ほのぼのした雰囲気のゆるミステリ。１話１話も短くて、通勤通学の合間や、朝読書にもオススメ（創元推理文庫から出ているけれど、雰囲気的に小学生の高学年くらいなら普通に読めそう）。しかし丸山さん、４０代の中年と書かれているが……表紙の姿は、ちと若作りすぎでは？（笑）

直前に重たいネットリした嫉妬を読んでいたせいか「なんて初々しくて可愛いヤキモチだ」というのが真っ先な感想。現代文を頑張って勉強してから導き出される最後の「解」。関係性が「義兄妹」からゆっくりと変化していく。

常識？　倫理？　なにそれ？　と言わんばかりの実に不健全なラブコメ（？）。ダブルヒロインラブコメで定番の「どっちのヒロインも即決できない煮えきらない主人公」の優柔不断にそれなりの理由付けがされているのは面白いところ。どちらのヒロインからも「二番目」扱いだと思っていた主人公が実はどちらにとっても「一番目」で……というのはテンプレだけど、そこがまた関係をややこしくしている原因にもなっている。四角関係になったあたりから、ドロドロの人間関係が加速して展開が走ってゆく。

現代日本であっても、ちょっと昔には昭和天皇への手術ですったもんだしたわけで、作中設定世界では余計に大問題なのはすごくよくわかる。主上と阿多の会話は……お互いこれが今生で最後かもという認識であるという前提に立つと切なさとエモさが入り混じる。謎解きはほぼなく、どちらかというとお仕事系（医療）の色が強い。面白かった。

テーマは太宰治。印象に残っている（そして好きな）太宰評に「太宰は良きにしろ悪しきにしろ『戦争』に染まらず、自身の文学を純粋に書き続けた」というものがある。だからこそ、いつの時代も「等身大の自分」を写す鏡であり続け、若人に刺さるんだろうなと思う。作中のように、少し危険なくらいのめり込む人がいるのも……わかる気はする。それにしてもこの二人、想いが通じ合ったとはいえ、合間合間にイチャイチャし過ぎではないか。

収録話の一つに、間違いなく自分の地元と思しきものが……！　地名は伏字でも、特徴を総合すると「わかる人にはわかる」ものなんですね。ちなみにソコは、悲しい昔話はあるものの心霊スポットという話は聞かないんですよね。だからこそ怖い。