清濁併せ呑むそんな短編集です．初めはあまり共感できないなぁと思っていた主人公がその事情がわかってくるにつれて少しずつ寄り添えるように感じていくのがなかなか快感でした．ちょこっとだけ出てくる人物が妙に気になったりもして良い一冊でした．町田さんの作品では私にとってベストかも知れません．

今回もなかなかすごいものを読ませてもらいました．類稀な美貌と才能を持つ与一をめぐり師匠・兄弟子・師匠の息子と妻らの思惑が入り乱れ，傷ましい事件の真相が紐解かれるその時に天が授けた輝く玉を守ろうとした人たちの真実が明らかになります．ノンストップで読み切りました．

西川が個人的にターゲットになり被害者となりセーフハウスに籠るという展開．でも犯人側の動機が弱いしストーリーとしてもあまりハラハラドキドキ感がなく盛り上がりに欠けるかな．男性陣が老いた先の将来に不安を感じているのに対して女性陣は実家を改装してコーヒー店をと前向き姿勢なのが対比的で面白い．

ピーボ，なんて賢くて優しいんでしょう．でもお話自体は結構シビアなもの．すべての人がファシリティドッグに癒やされるというわけではないでしょうが少なくとも警察官を相手にするよりは穏やかな心持ちになりつい本音がポロリと出てしまうのかもしれません．なかなかおもしろい設定でした．

性犯罪の被害者が受けたはかり知れない心身の傷に対して加害者側の罰の軽さとのギャップに憤りが募ります．家族をも巻き込んだ一連の事件，どう着地するのか最後までわからずぐいぐい読ませられる緊迫感がありました．夫のことを主人，と普通に言っていましたがそれがNGというのは意識したほうがいいのかな．

チャボの桜から見た人間や鳥の世界．特にご主人の茂さんへの信頼と愛情は何ものにも変え難い．勤め先でうまくいかず病んでしまった茂さんが明日町商店街の祖父母の店に居候しながら新たな人たちと繋がりながらゆっくり丁寧に生活を立て直していく再生物語．桜が可愛すぎる．

最初から犯人わかっちゃうのかぁ…とちょっと残念な気持ちで読み始めましたが，なるほど～，一筋縄ではいかないわけね．主人公がワトソン度を上げていく様子がなかなか良かったし終わり方もこれしかないよね，という納得のいくものでした．

劇中劇．とても面白くて引き込まれました．エラリー・クイーン，昔読んだなぁ～．ホームズと秋人ははまり役で違和感なしでした．さて円生の個展プロデュースby葵はきっと大成功でしょうね．

まだまだ存じ上げない作家さんがたくさん．その中でも私にとって一番だったのは杉山幌さんの作品．友達の留年を心配した大学生の僕が教授に思いもかけないことを言われて真相に気づく．でも読後感は良い．全体的にちょっとこわい話が多い中ホッと一息つけました．

いくつかの事件が微妙に絡まり一つに繋がっていくさまが丁寧に描かれていますがこのシリーズちゃんと順番通りに読んできていないので個人個人の関係性がいまいち掴めておらずちょっと混乱．負傷した津久井の決断が良い方向に周りを誘導するようでこれからが楽しみです．

懐かしいエピソードがたくさん．葵とホームズとの初期の関係性がもどかしくも新鮮です．残念ながら図書館本なので京都の巡り方は手元において将来的なガイドブックにというわけにはいかないのですが…

今回はお春さんに振りまわされるお夏さんの姿が笑いを誘って楽しく読めました．いくつになっても恋心を大事にするお春さん，可愛らしいです．茶飲み友達でもいいなぁ～．

性犯罪の被害者という重いテーマに私的制裁という究極の選択を加えたなかなかハードな内容です．当事者になって初めて本当の苦悩が分かるのでしょうからここでその是非を論じることはできません．ただ加害者がこの世から消えても被害者の記憶は消えたりしないのは確かでしょう．う〜ん，答えは出ず堂々巡り，な感じです．

清濁併せ呑むそんな短編集です．初めはあまり共感できないなぁと思っていた主人公がその事情がわかってくるにつれて少しずつ寄り添えるように感じていくのがなかなか快感でした．ちょこっとだけ出てくる人物が妙に気になったりもして良い一冊でした．町田さんの作品では私にとってベストかも知れません．

再読．すっかり忘れていました．続きを読みたいと思い読み直すことに．平凡な男女が修羅場をくぐりながらしたたかに強くなっていきこの先の更なる試練に期待（？）です．

葵inニューヨーク編．早速鑑定眼を発揮させて特待生に．利休に守られながら着々と課題をこなしていく姿の成長には目を見張るものがあります．思いがけず駆けつけたホームズとの再会の場面では葵の選択を知り「よく言った！」．それにしてもニューヨークに物怖じしない若さが羨ましい…

上海編．何故か小松さんまで．そして小松さん目線で語られるのも面白いです．葵の危機になりふり構わず奔走するホームズ，どうなるのかドキドキでしたが悪は滅びるでうまく収め，円生にとっても実りある展開となりやれやれ．

ホームズと円生に圧倒されながらうろたえたり驚いたり納得したりと感情が揺れ動きすぎる小松探偵さんがおかしくも可愛らしい．葵はニューヨークへ，ホームズは上海へ，さてさてどんな展開になるのやら．

さえない本屋と売れないケーキ屋を合体させるという設定は面白そうだけれどいかんせん話の筋が安直で文章に深みがないように感じられます．お客さんのトラブル解決にしても結婚も子育ても経験のない主人公がいくら言葉を重ねてもなんの説得力も感じられずしらけてしまいました．会話文の言葉遣いもお粗末でした．偉そうな辛口コメントすみません…

振り返りエピソードの巻．円生の章が興味深いです．結局円生が恋い焦がれているのは葵？ではなくホームズ本人なのではないかしらと思ってしまいます．

十左衛門が末期養子がらみで勇み足，処分を待つ身は他家預かりに．処分が解けて復職し目付け仲間との絆が一層深まった気持ちに．いいお話でした．

お糸がずいぶんと強く逞しくなり自分の意見をはっきり言えるようになった姿が眩しい．熊蔵との別れを乗り越え別れた母を弔うべく行動を起こし銀太との縁を大事に前向きに生きようとするお糸はもう立派な大人の女性ですね．

何やら秘剣を使う平九郎が留守居役を拝命していきなり他藩との難しい関係に奔走させられるお話．何だか一癖も二癖もある奴等と対峙しなかなか好転しない展開にちょっと辟易．最後は見事に平九郎がやってくれましたが続きを読むのは疲れそう…

結構怖くて先を読むのをためらってしまうこともありささっと斜め読みした箇所もいくつか．沖田総司をこんなふうに描写するとはなかなか…　もともと新選組はあんまり，と思っていたのでますます敬遠してしまうかも．宮部さんのだけはちょっとほのぼのしていてホッとしました．