レイキャヴィーク警察を辞めて、故郷の警察で働くことになったエルマの物語。事件自体は、辻褄が合うような合わないようなモヤモヤ感が残ったが、返ってそれがリアルにも感じられた。全て納得が行くドラマティックな展開よりも、人間の内面のあやふやさが伝わった。物語全体から漂うじめじめした暗さも好き。これぞアイスランドミステリ。シリーズ化されるといいな。

千早茜さんと尾崎世界観さんの共作小説。福と大輔の男女の視点に別れて、同じ出来事が語られていくのが面白かった。大輔のパートで｢帰る場所がなければ、冒険は出来ない。帰る場所がなければ、ただの迷子だ。｣という箇所がとてもよかった。でも、そこまでわかってるなら、なぜ？とも思った。巻末の文庫化記念の対談で尾崎さんが、読者の｢何の意味もない内容だ｣という感想について、｢読書でどれだけ得をしたいんだろうって思います。すごく強欲ですよね。｣と言ってて笑った。確かにw

｢戸川純の人生相談｣は、YouTubeで公開されてて、私も最初の数回は観てたんだけど、追い付かなくなって途中から観てなかったので、今回の書籍化はとても嬉しい。どの相談にも純ちゃんと山口さんは、真摯に答えられてるんだけど、それがなぜか面白いw お二人の空気感が伝わって楽しかった。是非是非、書籍もシリーズ化して欲しい。

外見も性格も対照的な姉妹の理有と杏。そして、既に他界している彼女達の母ユリカ。家族の物語と言ってしまうのも違う気がする。同じ出来事を経験しても、それぞれに見えている真実が違うことの恐ろしさを感じた。この流れで、ラストに明るい兆しが見えることが不思議だった。

レイキャヴィーク警察を辞めて、故郷の警察で働くことになったエルマの物語。事件自体は、辻褄が合うような合わないようなモヤモヤ感が残ったが、返ってそれがリアルにも感じられた。全て納得が行くドラマティックな展開よりも、人間の内面のあやふやさが伝わった。物語全体から漂うじめじめした暗さも好き。これぞアイスランドミステリ。シリーズ化されるといいな。

5編収録の短編集。表題作は、希死念慮持ちの沙南と隠れ陰キャの幸希のカップルの物語。2人の生きる希望だったバンドのライブが、コロナにより中止になったことから、心中旅行に行くことになる。2人の危うい生き方が、悲劇的なようでコミカルに描かれていて面白かった。

5編収録の短編集。どの話もホッとする終わり方で、優しい読後感だった。奥田亜希子さんの作品は、いつも物語の中に自然に引き込まれていく感じがして心地いい。

母からネグレクトを受け、家庭に居場所がなかった葉奈子。大人になった彼女が、中学教師になった物語。面白かった。葉奈子の不安定さが心配だったけど、彼女はいい先生だと思った。

タイトルはフランス語の料理用語。タイトルから連想するように、各話にも、たくさん美味しそうな料理が登場し、主人公の志絵が食べたり飲んだりしつつ、話したり考えたりしたことが言葉の渦のように書かれていて圧倒された。面白かった。読んでる間ずっと楽しかった。

土耳古(トルコ)皇帝からの招きで、歴史と文化を研究する目的で日本からやってきた村田の物語。村田が、下宿で家主の夫人や異国の友に囲まれて、好きな学問に没頭出来た夢のような期間と、世界情勢に翻弄された悪夢のような出来事の落差の激しさが恐ろしかった。｢私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない｣ディミィトリスが言った言葉が心に残った。