形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:春秋社
先に書いたように、科学がもたらした危機や、それを生み出した人間の過ち、といった歌も多いのだが、一方で「宇宙」の項に採られた歌は、純粋な宇宙への憧れと神秘が綴られたものが多く、理屈抜きに美しいものが多い、ような気がする。まだまだ宇宙は謎が多く、人間にとって距離が遠すぎるから、この本のタイトルにある、いわゆる「センス・オブ・ワンダー」が如実に歌に籠るのかも、と感じた。
お気に入りの歌はたくさんあったが、敢えて選ぶなら、先にも挙げた「星空はどちらの専門領域か天文学者と詩人が争う」武藤義哉、「また更に望遠鏡が進化したと奥の掃除を始める宇宙」武藤義哉、「二千年前からミロのヴィーナスがしづかに耐えてゐる幻肢痛」千葉優作。この3つには衝撃を受けた。どう生きれば、そんな風に世界が見え、切り取れるのか。
好みは「秋のくも「ふわ」と数えることにする 一ふわ二ふわ三ふわの雲」(吉川宏志)、「衛星になろう あなたに堕ちないでいられる距離をやっと見つけた」(田中ましろ)、「オルト、パラ、メタとつぶやき結合の向きを手旗で子は覚えおり」(橋本恵美)、「どこから来てどこへ行くかと駅員に根源的なことを聞かれる」(武藤義哉)。
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