(2)あらためて読んでみて特に印象に残ったのは、本書のタイトルである『近代の呪い』としての二つのキーワード、インターステイトシステムと世界の人工化についての論考であった。一つ目のインターステイトシステムというのは、世界が国家(ネイション・ステイト)間の鮮烈な競争の上に成り立つという原理のことであるようだが、その原理が200年以上経った今でも克服できない現状を我々はまさに目の当たりにしている。その間、様々な負の歴史を経験して、国際連盟や国際連合といった、それを乗り越えようとする試みは為されて来たが、→(3)
(3)十分に機能していないことを思えば、まさにインターステイトシステムという呪いに呪縛されていると言えるだろう。その結果、ウクライナにおけるロシア、中東におけるイスラエル、そしてアメリカと中国の世界派遣をめぐる争い等といった国家の横暴に対する有効な手立てを打てずにいる。そして二つ目の世界の人工化については、自然に対して鎧と矛を纏うような社会を我々は特に近代を通して創り上げることに血道を上げてきたことに通じるだろう。その結果、気候変動や生物多様性の喪失などの地球史レベルの大問題を生じさせた。→(4)
(4)このような人類史の岐路に立つ大問題に直結するものが近代化の一面としての呪いであるということには、今や誇張ではなく妥当性を感じる。だが、呪いという言葉から安易に神の怒りや悪魔の所業をイメージするのではなく、それは我々人間(近現代人)の意識や態度が創り出したものであるということに反省と改善の希望を見出さなければならないと感じた。
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(2)あらためて読んでみて特に印象に残ったのは、本書のタイトルである『近代の呪い』としての二つのキーワード、インターステイトシステムと世界の人工化についての論考であった。一つ目のインターステイトシステムというのは、世界が国家(ネイション・ステイト)間の鮮烈な競争の上に成り立つという原理のことであるようだが、その原理が200年以上経った今でも克服できない現状を我々はまさに目の当たりにしている。その間、様々な負の歴史を経験して、国際連盟や国際連合といった、それを乗り越えようとする試みは為されて来たが、→(3)
(3)十分に機能していないことを思えば、まさにインターステイトシステムという呪いに呪縛されていると言えるだろう。その結果、ウクライナにおけるロシア、中東におけるイスラエル、そしてアメリカと中国の世界派遣をめぐる争い等といった国家の横暴に対する有効な手立てを打てずにいる。そして二つ目の世界の人工化については、自然に対して鎧と矛を纏うような社会を我々は特に近代を通して創り上げることに血道を上げてきたことに通じるだろう。その結果、気候変動や生物多様性の喪失などの地球史レベルの大問題を生じさせた。→(4)
(4)このような人類史の岐路に立つ大問題に直結するものが近代化の一面としての呪いであるということには、今や誇張ではなく妥当性を感じる。だが、呪いという言葉から安易に神の怒りや悪魔の所業をイメージするのではなく、それは我々人間(近現代人)の意識や態度が創り出したものであるということに反省と改善の希望を見出さなければならないと感じた。