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マウンテンゴリラ
さんの感想・レビュー

マウンテンゴリラ
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本書に言われるように、江戸時代がほぼ完璧な循環型社会が形成された時代であったということは、よく耳にして来た。一方でこの時代は、総じて寒冷化による飢饉が多発する時代でもあり、食糧生産やエネルギー供給(森林資源)の限界に伴う、人口の停滞期(よく言えば安定期)であったこと等、再生可能エネルギーに全面依存する社会の限界が示されているという面でも、社会と環境というテーマを多角的に捉えており、歴史を振り返ることが現在を考える上での必須事項であることを強く意識させる良書であると感じた。また、政治と庶民の関係につ→(2)
マウンテンゴリラ

(2)いても語られており、その点についても考えさせられることがあった。古今東西、政治に翻弄される庶民の姿は変わらない面がある、というのは感じられたが、一方で、江戸時代と現在ではその様相が大きく異なるということも感じさせられた。短絡的に過ぎるかもしれないが、私が感じる様相の違いの最たるものは、国民と政治家の信頼関係といったものである。江戸時代が多様な環境危機に見舞われながらも、世界に冠たる循環型社会を形成できたのも、その信頼関係の作用が大きな要因としてあったのではないか。例えば、幕府や藩といった政治→(3)

04/27 22:33
マウンテンゴリラ

(3)機構の側からは、単なる強権的支配というだけでなく、飢饉の救済といった庶民に対する慈しみや、森林保護のために庶民の欲望を抑える施策を打つなど、大局的見地からの責任感が感じられ、庶民の側にもそれに応えようとする信頼感情があったようにも感じられた。それに対し現在は、欲望の制御を無効化し、それに反比例するかのように責任感を薄れさせ大衆化した庶民が、政治への関心を益々失って行く。そしてそれに連動するかのように、政治家の倫理観や責任感も失われていく。まさに、本来分断されようもないはずの国民感情と政治の分→(4)

04/27 22:47
マウンテンゴリラ

(4)断が生じている。そのような悪循環に陥っている現在が、かの時代以上に深刻な環境問題を抱えている、ということを思えば、それを乗り越えることが相当に悲観的な状況であるということも本書を通して感じさせられた。

04/27 22:51
0255文字
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読書データ

プロフィール

登録日
2010/09/30(5295日経過)
記録初日
2010/08/09(5347日経過)
読んだ本
1253冊(1日平均0.23冊)
読んだページ
367236ページ(1日平均68ページ)
感想・レビュー
1203件(投稿率96.0%)
本棚
45棚
性別
職業
技術系
現住所
大阪府
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