②オブライエンの「正直であろうとする文章。命を削るような思いで書かれた文章」に向き合い続けた、著者の真摯な筆致が胸を打つ。また構成も素晴らしく、まず読者は著者の評論を通じてオブライエンの志向性や彼の想像域がインプットされ、その上で巻末に収録されたインタビューを読み始めることになる。すると、まさに自分も著者とともにオブライエンに会いに行くような感覚が生じるのである。感慨深かった。
③「結局、戦争の話とは人間についての話なのだ」と『ディスパッチズ』のマイケル・ハーは語っている(オブライエンは「本当の戦争の話というのは戦争についての話ではない。絶対に。」とも)。だから逆に言えば、これだけ数々の戦争が起き続け情報として届けられ多くの人が語るようになったこの時代において、人間についての話が語られていなければそれは戦争の話にはなりえないのだということを教えてくれる。そこは肝に銘じたい。
いちおう心の中でマッピングみたいなのをしているつもりです。
が、どういうつもりで読んでいるのか自分でもまったくわかりません。
皆様の読書のご参考になれば幸いです。
【Most Impressive Book 2024】
★川崎祐『光景』(赤々舎、2019年)
【MIB Back Number】
〈2023〉該当なし
〈2022〉該当なし
〈2021〉エドゥアール・グリッサン『第四世紀』
〈2020〉中西夏之『大括弧』
〈2019〉トマス・ピンチョン『重力の虹』
〈2018〉エドゥアール・グリッサン『〈関係〉の詩学』
〈2017〉ホフマンスタール『チャンドス卿の手紙 他十篇』
〈2016〉ハーマン・メルヴィル『白鯨』
〈2015〉管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』
〈2014〉ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』
〈2013〉リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
〈2012〉中上建次『地の果て 至上の時』
〈2011〉岡真理『アラブ、祈りとしての文学』
〈2010〉ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』
〈2009〉ティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』
【2025年の目標】
読んだ本の感想を書きたい。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます