現代的なテーマでめちゃくちゃ今っぽい。作者本人を彷彿とさせるキャラクター、そして当事者性もありセンセーショナル。登場人物も10代〜50代とバリエーションが広くフックが多い。もうこれは全方面に対してそつがない。

山崎佳代子さん最初期詩集。すごい、ことばはそのままにイメージがかなり違う。特に〝サーカス列車〟は新しい詩とはその様相が全く違い、面食らってしまった。また〝サムエルの帰還〟〝天国の手紙〟など、直接的ではない美しい表現による残酷さ、そのキレの良さに詩人の怒りが滲むようだった。

最後のまとめを読むと大まかな流れを復習できる。教科書のような指南書。

長い詩を読んでいるようでもあり、幻想小説のようでもある。もしくは民話や行動伝承のような…とは言ったものの、とれも似つかわしくないようにも感じる。つまりは独自性が高く、それでいて山崎佳代子さんの翻訳も相まって非常に奥深い読後感。とても静かだ。

一気に読んでしまったのでまた再読する。 ことばの一片一片に重量があり、不意に胸をひと刺しされるような一文に出くわす。「かけがえのないものたちをささげのもにして　わたしたちは生きのびる。」誰かを土台にして、何かを犠牲にして、私たちは生きながらえている。その実感をひたすらに、克明に曝け出し、刻み続けている。石牟礼道子の詩は、私自身の浅はかさを照らす光のようだった。

ランダムな作品の書評のようでいて、しかし全編を通して常に石牟礼道子の存在を感じる。恣意的なのかわからないけど。ほとんど読んだことのない書籍を取り扱っているし、気になる本もたくさんあったので読んでみたい。しかし、中途半端な読後感で歯痒さがある。それも読みたさにつながるのかも知れない。

再読） やはり自分にとってはまだ感想を捻り出すことも難しい。が、個人的にはベンヤミンについて書いた表題作「土星の徴しの下に」はとても好きだ。土星の下に生まれたメランコリー気質のベンヤミン、あまりにも不遜かもしれないが私はそこに自分を重ねた。だからベンヤミンの書くものが好きで、ソンタグも好きで、でも分からなくて何度も読み返す。嫌になってしまうくらいに愛おしいと思う。

この素朴さにシュティフター作品を思い出した（一作しか読んでないけど）。しかしそれよりも叙情的で瑞々しさがあるように感じた。「みずうみ」の印象だからかな？しかし「マルテと彼女の時計」や「広間にて」の老いの描写が沁みた（みずうみも老人といえばそうか…）。このシンプルさは強い。いつまでも普遍である。

ハン・ガンの『ギリシャ語の時間』に「君は哲学をやるには文学的すぎるよ」とあり、それを読んだとき私はベンヤミンを思い出していた。ベンヤミンは哲学というにはあまりにも文学的すぎ、詩情にあふれている（翻訳の良さもあると思うが）。特に解説で披露された欄外のテキスト、「ずっと口に出されなかったことで、そうした名は擦り切れ、透明になった」と言う部分。「マラルメの詩の言語領域に比肩する」と。ああ、逆にマラルメを読んでいないが！そうなのだろうと！思わずには居られない。私にとって彼は文学者であり、詩人でもあるのだから．

現代的なテーマでめちゃくちゃ今っぽい。作者本人を彷彿とさせるキャラクター、そして当事者性もありセンセーショナル。登場人物も10代〜50代とバリエーションが広くフックが多い。もうこれは全方面に対してそつがない。