形式:文庫
出版社:河出書房新社
形式:Kindle版
「単純な頭で事を起こすのと、単純なる本来性を貫くのとは違うのだということを御記憶願いたいと思います。」(338P)このことについて、わざわざ“記憶”するようにと橋本が促さなければならないことについて、よく考えてみなくてはいけない。そんなことわかってるよ、見ればわかるもんね……とのたまう前に。
「本当の腹芸というのは、そんなもんじゃないんです。腹芸というのは「他人というものは分からない」という前提があって、それでもなおかつその他人との関係を設定しなければならないという矛盾(あるいは"勇気")の上に成立するものなんです。(中略)腹芸というのは"これ以上言葉に出来ない"というギリギリのところまでを言葉にした上で「後は信じるか信じないかの信頼の問題である」というつきつけ方をするコミュニケーションなんです。"信頼"というものを前提におくからこそ、"断絶"という絶対の不通も登場するんです。(p361)」
『東下り』の大石内蔵助は「見逃してくれ俺は大石内蔵助だ」と黙って頼み、あるいは命令し、立花左近はそれを受けて見逃したんですが、富樫と弁慶は違います。弁慶は富樫を騙し、富樫は弁慶に騙され、そして富樫は悟ったんです(p369~370)」
「格調の高さの研究」で文庫本200頁弱!<”日本的腹芸”という馴れ合いコミュニケーション>つながりで歌舞伎の『勧進帳』、能の『安宅』を出してきて論じている最後のあたりは圧巻。
あの歌右衛門の戸無瀬の絵を「グロテスク」と思う世の中なんて、と、橋本治を読むと思っちゃうよね。
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「単純な頭で事を起こすのと、単純なる本来性を貫くのとは違うのだということを御記憶願いたいと思います。」(338P)このことについて、わざわざ“記憶”するようにと橋本が促さなければならないことについて、よく考えてみなくてはいけない。そんなことわかってるよ、見ればわかるもんね……とのたまう前に。