形式:文庫
出版社:新潮社
形式:単行本
→綴られた異色のノンフィクション。〝喉の手術が、あたしの人生を変えたと思う。声が変わってしまったんだよ。全く違う声になっちゃったの。一生懸命歌ってきたから、あたしのいいものは、出し尽くしたと思うんだ。それでも歌うことはできるけど、燃えカスの、余韻で生きていくことになっちゃう。そんなのは嫌だよ・・・全てが虚しくなって、もう、どうでもいいっていうような気持になって・・・ぼんやり、死のうかな、なんて思うようになりはじめて・・・〟62才で自死に追いこまれていった、無念の侘しさと寂寥感に苛まれた声が木霊してくる。
→でき、ありきたりな仕事としての一般的な受け答えではなく、しかと相手を認め確認しての対話になる、その臨場感が心地よい緊張感を感得できた。対話時点で沢木さんは31歳、藤さんは28歳だが、深い対談が成立していたことに目を見張る。その後の2013年8月に藤さんは享年62歳で自死されるのだが、芸能界のことに疎い僕はあまり関心を払ってこなかった。この作品はその二ケ月後の2013年10月に遺族の了解を得て刊行されている。対話時点でも藤さんがこころの深い部分に於いて懊悩されていたことが伝わり、瞑目し手を合わせた。
元夫の前川清さんがとても優しくて、そのまま添い遂げたら違う人生があったのかなと思えてしまう。
https://chirakattahondana.com/流星ひとつ/
先日、昔の藤圭子さんが出ている歌番組を観たのだが、確かに声がきれいになっていて明らかに変わってました。そしてキャラも明るくなっていて、もう引退を決意されていたのかもしれません。
そして当時20代後半の藤圭子は真っ直ぐで潔癖で侠気溢れて思い切りが良くて格好よかった。人に判られないことに慣れていて−−説明する言葉をそもそも持ち合わせず−−今ならDVと即断されるであろうのに、ピンとこないインタビュアーの口吻に時代を感じる。長い間発表を控えていた作とのこと。ただ一人に宛てた「後書き」は失われたままなのだろうか。
沢木耕太郎氏にはぜひ宇多田ヒカル版のこの本を書いてほしいきもちもあり、でもそれはきっとこの本を超えるものにはならないのだろうと思う。書き手として、聴き手としての沢木さんはこのときよりもずっと洗練され、技を身につけておられるだろうけれども、この本は、この時、このふたりでなければならなかったのだと思う。そんなふうに思わせるインタビューを、私は初めて読んだと思う。
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