「正欲」なんかは今までの価値観をぐわりと覆されて今だに考えるし、朝井さんの本は毎度私の心をぐさりと刺す様な物が多い。そんな朝井さんの連作短編集、やー面白かったです。そして確信してしまった…私は朝井リョウの本が好きなのだと。人間の怖さというか、ゾワッとさせられる話が多くて先が気になってあっという間に読めてしまう。子供がとてつもなく怖い。この言葉に尽きる。最後の脇役バトルロワイヤルでまとまるのも俳優さんの顔が浮かんで面白かった。朝井版世にも奇妙な物語を存分に楽しめる一冊。

ファミリーレストラン「シリウス」の店長みもざから始まった常夜灯シリーズも3作目。前作のつぐみとスイーツに力を入れるプロジェクトを共にする製菓部のかなめが主役。仕事も恋も上手くいかない、特に仕事はやる気がとてもあるのに上手い方向に進まない空回りな状況にかなめ共々胃が痛くなりそう。とてもじゃないけど私なら胃と心をやられてしまうわ。つぐみや常夜灯に助けられながら悔しい!と立ち向かう姿は強くて逞しい。そしてパートさん様様だよね。なによりもコミュニケーションが大事。そんな事を思った一冊だった。

「正欲」なんかは今までの価値観をぐわりと覆されて今だに考えるし、朝井さんの本は毎度私の心をぐさりと刺す様な物が多い。そんな朝井さんの連作短編集、やー面白かったです。そして確信してしまった…私は朝井リョウの本が好きなのだと。人間の怖さというか、ゾワッとさせられる話が多くて先が気になってあっという間に読めてしまう。子供がとてつもなく怖い。この言葉に尽きる。最後の脇役バトルロワイヤルでまとまるのも俳優さんの顔が浮かんで面白かった。朝井版世にも奇妙な物語を存分に楽しめる一冊。

焼肉を擬人化した漫画を推して推して推しまくっている腐女子の由嘉里と希死念慮を持つ美しいキャバ嬢のライ。死んで消えてる状態が本来の姿だというライに生きる気持ちをどうしても持ってほしい由嘉里。恋愛経験が無くて恋愛する事に憧れを抱き過ぎてる暴走思考が面白くてグイグイ読ませる。ライを想う由嘉里の気持ちもわかるし、根本的に持っている概念が違うのもわかる。自分を受け入れて変化していく姿は逞しくもあって、少しうらやましかったなぁ。圧倒的パワーと勢いに押されたジェットコースターの様な小説だった。

死にたいと思っている者に突然渡されるQPコードの載った白いカード。アクセスするとそこには"有限会社さんず"という自殺幇助のサイトに繋がって…という連作短編集。死にたい者、死ななければいけない者、それぞれに抱える事情がある。自殺という重いテーマを扱いながらも、さんずからやってくる明るいスガと真面目で無口なカトウのキャラのおかげでそこまで重々しくならずに読めた。そしてあまり深く死について考えると引きづられそうなので、これくらいの軽さが良いのかもなぁ。心がハラハラしたり、キリキリしたり中々にダークな一冊。

一九五八年の立春から二〇二二年の立春が描かれた家族の連作短編集。核となる藤巻家の気象学研究者で変わり者の藤巻教授から始まり、ひ孫の玲で終わる物語。二十四の節句を大切にして行事を繋いでいく上品さが漂う家族の雰囲気を感じたり、秋分のお隣の話に心温まっていたから夏至で起こる思わぬ展開に苦笑いしてしまった。それもこれも「あるがままを受け入れる」ということなのかな。最初の立春と最後の立春の話が一番好きだった。温暖化で乱れがちだけど季節を感じるって大事だなぁと藤巻教授のマイペースな独特さが好きだった一冊。

やー、面白かった。探偵役となり、実際に謎を解明する富豪の道楽「探偵遊戯」運営しているスタッフ達も参加している人間も皆クセが強くて運営内部の雰囲気もギスギスな中、予想外の事が次々起こる展開は面白くて一気読み。探偵遊戯という設定のせいで二重構造が生まれて、予想しても裏切られる二転三転する展開が面白かった。こんな設定大好物です!!読み終えた後に二作目だと知り、田中が言っていた「奇岩館の殺人」が一作目のようなのでそちらも読んでみようかな。

初読み作家さん。AI×警察小説、科警研の研究者に突如与えられた3つの事件の真相解明。ストリートチルドレン、防衛省の連続不審死、卒業アルバム損壊という一見関連性のない事件が繋がった時見えてくるのは国家に繋がるあまりにも大きな問題だった…。AIは使い方によっては兵器にもなる事にとても恐怖を感じた。でもジーブスというAIアシスタントに助けられて捜査が進むのも事実。AIを駆使した捜査も興味深かった。最初は難しい専門用語や政治的問題など複雑な説明が多くて挫折しそうになりながらも、読んで良かったと思える作品だった。

柚木さんの7編の短編集。やー!!面白かったです。もう最初の「ComeComeKan!!」から心捕まれました。覚子の誰かに怒られているような感じわかりすぎる!菊池寛の事が気になりすぎて検索しちゃったよ。どの話しのどこを切り取っても女性が主役の女性の為の物語が詰まっていて、自然と励まされる。逆に中年男性は目を逸らしたくなるかも(笑)それぞれに爽快感があって冷静に考えると変な設定なのに、スッと馴染んでいく。「エルゴと不倫鮨」は既読だったけど、再読しても痛快で面白い。そして最後に待っている菊池寛の解説も最高です。

ラジオを交えた六篇の短編集。実在のラジオ番組は出てくるけど、ラジオの事ばかり書いてある訳でもないのでラジオを聴かない人でも読みやすいと感じた。ラジオは昔からよく聴いていて、深夜ラジオが大好きだった。読みながらドリアン助川のラジオを聴いていた事を思い出した。今はリアルタイムで聴く事が難しいから、気に入ってる番組をラジコで聴きながら料理をするのが日課になっている。ラジオ番組だけではなく、友人が録音してくれたラジオやラジオドラマなどが描かれていて幅広くラジオの世界を知ることができる一冊だった。

芸能マネージャーの経験がある染井さん。アイドルのマネージャーの話や芸人、芸能スカウト、事務所を辞めたい俳優などこれは実話なのでは？と感じる程リアルな芸能界の短編集。インスタ中毒で自分を見失う女優とかアイドルの素行不良やsnsで追い詰められていく描写はほんとうにリアルで、どの話もそれぞれの味のある結末が用意されていて読みやすくて楽しめた。中でも容姿をネタにしているコンビ芸人の話が感動もあり一番好きだった。いやー大変で独特な世界です、芸能界。

過疎化が進み人口が減少し続ける地方、財源を使っても未来に明るいものは見えない現実。そんな現代の消滅しそうな過疎化した村を復活させた救世主の様な存在、神楽零士の遺体が山中で発見される。目を逸らせない社会問題×ミステリー、役人がリモートでトリックを解いていくのは新鮮で面白かった。でも中盤あたりからなんとなく読めてきてしまって、失速してしまい読み終わるのに時間がかかってしまった。パトリシアとかドローンとか興味を惹く部分が沢山あったし、テーマは面白そうなのにハマりきれず残念。