陶晴賢と毛利元就が闘った厳島の合戦を陶の重臣である弘中孝兼を中心に描く。一つの合戦だけで500頁を超える大河小説である。孝兼が少し格好良すぎるかな、歴史に埋もれた人物だから主人公として盛っているのかなと思ったが、所々陰徳太平記をはじめとする資料の引用があり、かなり実在の人物像に寄せているのだろう。いまだに頭の中の陶晴賢が陣内孝則なので、本作が映像映えしそうな作品だし、そろそろ誰か作ってくれないものかな。

ニクソン以降、米政権の裏で見え隠れする福音派の存在。彼らがどう政権やその候補者たちと関わってきたか。クリントンやオバマといったリベラルと見られている元大統領たちともつながっていたことや一部のカルト的な存在と思っていただけに割と普通に大統領選挙に強い影響を持っていたことに驚かされる。彼らの頑強で人の言葉に耳を傾けない傾向には今更さほど驚かされないが。しかし、中絶に肯定的か否定的かで政権の基盤が強くなったり弱くなったりというのは極端かもしれないけどなんだかなあと思ってしまう。

ロシアに拿捕された嘉兵衛が日ロ間の交渉の舞台に立つ。初めはお互いの言葉も理解できなかったリカルドとの間に三歩進んで二歩下がりながらも徐々に信頼関係を深めていく様が圧巻である。ハッキリ言って前巻までとは話の流れが全く異なるのだが、それもこの時のための長い前振りだったのだろう。クライマックスで高橋三平が登場した時の安心感が言葉にできない。

絵画の中でお仕事をしている人を通じて、その絵画や当時の世情を解説。幼少時のキリストが大工である父の仕事場で釘で手を汚して母マリアに抱きかかえられる絵の彼の最後の暗示を示した絵が印象に残る。色々後付けなんだけど創作者のアイデアって凄いな。

え？そうなの？と思いながら手に取ってみたが実際の内容は弁護士の成り手不足を取り上げたもの。優秀な弁護士を産み出すためには試験を難しくするよりもそもそも優秀な人材に弁護士を目指してもらうよう改革すべしと説いている。また、法曹以外にも企業の法務部門でも弁護士は活躍できるので企業採用も進めるべしとも説いている。複数の執筆者の合作のため似た内容が繰り返し語られている。