
結果として示されるのは、現実とは客観的に与えられるものではなく、同じ前提を共有する者同士が仮に成立させる構築物にすぎないという事実であり、他者と共に生きる限り、意味の不確かさから逃れられないという感触である。
世界の認識とは、そもそも他者とのあいだに仮に成立する、きわめてあやふやなものにすぎない。象徴的なのは、主人公が身近な人物の承認によって確証を得ようとするにもかかわらず、その相手が次々と不在になっていく点であり、これはその危うさを端的に示している。一方で、明確に狂気に陥った者や薬物の妄想に溺れる人物と比べれば、主人公にはなお世界を共有できる相手が存在し、相対的には安定しているとも言える。我々から見れば主人公も支離滅裂に映るが、視点を上層へ移せば、我々自身もまた無知蒙昧な存在に見えるのかもしれない。
不条理とは,世界に意味を求めても,世界は沈黙でしか答えないということに尽きるわけだが,ムルソーは,常識,友愛,道徳,法律,宗教にも意味を見出しておらず,そこに不条理はない。不条理に生きない人物を,異邦人のように際立たせることで,意味づけが無力であることを示し,不条理は外から訪れる現象ではなく,意味づけする者の前に現れることを示した。よく読めば,ムルソーの発砲は正当防衛(過剰防衛)であり,意味の繋がりを捨象して「太陽のせい」(実は,間違いではない。)と言わしめただけなのだが,我々はそこにアポフェニアを見る。
世界の名著(中央公論社)挑戦中。あまりつぶやき機能は使わないのですが、本書の場合、一冊の分量が長いので、篇や章立ての区切りごとに、備忘録的なつぶやきをちょいちょい入れていきます。Amazonでは、千紫万紅のハンドルで、映画などもレビューしてます。
追記 もう一つの生きがい。空手の方が比重を増していて,読書ペース激落ち中です。世界の名著は,超スローペースですが続けてます。
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不条理とは,世界に意味を求めても,世界は沈黙でしか答えないということに尽きるわけだが,ムルソーは,常識,友愛,道徳,法律,宗教にも意味を見出しておらず,そこに不条理はない。不条理に生きない人物を,異邦人のように際立たせることで,意味づけが無力であることを示し,不条理は外から訪れる現象ではなく,意味づけする者の前に現れることを示した。よく読めば,ムルソーの発砲は正当防衛(過剰防衛)であり,意味の繋がりを捨象して「太陽のせい」(実は,間違いではない。)と言わしめただけなのだが,我々はそこにアポフェニアを見る。