亡き母が日記を綴るという幻想的な構成に、ある種の戸惑いを覚えました。生前に伝えられなかった思いが、死後に言葉となって娘へ届く。母の視点から綴られる日々には、悔いや愛情がにじみ、。家族の知りえなかった記憶、語られない感情もようやく一つの道となっていく…。彼女もまた今を共に生きる人と歩み続けたいという意志が自らの道を…、微かな温もりとなって胸に残りました。「お宝」、思い出した、懐かしく。

梓は中途聴覚障害を負い、世界の輪郭が突然変わってしまった。それでも彼女は「役に立つかどうか」ではなく、自立した自分の感性の赴くままに生き直そうとしている。手話も、太鼓やステップを伝う振動も、失われたものの代わりというよりも、いまの身体で世界を確かめるための手段だ。周囲のある種の思いやりに安易にもたれず、葛藤しながらも自分の形を取り戻していく姿には、強さというより誠実な息づかいがある。読後には、世界は耳だけで受け取るものではないと、気づかされる。

創作、観劇や読書の喜び、日々のこと、そして、家族や人とのかかわりなどが熱くも、謙虚なまなざしで綴られている。日々の生活のなかでも一瞬に鋭く動く感性は、すごい。その感性が物語のかけらを拾うのだと思い、エッセイ自体がすでに物語の文章だった。紹介の本も「こんなふうに世界を見ていいのだ」と小川さんらしい視点を感じ、そっと差し出してくれる。ただ「読みたいから読む」ことも同時代を生きる一人の女性を感じられるエッセイだった

備前焼の窯元に生きた三代の男たちと支える家族の物語。城は祖父に憧れ、距離を感じる父に反発したが、やがて父の知らなかった人生や城への想いを知り、葛藤しながらも自らも親となる姿が印象的でした。土を練り、炎に向き合う日々の中で、技と心が受け継がれていく。伝統とは、時間と記憶と想いを重ねて「灯」されるものなのです

亡き母が日記を綴るという幻想的な構成に、ある種の戸惑いを覚えました。生前に伝えられなかった思いが、死後に言葉となって娘へ届く。母の視点から綴られる日々には、悔いや愛情がにじみ、。家族の知りえなかった記憶、語られない感情もようやく一つの道となっていく…。彼女もまた今を共に生きる人と歩み続けたいという意志が自らの道を…、微かな温もりとなって胸に残りました。「お宝」、思い出した、懐かしく。

戦中の女性は銃後を守れ、戦後の職場ではお茶くみと笑顔—そんなジェンダーロールに縛られてきました。戦争体験と一口に言っても、経済状況や環境でまるで違う。ここでは異なる背景の女性たちが自分の言葉で語り始める姿が、民主主義の始まりです。そして、それぞれの民主主義は生きる目標とも言い換えることができるのかも。多くの人間が共有できる平和の支軸（美央子）遠慮しない勇気と、相手を思いやる広い心（孝子）、自分の目で見て、自分の頭で考え続ける事（クニ）、ここにいた時間のぜんぶ（ヤエ）。