形式:単行本
出版社:講談社
形式:文庫
そんな中、「フェリシティの面接」という作品だけはちょっと異質だった。なにか海外の短編のような味わいで、津村さんには珍しく意図するところが伝わりにくい。もしかすると、ご自分とは真逆なフェリシティは、「こういう人に私はなりたい」人物像なのかも。その立ち居振る舞いは、あれこれの日々のディテールに悩まされ振り回される私達には、まるでスーパーヒーローにも見える。
ロバに配達してもらいたい 草 用意して待ってるのに
中高生向けの本ではないと思うが、最後のマイクラがきっかけで接点のない同級生と仲良くなる短編「イン・ザ・シティ」の締めくくりがとても眩しかったのでメモ。 「自分たちにはいくらでも時間がある。だからきっと通り過ぎていくものたちのどれかは、手になじんで輝いてくれるだろう。」
「それは、母親が母親である矜恃を台無しにしてしまう質問事項だった」(『台所の停戦』)
「私は無力感を植え付けられ、家の外ではいつも、何かをおろそかにして責められるのではないかという感覚に追い立てられているため、なぜか『きっちりした人』という社会的評価を得るに至った」(『台所の停戦』)
8つの中からどれを選ぶかは、かなり好みが分かれそうだ。私はしいて言うなら「イン・ザ・シティ」か。津村紀久子の小説もまた、時にはこんな風に想像力を広げることで生まれたのだろうかと思う。次いでは軽快な文体の「フェリシティの面接」。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます