『成瀬』を読み終わるとしばらく成瀬の口調が乗り移る。ちょっと強くなった気分、悪い気がしない。いつも自分を貫けることはこんなにも安心することなんだ。令和だからって日和るな、とか言ってくれるだろうか。200歳までの成瀬を描ききって欲しい。

海千山千のロシア人達と共に冬のロシア沿岸で、冒険活劇的フィールドワークを10年にわたり繰り広げるミネソタ大学院生によるシマフクロウの記録。圧巻である。 果てしない体力と忍耐力を持ち、寒さや粗悪ウォッカに耐え、クセ強のロシア人のいいところを引き出し、何よりユーモアをもって地道に取り組む。「本書を読んだ日本のみなさんが沿岸地方をより身近に感じ、シマフクロウのような種はこの地球の宝であり、みなでその素晴らしさを称え、大切にし、守るべき存在なのだという思いに共感して下さることを願っている」

綿矢りさは相性がよくないからもう読まないと決めていたのに北京が気になって手に取る。やっぱりなんだかなぁ…と思っていたけど最後には小気味良い！不思議

食えない本だ。恐ろしく博学で哲学なんだと思う。書いてあることの半分も理解できないけれど、爆笑する。そしてあとがき最後の2行に少し泣く。

当てはまるのごあったりして嬉しい気持ちにさせてくれる。狭量な自分を見つけたりもする。こんな企画展が流行るなんていい世の中だ！

著者の「自分が母となり、自分の命よりも大切な存在ができることは、喜びも大きいが、苦しみも深いということを初めて知った」という言葉。母がいなければ、男もいないし女もいない。何もかもから逃げ出したくなるのも無理はない、逃げるところはなくても。

ボケ倒すしをんさんとその文章に鋭く目を配る校閲さんでこのエッセイはできている、フフフ。

「物を思い、考え、書き、歌う。それは人が人である証。食うことのためだけに生きるわけではない。そのことが、己を支える誇りになります。荒地にあってこそ、歌も絵も書も、潤いの滴となりましょう」

今までとはちょっと違って人間の運とか業とか性とかをヒシヒシと感じずにはいられない短編集。乙川優三郎にも通ずるような。生きることは辛い、ああこんな気持ちにさせるなんて‼︎

『成瀬』を読み終わるとしばらく成瀬の口調が乗り移る。ちょっと強くなった気分、悪い気がしない。いつも自分を貫けることはこんなにも安心することなんだ。令和だからって日和るな、とか言ってくれるだろうか。200歳までの成瀬を描ききって欲しい。