長編と誤解して手に取ったら、短編集だった。どの話も、最後に少し希望の持てる、ちょっといい話だった。私は、こういうのは嫌いではない、いや、むしろ好きだ。

長い話だった。事件に関わったさまざまな人物からの視点で事件を描く。とても丁寧に作り込まれた作品。テーマは、今となっては少し古く感じるが、当時はまさにバブルの負の面を捉えた快作だったろう。

萌はともかく、るり子のような女性には私の人生に立ち入って来てほしくない。向こうからやって来ないだろうけど。そんなことを考えながら読んでいたが、最後は爽快な終わり方だった。登場人物が変に後悔しないのが良いと思う。

著者本人と思しき若い男性の、自衛隊入隊まもないころから辞めるまでの1年半ほどを描く2作。みな、いろいろな理由で入隊している。職業軍人的な幹部とそうでない者との隔たりは大きい。自衛隊員の全てがマッチョなわけではない。

文章のところどころに出てくる「YO 朋輩」というのが、リズミカルというより読みづらく、全体に流れの悪い文章だと思った。ときにハッとすることも書かれているのにね。