寂しさを胸に点しつつ読み進めて、約束の別離をもって読み了えた一冊。「鵼の碑」から導かれて本シリーズを読み返し、あるいは新たに手に取って、「もっと早く読んでおくのだった」と今更ながらに後悔する。百鬼夜行百物語の年代記の豊かさ奥深さに打たれる。ところで「ヒトごろし」も読んでおかなければ年代記を網羅できないのか？　もちろん前・西・遠の三冊はいうに及ばず、「覘き小平次」に「数えずの井戸」も行かなければならない。こりゃ当分は楽しめそうだ。

若き日の又市と損料屋の仕事を描いた本書。縦軸は又市の成長、否、彼の了見の拡がりを据えている。ゑんま屋の仕事を請け負うことで背負う出会いと別離れと因縁とが、青臭い若者の生き方の道標となる。已むを得ないは言い訳で、命を喪うほどの損はない。小股潜りの二ツ名も由緒を知れば切なくて。浮き世の辛さを思えばこそ嘘を真実の舌先三寸。小股潜りの心意気たァ札撒き御行又市のォ身過ぎ世過ぎの覚悟にござる。

飢餓と独創性。また面白い物差しが提示された。本作の主要登場人物は常に前のめりでサッカーに臨み、「より強く」「より速く」「より巧く」を自らに求め続ける。飢えがちっとも癒せないから眼前に「なりたい自分」「なれるであろう自分」がいるから、それを目指して踠く。連載開始当初からこの連続だ。読むのが息苦しく感じられることもある。これも得難い読書体験だ。

ミステリ作家の底意地の悪さ（褒め言葉！）とリーダビリティの高い漫画家とのタッグが奇跡を生む。お笑い・話芸を題材にとった漫画作品において、「面白いとされている」ではなく、本当に面白いネタを紙上に立ち上らせることに成功した。料理漫画では「美味そう」も「旨い」も読者にとっては他人事。味も香りもその良し悪しは体感できない。一方で笑い・話芸についての良し悪しとなると。「ガラスの靴が割れた」の漫才しかり。逃げることなくネタを丸々見せてしっかり笑いを獲る作者コンビに脱帽だ。

寂しさを胸に点しつつ読み進めて、約束の別離をもって読み了えた一冊。「鵼の碑」から導かれて本シリーズを読み返し、あるいは新たに手に取って、「もっと早く読んでおくのだった」と今更ながらに後悔する。百鬼夜行百物語の年代記の豊かさ奥深さに打たれる。ところで「ヒトごろし」も読んでおかなければ年代記を網羅できないのか？　もちろん前・西・遠の三冊はいうに及ばず、「覘き小平次」に「数えずの井戸」も行かなければならない。こりゃ当分は楽しめそうだ。