水墨画をしっかり見たことがないので、どれだけ言葉を尽くされていても、そこに描かれているものが自分の中でうまく再現されているとはとうてい思えない。それなのにそこには間違いなく、力強く美しい、だけど静謐な作品があるのだろうなと身体中で感じている。その不思議。描くひとたち、特に霜介の内面の複雑さもまた言葉巧みに描かれているのだが、こちらは読むうちにだんだん苦しくなる。両親を亡くした霜介を守ってくれた白い部屋と、揮毫会に用意される白い紙がシンクロしているようだった。母の勤務校で子どもたちと出会えたのがよかった。

超常現象的展開は、あまり好まない。映画やドラマも。グリーンマイルは観て号泣したけれども。それにファンタジーは好きだけど。初めは対立していた刑事・判事側の者と弁護士・調査員側の者たちがいつの間にやら一緒になって真実を追い始めたことに励まされるように、不思議で掴みどころのない犯人をなんとかイメージしながら、なんとかゴール。よく最後まで読んだなと自分を褒めたくなりました。

甥っ子にすすめられて。勝ち組という言葉ができて以来、自分の人生はダメだったなぁという感が強くて。特に持病が悪化している今は、老化とか死とかそういったものに常に囚われている気がしていたが、最終的に、死という究極の弱さに向かって誰もが進んでいくわけだ。いくつかの施設を見学し学んだことが紹介されているが、イギリスの子どものホスピスがとくに印象に残った。限られた時間を本人、家族、スタッフ、他の子の家族で文字通り抱きしめるような過ごす。そのあり方に読んでいて涙が出た。

地熱発電を推進する政治家、研究者、記者たちの物語。持続可能なエネルギーに対する考えを述べよといったテーマの作文を読んだことがあるが、自分自身がさっぱりわかっていなくて苦労したのを思い出した。石油がちょっと手に入りにくくなっただけで、あれもこれも値上がりでわたしたちの生活はすぐに影響を受ける。が、なんとかなるだろうという気持ちは確かにある。政治家までがそれでは本当に困るのだが、新しく地熱発電を始めるには費用も人材も必要となり、原発推進派には押される一方。政治的かけひきのどろどろしたところへは興味深かった。

水墨画をしっかり見たことがないので、どれだけ言葉を尽くされていても、そこに描かれているものが自分の中でうまく再現されているとはとうてい思えない。それなのにそこには間違いなく、力強く美しい、だけど静謐な作品があるのだろうなと身体中で感じている。その不思議。描くひとたち、特に霜介の内面の複雑さもまた言葉巧みに描かれているのだが、こちらは読むうちにだんだん苦しくなる。両親を亡くした霜介を守ってくれた白い部屋と、揮毫会に用意される白い紙がシンクロしているようだった。母の勤務校で子どもたちと出会えたのがよかった。