全体を通してとても心地良い。私は数学科学部卒で卒論も英語の論文を訳して要約するだけという、研究に没頭したことのない人間だけど、研究室・院生の雰囲気とか大学時代のお金や時間のやりくりとか、すごく懐かしい。主人公自体が過去を振り返って執筆しているので文体にも懐かしさの表現が多く、読んでいて感傷的になる。そして寡黙で謙虚で一生懸命な主人公を通じて心が落ち着いていく。色々考えすぎてるかな、もっと本質を見ようと思える。一昔前でありながら「人それぞれだよ」という考えが一貫していて、森博嗣作品は常に穏やかにかっこいい。

新しいガリレオシリーズ（文庫）が売ってる！と思いすかさず読了。ここ数ヶ月東野圭吾さんを読んでなかったが、本当に読みやすいと実感。スラスラ読めて内容も入ってくる。それでいて内容もブラックショーマンみたいに軽くなかった。たったこれだけのボリュームでこんなに引き込まれるなんて、なんて面白いんだろう。欲を言えばちょっとでも物理があったらより満足度高かったかな、普通にガリレオ先生が天才で鋭いだけで解決してしまったので。「むかし僕が〜」は全く覚えてなく実家に置いてあるので帰省したら絶対読まねば。