ゼロ文字押しの真相は、クイズの本質的な美学からは少しズレたものだったけれど、だからといって裏切られたとは思わない。たかがクイズといえどもそこには様々な戦い方があり、正解を導き出すまでの人生があることをこの作品で知れた。

すっっっごく良かった。主人公ダニーは窮地に陥りながらも常に心は一本芯の通った技術者魂が燃えていて、鬼の行動力とコールドスリープ＆タイムトラベルで自分のあるべき人生を手に入れていく。話自体のテンポも良いし、翻訳の口調もなんだかとっても勢いがあって私は好き。そしてなにより、執筆当時から見た未来は今の私たちからすると既に過去なわけだけれど、世界の有様が実際とそんなに大袈裟にずれてなくて凄い。本文の最初と最後に登場する夏への扉、タイトルとしてもすごく素敵。

ゼロ文字押しの真相は、クイズの本質的な美学からは少しズレたものだったけれど、だからといって裏切られたとは思わない。たかがクイズといえどもそこには様々な戦い方があり、正解を導き出すまでの人生があることをこの作品で知れた。

十二の短編のうち割と前半のほうが、「あっ」と思わず声を出してしまう結末のものが多かったかな。クリスティーナ・ローゼンタールは、こういうタイプの短編集に収められているのが意外なくらい切ない愛の物語でした。

ほどよくゾッとするお話が詰まった短編集。表題作「鬼」は、自分が願った形で話が終わってくれたので、恐ろしいながらも少しホッとした。