内容は意外にも、本気だった。主人公は、人間社会に疲れ果て、本気で山羊になることを決意する。山羊のように草を食べ、四つ足で歩き、そして最終的には山羊の群れの一員となる。終章で、彼がついにその一体感を得るシーンは、思わず胸が熱くなるほどの感動を覚える。「・・・僕はまったくヤギにあるまじきことをした。人間みたいに岩の上に座って、この状況について考えたのだ。」という言葉が、まるで心に深く突き刺さるようだった。 最高だった。
笑えるはずの本が、実は人間という存在そのものについての思索を促してくる。僕たちは、どこからが人間で、どこからが「それ以外」なのか?人が人であるとは、何を意味するのか?山羊になろうとする彼の無茶な試みを通じて、僕はそんなことを考えずにはいられなかった。見かけは馬鹿げているかもしれないが、実はとても深いテーマを扱った一冊だった。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます