るながこのポジションにいるのは感慨深い。好きなキャラばかりのキャラクター小説でこんな高品質なホラーSFをやってくれるのは本当にありがたい。

思ったより和風怪異譚として読み応えがあった。おどろおどろしい世界観と、撫子/アマナの清廉な相互感情とのコントラスト。撫子のあどけない疑問文のセリフが、苛烈な能力とのギャップも相まってことごとくかわいい。バトル描写では、視覚的な情報が足りずにイメージを想起できない箇所がいくつか。

るながこのポジションにいるのは感慨深い。好きなキャラばかりのキャラクター小説でこんな高品質なホラーSFをやってくれるのは本当にありがたい。

前半、空魚自身を含む色んなキャラによる、空魚（と、鳥子との関係）についての考察が読める。それぞれ腑に落ちる内容でおもしろいし、そもそもこんな多面的な考察に耐え得る人物造形になっているのがすごい。後半は、なるほどこの作品らしい落とし所。ただ、ここまで引っ張ってきたので現実世界での解を読ませて欲しかった気もする。

一段落ついて第一部完という感じかな。裏世界でやるこっくりさんの説得力たるや。

1冊丸ごとTさんの回。空魚を取り巻く環境が異常なので、ひとたび空魚が記憶喪失になるとおもしろいことになる、というのが分かった。あのビンタは印象的だった。色々な感情が渦巻いて整理できずに思わず手が…という感じでリアルだった。

主要キャラ総出演のラブホ女子会。ヘタレの空魚とグイグイくる鳥子の取り合わせは毎回楽しい。『斜め鏡に過去を視る』…この感情の追体験は鮮烈。相手の気持ちを「理解する」どころではなく、深く心に刺さる。

『招きの湯』と『裏世界夜行』で、空魚と鳥子の想いの非対称性がはっきりしてきた。そして非対称のまま裏世界の緊急事態を絡めて強引に関係を進めてしまう力技。

ラストシーンが圧巻。空魚の手が感じ取っているものが、ダイレクトに読み手の脳に伝わってくる。映像作品ではなかなか得られない体験。これぞ文芸。

裏世界の怪異はことごとく表世界の常識の埒外にあって、それを空魚目線で唐突に視ることになるので結構怖い。この巻も、冴月の影を一生懸命鳥子から遠ざけようとする空魚の本能的な嫉妬ムーブがかわいらしい。

鳥子のような子と裏世界で怖い体験を共有し、表世界でパーソナルスペースを掻き乱されたらさもありなんという感じである。無意識に冴月への嫉妬心が湧き上がってしまうのが微笑ましい。