2023年11月の読書メーター 読んだ本の数:13冊 読んだページ数:1350ページ ナイス数:420ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1124113/summary/monthly/2023/11
「西洋絵画」ではルノワール、ボナールは常設展で見られたが、本図録に多数収録されている藤田嗣治の常設はなし。「日本洋画」では梅原龍三郎の他には小磯良平のものは多数常設されているが、本書に掲載されている佐伯祐三と岸田劉生の常設はなし。「日本画」では、本図録掲載の上村松園とその子、孫の作品の常設はなし。「陶磁器・彫刻」は平櫛田中(ひらくしでんちゅう)の作品は常設しているが、図録にある河井寛次郎や宮本憲吉の作品の常設はなし。
また逆に、常設展にある作品が図録に収録されていないものもある。山王美術館は一つのビルが美術館になっており、スペースも館員の数も多いので、常設展には、最低、本書に収録されている作品のすべてを展示して欲しいところ。
例)カッコ内が添削後。「青き絹のべて描ける桜とも仰ぎて思ひ小金井の空」(青ぎぬを展のべて櫻を描くとも花かげに見る武蔵野の空:小金井にて)p60.「櫻より目を移すとき雑木も既に若葉し富士しろく立つ」(櫻さく蔭より見れば若葉する雑木のうへに富士白くたつ)。
同展覧会ではアンケートに答えると2006年堺市立文化館で開催された「特別展 没後70年記念 パンフレット 与謝野鉄幹 鉄幹から寛へ 不遇な生涯と短歌への情熱」を無料配布していた。16ページの白黒写真を掲載したものだが、以下の平野万里のエッセーからの抜粋「鉄幹は西行芭蕉の子孫であり、旅行は即ち吟行であって、夜は大抵更けるまで作歌に精進せられたのである。命を削って居られる。道の為に作らずには居られなかった。即ち大乗的作歌でもあった。先生が命を縮められたのはその為であった、即ち道の為であったp9」。
森藤子(鉄幹の六女)「私が両親から貰ったものといったら、才能じゃないんですね。物が乏しいということと心が貧しいということとは、全然違うものなんだということを教えてくれたのが両親だったp11」。
荒野の狼さん 夜分に失礼します!🙇 やはり、与謝野晶子は女歌の歴史に貢献された、素晴らしい歌人のお一人ですね。 確かに与謝野晶子の、笑顔の写真と云うのは観た事が在りませんでした。 今年も、私が選書し得ない、良書のご紹介&詳しいレビューの、掲載から学びを頂き有り難うございました!🙋 来年も宜しくお願い致します!💫 お寒いですので、体調に留意されて、良きお年をお迎え下さいね!🎍 2023年の感謝を込めて、、、宵待草
雨季なきうさ様 コメントありがとうございます。コミックは、あまり読んでいないのですが、コミックこそ、日本が世界に誇れる文化で、世界に類のない秀作があるのではと思いあたりました。いまさらながら、コミックの古典や、大御所の作品を、自分の興味に合致した時に、読んでおります。たとえば、フランス革命を勉強するには「ベルサイユのばら」を、奈良を旅行したときには、里中満智子の「天上の虹」を読むといった具合です。本作は香川県の屋島に行った時に、義経のことが知りてたかったので、竹宮恵子「吾妻鏡」を読んだのがきっかけです。
この他に空海(p30に略歴)ゆかりの寺である愛媛県松山市の石手寺、愛媛県の岩屋寺、高知県室戸市の最御崎寺、徳島県の太龍寺と一遍(p31に略歴)の誕生寺である愛媛県松山市の宝厳寺p24、重森三玲の庭のある香川県の志度寺(庭の写真はあるが、重森については記載なしp29、他に川端龍子のスケッチp21)が紹介されるが、こちらは1-2ページ。
他に四国のお遍路関連の記事が複数掲載。例としては、四国八十カ所の宗派は真言宗が79寺、天台宗が4寺、臨済宗が2寺、時宗、曹洞宗が各1寺p32。遍路の装束である笈摺(おいずる)は、笈を背負うとき方に当てた肩衣で、笈を背負わなくても肩衣だけが着用され笈摺の名だけが残ったp33.
日本はベトナムと2021年に防衛装備品・技術移転協定を結んだp316 欧州への違法渡航は命がけの旅p339 2020年の日本の留学生の最多は中国12万、次にベトナム6万。日本留学を日本語学校からはじめる学生は、日本語能力試験N5レベルを満たすことが要件p382。 北部では犬肉はよく食べられるが、若い人で嫌がる人は増えているp265
日本との関連も本書には随所に書かれているが次の指摘は重く受け止めたい。「ベトナムからの「偽装留学生」という言葉が流布しているが、偽装しているのは、日本の留学生政策と学校機関であり、彼らの労働力で便利な生活を享受している日本社会である。留学生に「偽装」の言葉を被せるのは、その責任回避でしかないp384.」
本書は、原典「吾妻鏡」の引用も随所にあり、新しい登場人物については脚注で簡単に解説。漫画が原作のどの部分を描いているかも、原典の参照ページも記載。中巻末には源氏、平家、天皇家の家系図も付されている。理解を助けるのは、地図が何度も登場することで、当時の国の名前、合戦の場所、武将の移動の道筋などが書かれており優れている。
なお、本書では平清盛の死因を「黄熱病(マラリア)ではないかと言われている」p135としている。清盛の死に関しては、現在のところ、マラリアや猩紅熱など諸説あるが、黄熱病は日本にはない病気なので誤り。黄熱病は黄熱ウイルスによる感染症で、蚊が媒介するが、同ウイルスを保持する蚊は日本には生息していない。野口英世がアフリカで罹患して死亡したのが黄熱病。
この後、本書では教経は壇ノ浦でも登場し、髻(もとどり)を切って大童(おおわらわ、さんばら髪)となり八艘飛びで逃げる義経を追い詰めるが、敵を両脇に抱えて道連れに海中に飛び込みp62、この直後に、安徳天皇も一コマだけ登場して入水するp63.ちなみに、竹宮惠子の「平家落人伝説 まぼろしの旗」では、教経が主人公で、壇ノ浦には身代わりをたてて、自分は安徳天皇を連れて徳島で平家復興を目指す。
この作品では、身代わりは髻を切って大童となり壇ノ浦に参戦、義経も屋島の戦いで一コマだけ登場(まぼろしの旗、p10)。義経と教経は作画も「吾妻鏡」と共通しているので、「吾妻鏡」のスピンオフとして勧めたい。
本作の話は徳島に実際に伝わる伝説をもとにしたもので竹宮の出身は徳島。舞台は、現在でも秘境ともいわれる祖谷(いや)で、本作では、祖谷川(いやがわ)に、かずら橋(サルナシ=しらくちかずらを使って架けられたな吊橋)を架ける場面も登場p70。現在も、かずら橋は観光名所として渡ることができるが、香川県の四国村にも、かずら橋を再現したものがある。
安徳天皇が壇ノ浦では死ななかったとする伝説は他にも多数あるが、四国では高知県の横倉山(牧野富太郎が植物採集をしたことでも有名)に同様の伝説がある。本作を読めば安徳天皇の伝説に魅力を感じる読者は多いだろう。 本作は、安徳天皇の伝説を楽しむ他にも、メッセージ性もあるラストになっている。すわわち、大切な人を喪ったときに、喪われたものにすがって生きることは、亡霊を呼び戻すのに似ているので、「この地に根を張り子々孫々まで脈々と、ただ命を継いでゆく」ことが死者のメッセージである。
本書には五剣山を背景に発つ八栗寺本堂の写真p14が掲載されているが、五剣山は見る位置によっては、アメリカのモニュメントバレーのように頂上付近が見える霊山(本書では「ラクダのコブにみえる」と記載)。志度寺では重森三玲の庭園の写真p22が掲載されているが、重森については触れられていない。ちなみに香川の寺には大草鞋を度々目にするが、本書には志度寺の仁王門にかかげられている大草鞋の写真があるp1。
巻頭インタビューは、陶芸家の三輪壽雪(みわじゅせつ)のもので4ページ。内容は、お遍路には全く関係のないインタビューで、人間国宝の認定理由の一つにもなった「鬼萩(おにはぎ)」について。95歳の時のものだが、三輪は2012年に102歳で老衰で亡くなっている。
同記念館は、本書p22で紹介している「源内奇才劇場」という10分の源内の生涯をまとめた動画が展示物の理解に重宝で、また「体験コーナー」ではエレキテル体験ができ、使用方法は館員の人がとても親切に紹介してくれるなど好感が持てる。
記念館から徒歩550 m のところに、平賀源内旧邸・薬草園があるが、本書ではこちらも紹介。旧邸では、館員の人が、来館すると、薬草茶をその場で作ってくれて無料のサービスをしてくれたり、中庭の薬草園には、所狭しと多彩な薬草が植えられているのが魅力。記念館と旧邸ともに駐車場があるのも便利。近くには四国八十八カ所第86番札所の志度寺(重森三玲の庭園も公開されている)もあり、同地を訪れたときは、一緒に見ておきたい。
菊池寛は、自作を「歴史的には最も悲惨な人物とされている俊寛の生活の中にも、幸福を見出そうとした」と評しているが、芥川は自作の「俊寛」も同様にハッピーエンドにしており、悲惨な境遇にも幸せが見つけられるという菊池寛のメッセージはうけとっていたのかもしれない。
小さなことにこだわらない豪放磊落な菊池寛と様々なことを気に病んで自殺してしまう芥川は正反対のところがある。菊池は芥川の相談に乗っていたが、芥川の自殺をくい止めることができなかったことを悔いている。芥川の小説の中で、俊寛の自殺は止めたが、芥川本人の自殺は止められなかったことは残念である。
菊池は芥川の相談に載っていたが、芥川の死の直前に面談ができなかったことを終生悔いていた。芥川は、菊池版の俊寛に感ずるところがあって、同様なハッピーエンドにした可能性があり、芥川版に登場する俊寛は、菊池寛のような豪放磊落なところがある(奇しくも、俊寛と菊池寛は「寛」の字を共通とする)。菊池寛は、芥川の作品の中で俊寛の自殺を食い止めることはできたが、芥川本人の死は止められなかったのは悲しい。
巻頭インタビューは、作家の城山(しろやま)三郎のもので4ページ。本人は四国遍路の経験があると冒頭には書かれているが、話題はそれから次々と変わっていくエッセー。浜口雄幸、自身の軍隊経験、クリスチャンになったこと、憲法九条、広田弘毅(文官でただ一人A級戦犯として東京裁判で処刑)について語られ、興味深い。
なお本書には坂出・国分寺界隈の宿が紹介されており、その中に城山温泉があるが、こちらの読みは「きやま」であり、城山三郎との関連はない。城山温泉は毎日、芝居が公演されるユニークな旅館で宿泊客は無料で芝居が見られるが、公演が日中のみで夜間はない。
上・中巻では良心的な善玉であった政子が、本作では腹の中が読めない存在となっている一方、政子と行動を共にする北条義時は一貫して力強い悪役。下巻は、これまで以上に政変があり、目まぐるしい展開。それぞれの事変に割かれるページは少ないので入門編といえる。頼家・実朝の惨殺や、後者の実行犯の公暁とその同性の愛人として描かれる駒若丸(三浦光村)など、読者を刺激する内容もあり飽きさせない。
実朝暗殺(1219年)以後は、承久の乱などが描かれるが駆け足で1266年までの出来事を36ページで記載して完結する。3ページの著者の「あとがき」では太宰治の「右大臣実朝」と「吾妻鏡」のことや、時間とページ数の制約はあったものの、「一人のキャラクターから次のキャラクターは、史実は含むものが多く、豊潤な魅力をたたえているp274」としているが、まさに漫画「吾妻鏡」こそ豊潤な魅力をたたえた優れた作品といえる。
本書は、それぞれの寺に割かれるページは少なく、境内や寺宝・文化財や歴史に関する記載もごくわずかで写真も数枚。根香寺は紅葉の写真が美しい。たとえば屋島寺は重森三玲の作庭の庭園(条件付公開)が有名であるが、この「雪の庭」に関する記述は一行p27のみで、写真も重森に関する記載もない。むしろ、この三寺をまわる際の行き方や道なりに何があるかに焦点がおかれており、三寺以外の地域の風物を知るにはよい内容。
記載は、桃太郎伝説の女木(めぎ)島p17,23,法然ゆかりの法然寺p18、源平合戦の舞台である屋島p22,栗林公園、四国村、直島の安藤忠雄が設計したベネッセハウスp32など。画家の川端龍子(りゅうし)による三つの寺の絵・俳句・探訪記が2ページに掲載。 巻頭インタビューは、宇宙飛行士の毛利衛のもので4ページ。興味深い内容だが、掲載の寺とも、お遍路とも無関係であるのは残念。
本作では登場人物の描かれ方に特徴がなく魅力がないことがほとんどであるが、義経は若々しくヒーローに相応しい。源頼朝は、鎌倉で指示を出す場面がほとんどで登場場面は少ない。「あとがき」で横山光輝は「平家物語絵巻」を頼りにして本作を描き、「ああ難しかったというのが私の感想であるp273」と述べている。
他に中巻では、福原遷都や木曽義仲の活躍が描かれるが、印象的なのは、奈良の興福寺の僧兵で、当時の寺が軍事組織として強大であったことがわかる。本書には平家と源氏のそれぞれの家系図が巻末に付されている。
本書でユニークなのは僧兵で、特に比叡山の僧が、神輿(しんよ)をかついで強訴する巻第一「御輿振」(1177年)のエピソードは興味深いp113。それまで、どの天皇も神輿の前ではひざまずいたところが、ここでは神輿を平家が射るp124.他に印象的なのは平重盛で、父である清盛を度々制して、後白河法皇の衝突を避けていく。残念ながら重盛は43歳で清盛より先に死亡p204するのだが、読者には強い印象を残す。重盛は後に万里小路藤房、楠木正成と共に「日本三忠臣」として高く評価されたというのも肯ける。
マンガ日本の古典(全32巻)で、本書と同時代を扱ったものに、14-16巻「吾妻鏡(上・中・下)」(竹宮恵子)があるが、こちらは、漫画としても、登場人物の魅力、ストーリー性などいずれをとっても「平家物語」よりははるかに面白い。両者を合わせて読むと、この時代を異なる視点から描かれているため理解は深まるが、どちらか一冊を勧めるとすれば「吾妻鏡」に軍配があがる。
題名は、主人の息子の仇討ちの話が絡んでいることから。トンネルの総長と主人公が掘り勧めていく深さが度々比較されているが、これが尺貫法であるため、尺、間、丈、町が、それぞれメートル法で、どの長さに相当するかを確認しながら読みたい。本作は、江戸、木曽路、大分と三つの場面に別れ、それぞれに登場人物と展開が異なり、飽きさせない。題名とストーリー展開から話の筋は読めてしまうが、短編であるため、ストレートな流れでよいと言える。
これは、かつて統合失調症などの精神病患者が閉鎖病棟などに閉じ込められ、そのこと自体が精神症状に悪影響を与えていた時代にあって、本作に登場する家族は、極めて現代的なサポーティブな姿勢を取っている点は高く評価したい。また、本作に登場する「狂人」が、本来は尊敬されるべき神の使いたる巫女に比べて、人間的に純粋で、腹黒いところがなくリスペクトされるべき対象として描かれており、精神病患者への偏見のない優れた作品と言える。
本書の冒頭では、短編「形」p2を紹介。他に紹介されている作品は、マント事件をモデルに書いた「青木の出京(しゅっきょう)」p41.友人の成瀬正一の母への感謝と哀悼の意を込めた作品「至誠院夫人の面影」p43.
「彼が、僕を頼もしいと思っていたのは僕の現世的な生活力だろうと思う。そういう点の一番欠けている彼は、僕を友達とすることをいささか、力強く思ったに違いない。そんな意味で、僕などがもっと彼と往来して、彼の生活力を、刺激したならばと思うが、万事は後の祭りである。」
同記念館で、私は「まんがで知ろう! 高松市が生んだ文豪 菊池寛」という88ページの菊池の伝記漫画を購入したが、この中でも本書に記載のある芥川が自殺する少し前に、二度にわたり菊池に会いにきたのに面会が果たせなかったことが書かれている。芥川をとうとう訪ねなかったことが「一生涯僕にとって、悔恨の種になる」と菊池は本書で述べている。
Amazonのレビューは2009年くらいから投稿しております。本の長めの感想は、アマゾンの「荒野の狼」の上記URLをご参照ください。本職は医学部で微生物学・免疫学・神経難病などの教育・研究をしております。現在は大阪在住ですが、アメリカで21年間医学教育・研究をしておりました。職場のURLは以下です。
https://www.med.kindai.ac.jp/microbio/
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
本書は、原典「吾妻鏡」の引用も随所にあり、新しい登場人物については脚注で簡単に解説。漫画が原作のどの部分を描いているかも、原典の参照ページも記載。中巻末には源氏、平家、天皇家の家系図も付されている。理解を助けるのは、地図が何度も登場することで、当時の国の名前、合戦の場所、武将の移動の道筋などが書かれており優れている。
なお、本書では平清盛の死因を「黄熱病(マラリア)ではないかと言われている」p135としている。清盛の死に関しては、現在のところ、マラリアや猩紅熱など諸説あるが、黄熱病は日本にはない病気なので誤り。黄熱病は黄熱ウイルスによる感染症で、蚊が媒介するが、同ウイルスを保持する蚊は日本には生息していない。野口英世がアフリカで罹患して死亡したのが黄熱病。