「冬の気配というものは、いつも何か精神的な感じがする。ひとは自分という建物の一番奥に籠もり、そこにあるわずかな炎のそばに身を置く。最後の埋み火、永遠の炎のひとひら。そのほんの麦粒ほどで、ひとは生きられる」
ただ力作だけにできたらほかの訳で読みたかった。村上春樹の訳はどれも彼個人の色が出すぎててわたしは信頼できない。たまに原文のスタイルと合うケースもあるけどそれは彼から寄せた結果とはいいがたいし。語尾の「〜さ」、「いささか」、「または」「もしかして」の両方で「あるいは」を多用する(同ページ内で複数回出てくるのも珍しくない)のも完全に彼の個人的な語彙だった。「ハンドジョブ」とカタカナにして注をつけたり、「瞬間」でちゃんと意味の通る箇所で何度も「モーメント」にしてるのも自身の美意識の問題だとしたら不誠実だと思う。
少女のころ見てた漠然とした世界と反抗心がしみわたる「雌牛事件」「さくらんぼ」、有機的な愛の交感って感じの「フォン・ガイエン氏の夜の出逢い」「とりわけ奇妙な愛の物語」がとくに好き。第3章は正直もうどれもすばらしいけど、「変身」から「もろびと声あげ」で締める構成まで完璧だった。
水蛇様はじめまして、いつも感想にいいねいただきありがとうございます。この本とてもよかったです。また水蛇様の感想の文章素晴らしすぎです。私は、「国家の反逆者」と「間借り人たちのクリスマス」が特に心に残りました。素晴らしい作家、素晴らしい本をご紹介いただきありがとうございました。
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