(3)それでは、選挙結果が万能ではないとすれば、保守(死者の権利を含めた民主主義)の精神は何に反映されるのかといえば、それこそが憲法である。そういう意味では、改憲派の一部が主張するような、現行憲法が占領国であるアメリカによる押し付け憲法であり国民の伝統が反映されていない、という意見にも一理あるように思える(私は必ずしもそうであるとは思わないが)。そうであれば、それを死者を含めた国民の総意にかなったものに改編する、ということも立憲主義の精神には含まれていることになる。ただし、その条件としては、→(4)
(4)理性を過信した合理主義的、設計主義的な大変革,急変革ではなく、過去を敬い、人間の可謬性に根差した漸進的なものにならざるを得ず、ましてやアメリカの世界戦略に同調するための、伝統的国民の意思を無視した改憲案が保守の精神と相反することは明らかである。これらは、著者の思想的師でもあり私自身も敬愛する故·西部邁氏によって唱えられていたものでもあると思うが、今回の著者の論考によって、政治的な保守、リベラル、そして立憲主義の思想的背景と、それらを踏まえた政治実践上のバランスの取り方がより明確に示されたと感じた。
(4)過去の日本人の失敗をあげつらうことではなく、現在を生きる我々の在り方を見つめ直すことだったのではないだろうか。かつての熱狂は、情報源の少ない時代に、それを一手に握っていたとも言える新聞に代表されるマスコミに誘導されたもので、質量ともに情報に恵まれた現在ではあり得ないと言えるだろうか。情報の質量とは無関係に、一度インパクトの強い情報や思想にとりつかれると、他を省みなくなる。それは現在でも変わっていないのではないか。むしろ情報の多様性に振り回され、自分の頭で判断する能力が劣化してはいないか。→(5)
(5)ということを考えさせられた。そのためにはやはり物事を正しく知ることが始まりと言えるだろう。勿論、本書の記述が事実としても見解としても、完全に正しいとは断定できないが、少なくとも探求心をもって、真実を求めようとする姿勢とそれを噛み砕く姿勢は、教えられた気がした。
(2)社会·経済における確固たるシステムと見なし、本書の倫理資本主義では、それを確たるシステムとしてではなく、人間の多様で自然な営みから生まれた形態のひとつであるとする。その捉え方の違いから、資本主義自体を廃止するか、発展的に継続するかという大きな違いが生じるが、冒頭にあげたような現状の資本主義に限界を認め、根本的な持続性を主眼においた人間のあり方、環境との関係を重視する方向への転換を求めると言う点において、共に魅力的な社会思想であると思う。現時点で、二者択一的にどちらかに偏るのではなく、→(3)
(3)両者の主張、今後の展開に注目して行きたい。しかし残念なことに、現在行われている選挙戦の中でも、このような大きな視点、長い視点で国の方向性をどうするかと言う議論がなかなか立ち上がってこない。そう言う意味においても、本書でも提案されている子供への選挙権の拡張には、大きな可能性があると感じた。
(5)可能性が感じられることである。そうであれば、事は維新の問題のみでは無く、かつて、人情の街として知られた大阪が、自己利益のみを求める冷徹な都市住民の街と化してしまったとも,言えるのでは無いだろうか。そのような都市住民化のみが、維新の人気を支えているとは思わないが、その一端はあるように感じる。また、これは完全な私見であるが、大阪には元来、メディアへの露出度が、政治家の人気を左右する風潮があるようにも感じられる。昔からタレント出身の国会議員や自治体首長が多く、維新の会の初代大阪府知事である橋下氏を→(6)
(6)はじめ、松井氏、吉村氏等も、メディアへの露出度は高く、案外単純にその辺りが人気の最たる要因かもしれず、政権側も大いに意識し、利用しているのでは、とも感じられる。もちろん、経済学者である著者から、また、政策の分析という客観性を旨とする本書からそのような見解が出るはずも無いが。とにかく、政治を劇場化せず、政策を冷静に見つめ、将来の社会に及ぼす政治の影響力の大きさを真剣に捉える必要を、自分への戒めとしても、強く再認識させられた。
(2)旧ロシアと言った世界強国の地政学的関係が日本を含む東アジアの歴史にどのような影響をあたえたのかを、グローバルな視点によって,逆に鮮明に理解することが出来た。年齢にこだわらず、知ったかぶりをやめて、謙虚にこのような基本書に接することで、また新たな、読書の楽しみが得られたように感じた。
(3)現在に至り、経済力が低下する中で、必然的に中国に国交におけるプライオリティまでも奪われ続ける遠因となったのでは無いか。ことは、そのような国のプライドといったことに留まらず、世界一の少子高齢化を迎え、外国からの就業者に力を借りなければ、経済自体が成り立たなくなろうとする時代に、身近なアジアの国々から、選ばれる国になっているだろうか。少なくとも、アジアからの就業者に対して、日本人と同等の人権を認め、あるていどの文化や歴史を知ることは、国益にとっても今後ますます重要性を増してくるだろう。→(4)
(4)そう言う意味においても、この様な歴史書は意義深いものであると感じた。また、そのようなある種打算的な意味のみならず、遠い時代のシルクロードから中国、朝鮮半島を通じての、日本文化、宗教の源流や共通点を感じられる点でも、大いに知る価値のある歴史であり、それを通して、そこに住む人々にリスペクトを感じるきっかけにもなるだろう。
(2)そして何よりも、今回の発言が、今後の著者の言論活動に、深刻な影響を及ぼさないことを願うばかりである。さて、少し前置きが長くなってしまったが、本書の感想としては、政治、芸能、文学、外国人をめぐる人権問題、歴史認識、そして著者の専門でもあるジャーナリズム等々、日本が抱えるあらゆる問題に、鋭く、かつ深く切り込んだ良書であると感じた。普段TVでのコメント等で投げかけられる問題提起を、それぞれの専門家の知見を借りて、さらに掘り下げる対談形式となっており、日本の闇の深さをさらに深刻に感じさせられた。→(3)
(3)日本の国力の低下が、いまだに経済問題に帰せられることにこそ、危機感の欠如という深刻さがあるということを改めて思い知らされた。と同時に、同様の違和感を感じておられる方には、是非一読をお勧めしたい一冊である。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
(2)旧ロシアと言った世界強国の地政学的関係が日本を含む東アジアの歴史にどのような影響をあたえたのかを、グローバルな視点によって,逆に鮮明に理解することが出来た。年齢にこだわらず、知ったかぶりをやめて、謙虚にこのような基本書に接することで、また新たな、読書の楽しみが得られたように感じた。