んで描くのは、並大抵の創造力と筆力ではない。出身もDNAも異なる人物の出会い・交錯とストーリーの妙が、この作品の大きな魅力ともなっている。今回も、ケイト・クインは実に豊饒な読書タイムを提供してくれた。
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Ryo0809
ファンタジーの背景はとても興味深く、趣も豊かなものだ。剣を手離し、勾玉からも遠ざかることによって、神話の時代から人の時代へと向かう世界。しかし、主要人物三人のドタバタが青臭くて、徒に紙幅を重ねた感を拭えず、大人が楽しめるファンタジーとはいえない。日本の神話時代を題材にするならば、もっとスケール感の大きな世界を描いて欲しかった。それが出来る作家だと期待したい。
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Ryo0809
スパイ小説というよりは、殺し屋の話。延々と続く、ノンストップのアクションと殺しの世界。イラン侵攻を正当化する情報操作がチラつく、アメリカの暗部にも繋がるような仕立てだが、エージョントであっても、正義の心と矜持はあるとでもいえばよいのだろうか。ストレートなアクション映画にした方が映えそうな作品だった。
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Ryo0809
吉原の花魁・夕顔が町奉行を助けて事件の謎解きをする連作作品。吉原の風習や江戸言葉が散りばめられていて愉しいのだが、肝心の謎解きは物足りない出来。巻末の付記が夕顔の生い立ちを明かし、夕顔の冷めた心を述べる仕掛だが、これはベタな仕上がりというもの。全体的に躍動感に乏しく、見せ場のない芝居のような作品であった。
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Ryo0809
ディストピア小説の傑作。オーウェルの1984年にも匹敵する作品と思われるが、本作のディストピア世界は過去への逆行として描かれる。反フェミニズム、宗教教義の対立、人種差別、神権独裁政治、特権階級とその他の身分の分断社会、血の祝祭、反逆者の粛清…、などなど、人類が経験してきた、およそ負の遺産が次から次へと現れる。最終章の歴史学会での演説は、果たして人類がこうした負の遺産から学び、暗黒からの脱却が可能だと示唆しているのであろうか。むしろ、権力に溺れる人間の性を警鐘しているように読めた。
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Ryo0809
日本神話、倭建命を題材としたファンタジー。大碓皇子と小碓尊の出会いと確執、そして戦い。小碓尊が手にした剣は草薙の剣のことなのか。古事記では兄弟として描かれ、怠け者の兄を乱暴者の弟が討ち、その勇を畏れた実父景行天皇に疎んじられ、九州征伐に向かう…となっている。上つ代の一大イベントである国内統一の大伝説が始まる。空色勾玉の続編で、輝と闇の二元論として国の成り立ちをとらえている。小碓尊の子ども時代が長く描かれ、やや冗長かと思われるところが難点だが、下巻の展開に期待したい。
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Ryo0809
異形SFの作品集。圧倒的な世界観を描く作家。衝撃が大きくて、重たくて、一話読むごとに休憩をしなければ次に進めない異形ワールドが続く。構成の妙というのか、筆致の極みというのか、登場人物とテーマが研ぎ澄まされている。こんな作品が創れるのは、文学でしかできない。まさに感情まで共有できる、いや、否応なく奪い去られるかのような世界が展開されている。読者としてこの世界を俯瞰的に観ているのではなく、作品のなかの登場人物の一人として目撃しているのだ。力作。
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Ryo0809
旅を人生になぞらえたロードノベル。筒井作品にしては文学色が強く、軸がしっかりとしている。旅によって成長し、知識を得、人々と交わり、恋情が生まれ、故郷に戻り、さらに旅立つ。歴史、科学、政治、経済、社会学や文学など、旅人ラゴスは訪れる場所場所で伝道を続ける、高潔な人物像で描かれている。時代の水準に合わない急激な改革は、社会を却って破滅させるというラゴスに納得感を覚える。何かにつけて行き過ぎた風潮の強い現代社会への警告だったのだろうか…。
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Ryo0809
掌短編集。昭和53年~56年の作。時間を経て読んでみても、天才・筒井康隆の世界が炸裂。SF作家からスタートした経歴だが、この時代の作品はSFにユーモアやドタバタ、ブラックなどの作風を取り入れて、独特の世界を描き出している。赤塚不二夫、山下洋輔、タモリなど、斯界の先鋭の世界と通じるものを感じる。「家族八景」、「大いなる助走」や「文学部唯野教授」など、ポツリポツリと読み拾っていたが、他作品もまだまだ読み続けてみたい。
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Ryo0809
台湾の裁判を巡る熱気ある群像劇。先住民族、漢民族、労働移民などが混然一体となり、さらには法曹界と政治、そして巨大漁業産業の脱法行為が絡む…という仕掛け。移民による殺人事件に対しての死刑の是非を問うのがテーマだが、それだけでなく、現代台湾の複雑な国民感情や貧富の差、生々しい生活感など、読み処は多岐にわたる。ポピュリズムに傾く政治と感情論に奔る民意に一石を投じる法務大臣の仕掛けには、正直、震えるほど怖かった。スピーディな物語の進行は、TVドラマの脚本を思わせるが、疾走感があって惹き込まれた。
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Ryo0809
戦争という国家の嘘、善人ぶった行動の裏にある傲慢、革命と恋愛、デカダンスと自己欺瞞…。太宰の目に映る世界に真実はどこにも見い出せなかったのだろう。深い諦念と生きる意味の喪失が、作品のなかに色濃く描かれている。告白形式で綴られる物語が、それぞれの人物の内面を赤裸々に示す。その手腕も冴えている。繊細で虚弱を思わせる作者像はどこにもなく、流麗で美しい言葉のなかに太宰の心の叫びを感じさせる。
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Ryo0809
何とも嫌な題材をさらに劣悪化した小説。東大生5人と女子大生1人。それを取り巻く家庭環境と、野次馬たち。現実感が全くない情動と心理。デフォルメのし過ぎによって、ひたすら「嫌」を際立たせているのだが、これを力作といってよいのかは甚だ疑問符が並ぶ。柴練選評を読んでも、どの選者の論にも賛成できない。有罪判決がなぜだかわからない犯罪者の思考回路に、カタルシスなどどこにもない。それどころか、本来なら当たり前で真っ当な反応(終盤に描かれるつばさの兄と大学学長の態度)が救いと読めてしまうところに、怖さを感じる。
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Ryo0809
競馬馬の物語。サラブレットの厳しい生涯を軸に馬主、牧場主、騎手、調教師、装蹄師、獣医、厩舎員、その周辺の家族の姿を描く。気性荒く、一筋縄ではいかないサラブレットと前科持ち騎手との交流が、火花を散らしながらも、いつしか一体となっていくところが一番の読ませどころか。牧場経営の難しさも加わり、競馬の世界が生々しく描かれ、興味深い。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2023/04/30(661日経過)
記録初日
2019/09/15(1984日経過)
読んだ本
421冊(1日平均0.21冊)
読んだページ
192160ページ(1日平均96ページ)
感想・レビュー
421件(投稿率100.0%)
本棚
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