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風土 (P+D BOOKS)

感想・レビュー
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冬見
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冒頭の文章が素晴らしく、引き込まれた。第二章の構成もおもしろい。異なる時間軸を一方は時間経過のままに、一方は遡行して交互に語られる。このボリュームの作品なら中弛みが懸念される中盤をこまめに引きを作ることで巧みに進させ、登場人物の思考・思想の流れと成立を細やかに描写している。第二章の厚みが第一章、第三章と響き合い物語に厚みが生まれる。芸術とは何か。愛とは何か。我々が行きつく先に何があるのか。圧巻だった。
冬見

恋を自覚した少年の心理描写が瑞々しい。光をはらみ眩しく色彩を増す世界、恋の相手をめぐる全てが自分の生み出すものと分かちがたく結びつく様、有無を言わさず視線が引き寄せられる生々しさ……彼が知覚したものが感覚としてこちらへ流れ込んでくるような描写だった。 桂視点で描写される「タヒチの女」の説明も圧巻。眼前に浮かぶようとはまさにこのこと。こういう文章を書けるようになりたい。細部まで描写が行き届いており、しかし説明臭さやしつこさはなく……すごい文章だ。

04/07 21:47
0255文字
アルニカ
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ネタバレ登場人物は少なめで主に人生を諦めてしまっている桂とその友人と結婚して未亡人となった芳枝、その娘道子と彼女に好意を抱く久邇の4人。それぞれの愛がすれ違っている。満たされたと思ったときに知る一層の孤独。芸術家としての生き方を貫きたいと思いつつ貫けない桂の苦悩を理解できるのは芳枝ではなく道子なのかもしれない。
0255文字
みつ
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三部構成の第1部と第3部は1939年8月の数日、第2部は1923年8月の1日のみが海を舞台に描かれ、後者にはさらに十数年を順次遡る断片が11回挿入される。凝った構成であるが、読み進めるのに支障はない。断片を除いて大きなストーリーの起伏はなく、愛と青春、芸術への想いが内省的に語られる。ただ、読者は、いずれの年も直後の9月1日にはカタストロフ(関東大震災と第二次世界大戦の勃発)が彼らを待ち受けていることを知っており、そのことが、この清冽な小説に影を落としている。kindle でおそらく30数年ぶりの再読。
0255文字
アレカヤシ
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人生は愛し愛される事だ、それがなければ空っぽだという。桂は空っぽ、愛し愛されるには歳を取り過ぎ、全く疲れている。歳を取って情熱もなくなり、愛もない人生は死んでいるという。桂は愛を諦め、芸術に生きようとしたが、それにも挫折した。でも少なくとも一度は生きようとした。僕は疲れる程何かに打ち込んだ事もないのに初めから空っぽだ。感情も理性も精一杯働かせた事がない。一度も生きた事がない、初めから死んだ人生。僕は多分、人生の本当を知りたくて小説を読んでいると思う。本を読んでてもいつのまにか自分の事ばかり考えている。
アレカヤシ

その人の事が解ったと思っても、本当にそうなのかどうか確認することはできないし、僕がその人の事をほんとうにすっかり理解していたとしても、その人はそれを知ることはできない。

10/07 15:11
アレカヤシ

(どんなに他人を愛し、心から理解し得たと思い、同じ呼吸を呼吸し、同じ眼でものを見、同じ心でものを考えたとしても、人間はただこの自分の風土、この自分の孤独の中にしか住むことは出来ないのだ。この僕もどんなにか人を愛したいと思い、またどんなにか人を愛しただろう、・・・しかし僕の人生は、結局、孤独というにすぎなかった。長い間夢を見て、夢の中で色んなことを学んだようにも思ったが、目が覚めてみれば、確かなものはただ自分の孤独があるばかりだった。人を愛するということはみんな空しいことだった)P462

10/07 15:24
0255文字
ロックスターKJ
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評価:★★★★☆ 4点
0255文字
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