形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:株式会社堀之内出版
一方の萱野は、東のような意見も含めた、「条件つきのBI」はそもそもBIではないと、根本的に批判する。「無条件で、全員に、現金を、支給する」がBIであり、何らかの条件をつけた時点でそれは現行の福祉国家と大して変わらなくなる。この批判は重要だろう。ただし、萱野のBI批判の肝は「働きたくても働けない人が欲しいのは、お金ではなく仕事」というものであり、あまり新鮮ではない。これは東の述べる「生存と承認を切り離す」というBIのテーゼと反する。萱野は国家による古典的なパターナリズムを比較的認めているように見える。
もう1つ重要なのは、本書の坂倉論文の中で触れている西村博之の発言だろう。BIによって働かなくてよくなれば、労働の給料は上がる。例えば月7万円のBIしか受け取っていない老人が、介護を頼むことはできるのだろうか。介護の仕事を引き受けてもらうためには少なくとも月10万円くらいかかるのではないだろうか。この疑問には各賛成論者、みなすっきり答えておらず、BIの問題の1つだろうと思った。 (注:BI=ベーシックインカム)
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