藤原書店 バルザック『人間喜劇』セレクション別巻2 P386から抜粋
『人間喜劇』というのは主に小説からなる八十九編の作品群につけられている総題である。これに序文を加えた九十編で、ガリマール社のプレイヤード版にして十一巻、約一万一千ページの巨大な総体をなす。小説の長さは千差万別で、『幻滅』のように同版で六一〇ページもある大長編から『女性研究』や『ゴディサール二世』のようにわずか一〇ページという短いものもある。しかし、それらはすべてバルザックの構想した『人間喜劇』という一つの宇宙、一大壁画の欠くべからざる構成要素となっている。その構想の成立過程は長く複雑で、ほとんど彼の半生、いや生涯にかかわるので詳述はできないが、基本的には、最初から見取り図ができていたのではなく、個々の作品を書き進めるうちに彼の想像力の中で徐々に育まれていったものである。つまり、現在『人間喜劇』を構成する作品のかなりの数が当初は独立した読み物として発表されていたのである。後略。
本トピックではバルザックの『人間喜劇』89編を読むことを目指します。もちろんダブルタイトルである『ゴリオ爺さん』『ウージェニー・グランデ』も読みます。フランス語ができる人は原文で読んでもらえばいいし(kindle無料版有)、英語が達者な人は英訳の公開サイト『The Human Comedy』
http://www.cs.cmu.edu/~spok/metabook/humancomedy.html
もあります。一方、大部分の作品は日本語訳で読めるものの、全訳はありません。ここでは、『人間喜劇』に含まれる主要な作品を読みながら、みなさんと攻略法について考えていきたいと思います。
『人間喜劇』では、同じ人物が海道尊の小説のように何回も登場します。人物再登場法というのだそうです。ゴリオ爺さん→幻滅→暗黒事件→娼婦盛衰記→従妹ベット、と人物本位で読むもよし。四国八十八箇所巡りのように、通し打ち、区切り打ち、乱れ打ちをするもよし。どこで読了を宣言するのか、それもあなた次第です。
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