読書メーター KADOKAWA Group

2023年の読書メーターまとめ

那由田 忠
読んだ本
8
読んだページ
2775ページ
感想・レビュー
8
ナイス
476ナイス
月間平均冊数
0.7
月間平均ページ数
231ページ

年間・読書メーターまとめ

年間でナイスが多かった感想・レビュー

那由田 忠
彼が失敗作として公表しなかった中編を読んでいて、『~ハードボイルド~』を書いたのでこの新作にどんな意味があるのかと放置していたが、コロナ禍を超えて生まれた意義のあるものとの自己評価を聞いて読み始めた。ある意味著者のベストと言える気がする。文体の穏やかさが様々な物語と主体を超えて流れ続け、虚実の入れ替わる不確かな世界のありさまをしっかり提示し得たように感じた。二回目に壁に囲まれた世界に入ると、本体はもう以前の本体ではなくなっているという、不確かな状況が実は現実の世界なのかもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
那由田 忠
知人が感想を書いてよい本という思いがあったもののその部分が記憶になかったので(どんな話かを忘れていた)読み直そうと思った。収容所という極限状況で人々がどのように行動するかを(ユダヤ人の傾向かも)知ることができる。雑用をさせるために残虐を好む者が監督役に引上げられる(カポ―)。ナチスであっても優しさをこっそり示す者と、残虐性を際立たせる者がいる。良心を持つ者はどの集団にもいて、自分が苦悩に耐えて生きる価値や希望を持つことが大切と強調している。
が「ナイス!」と言っています。
那由田 忠
イギリス人の伝統的生きざまの一例を、国際政治にも関わるダーリントン卿の下で働く、謹厳実直な執事スティーブンスの人生によって明らかにする。大邸宅を持つ貴族の生活ぶりや執事の役割など知らない、一般読者に向けてあるべき執事像をしつこく語り、同じく実直な執事であった父親が晩年に無様さを繰り返す様を、ミス・ケントンとのやり取りの中で思い出す。語られないのが本人の日常的な感情で、美人が苦手で独身を貫く様子から様々な推測を広げられる。二人の間にほのかな感情があっただろうけど、恋愛に発展しそうにないものと思える。
が「ナイス!」と言っています。
那由田 忠
22年秋の時点でまとめられた。21年から軍団を終結させたブーチンの意図や、22年春からの2500㎞もの前線で始まった全面侵攻、書かれた時点で、ヘルソン奪還前ではあるがウクライナが主導権を握りつつあった。その中で、ロシアからは「本気を出していない」戦い方があり、国民士気をベースに欧米からの武器支援で全面抗戦を続けるウクライナという、特殊な戦争についてもう少し突っ込んで書いてほしかった。バイデン政権の、核攻撃を防げるという見込みを持ちつつも武器支援においてのびびった態度への批判が弱いということかな。
が「ナイス!」と言っています。

年間でナイスが多かったつぶやき

那由田 忠

哲学入門 (ちくま学芸文庫) >> 二十数年前に読んだものの、冒頭にテーブルが出てくるところ以外の記憶がない。改めて旧本と比べると、哲学なので難しい用語の訳し方がかなり違ったためもあろう。中村秀吉訳では、現象が外見であり、センスデータという訳がなかった。説明はかなり丁寧で易しいものであるが、イギリスの思想家的にとても丁寧な論理展開をしているので、普通の人には辛いだろう。でも、カントなどと比べればじっくり考えれば理解可能と思う。

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那由田 忠

街とその不確かな壁 >> 失敗した中編作品の書き直しと聞いて、『ハードボイルドワンダーランド』で一応やった後になぜと思って読む気が起きなかった。雑誌に米国大学の講演で思いを述べたのを読んで意義があったと気づいて手に取った。個々のコメントでも「相変わらず言語明瞭、意味不明」とあったが、文体としては最高レベルに達したと思いつつ読んでいる。今までと比べて異世界のありさまがさほど妙に思えない点、本物と影とが入れ替わりながら生きるなど素晴らしい作品と考えている。

が「ナイス!」と言っています。
那由田 忠

灯台からの響き >> しばらく小説類から遠ざかっていたけれど、NHKのラジオドラマでこれが取りあげられたのを機会に読むこととした。初の宮本輝作品となる。少し読み始めて夫婦の人間観察が深すぎるなあと思っている。この灯台話を書くために宮本さんは灯台巡りをどれほどしたんだろうか?

が「ナイス!」と言っています。

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