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内島菫
さんの感想・レビュー

内島菫
新着
私は以前からマンガ批評的なものを通して、マンガ批評だけではないようなものをもやもやと考えていたが、本書はまさしく私にスイングバイさせてくれるような惑星だ。例えば、まどの一哉のマンガで私が見出した「似非伏線」という概念。それは通常の伏線と違って回収されない伏線であり、だからこそドローン的・回収的な視点で世界を見ることなくベンスーザンのいう立ち位置からの視座が立ち現れ、わからなさに裏打ちされたワクワク感が際立つことにつながる。また、60年代から70年代あたりの『月刊漫画ガロ』に掲載された新人作品を通して得た
内島菫

「初期作品最高傑作説」。それは、一般にいわれるような後期あるいは円熟期の洗練された作品をもってその作家の最高傑作とするのではなく、デビュー作品もしくはそれに続く初期作品こそがその作家の最高傑作とする考えだ。初期作品を人に描かせる初期衝動と呼ばれるものが、まだ技術や形式という武器もしくは枷を持っていないがゆえに、作品としての良し悪しなど最初から飛び越えているところのそのあらぬ方向への飛び越えを「初期作品最高傑作」は讃える。新人という作家としての孤独性(断絶性)と、既成のマンガ作品の破壊性とが、

06/01 17:04
  • 彩菜
  • niam
  • syaori
内島菫

本書の唱える「破壊の形而上学(MOD)」と私の中で二重写しになる(余談ながら、私は異世界転生ものは地図の中に書き込まれた破壊であり、この初期作品こそが地図そのものを破棄する破壊だと考える〕。そして、私の本『トートロジー考』でスポットライトが当たった「トートロジー」の探究。日常や自然において毎日・毎年同じことが繰り返されると言われるものの、本当に一分の隙もないほど同じことを繰り返すことなどそもそも不可能である。同じでないからこそ繰り返すことができる、という矛盾した言い方が成り立つのがトートロジーであり、

06/01 17:05
  • 彩菜
  • niam
  • syaori
内島菫

繰り返すという時間性が弱い破壊を何度ももたらし得る。トートロジーは同じところを堂々巡りする円環のように見えながら、実際は螺旋状に未来へ進む。その螺旋の巻き起こす渦が螺旋自体をも破壊することができる。トートロジーは弱い破壊でありながら、知らないうちに破壊自体をもじわじわと破壊できる退隠性の破壊をも呼び込み得る。 さらに、自説あるいは自作のドローン的視点からの全体化や構造化に抗うために、本書ではベンスーザンの「中断」という概念がクロースアップされているが、私が考えていたのは「予感」と「面影」という概念だ。

06/01 17:06
  • 彩菜
  • niam
  • syaori
内島菫

「予感」と「面影」の差はその時間性であり、「予感」は物事(例えば破壊)の到来前に見えない未来のにおいを嗅ぎとり、「面影」は物事(例えば破壊)の到来後にすでに見えなくなったそれの残り香を嗅ぎとる。どちらも時間にかかわりながらも時間から断絶されており、であるがゆえに実は入れ替え可能でもあると私は考える。その入れ替え可能性は偶然性とかかわる。…本書と関係のない方向へと感想を広げてしまったように見えるが、しかしこれこそ本書風の読み方であるだろう。

06/01 17:08
  • ころこ
  • 彩菜
  • niam
  • syaori
内島菫

一つ目のコメントにある「「初期作品最高傑作」は讃える」→「「初期作品最高傑作説」は讃える」

06/01 17:15
  • 彩菜
  • syaori
0255文字
全5件中 1-5 件を表示

内島菫
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読書データ

プロフィール

登録日
2013/05/01(4350日経過)
記録初日
2013/05/06(4345日経過)
読んだ本
994冊(1日平均0.23冊)
読んだページ
251626ページ(1日平均57ページ)
感想・レビュー
828件(投稿率83.3%)
本棚
31棚
性別
現住所
東京都
外部サイト
自己紹介

趣味で評論や小説を書いたり別名で漫画を描いたりしています。
http://kounotori0.blog.shinobi.jp/
http://countdown00.hatenablog.com/ 

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