東京の片隅で其々に悩みや誰にも言えない悩みや生き辛さを抱えながら暮らす人々の連作短編集。読んでいると自分の中にある黒い感情だったり忘れていた過去のモヤモヤや嫌なことが抉り出されてちょっとしんどかったりもしたけれど、それでも最後には『惑いの星』に住んでいる私達は惑いながらも生きていていいんだと背中を押されて励まされているように感じた。特に『眺めのよい部屋』は私と母の年代にピッタリなので感情移入して泣いたし、後悔なく母を見送りたいと思った。生きることに疲れたら読み返してプラネタリウムで癒やされたい。

表向きはゴーストレストランだが、そこに持ち込まれるのはなんとも地獄な取り合わせメニューに隠された謎解きの依頼。デリバリー配達員がギグワーカーとなりオーナーの謎解きピースを集めていく。各話の導入部の繰り返しには少し辟易したものの一話一話は単純に面白かった…。が、最終話でこの店のヤバさに驚愕！オーナーが語る謎解きの内容が悍ましすぎて気持ち悪くなった。しかしながら真相よりも縋りつくに足る解釈を求めて安心する人間心理、自分の中にもあるんだろうけれど何か嫌だな。

久しぶりに会えた八雲くんは大学生から助教授になっていた。と言っても学生時代の八雲くん、最終巻だけはどうしても読めなくて未読のままなんだよね。だから少しネタバレ的なこともあったけれど、充分読み応えありました。新たなキャラクターが増え面白かったけれど、晴香ちゃんの出番が少なくなったのが寂しいなぁ。今後の話の展開も気になるけれど、そろそろ積読状態の最終巻を読んでおこう。

９回目の転生をした黒猫と神罰により人の身に堕とされ物語を紡ぐことが出来なくなった書物の神・魁星の話。黒猫(クロ)の過去の転生は人間の身勝手などで辛い記憶しかなく、それでもたった一度だけ心を通わせた主との記憶のみを大切にしている姿が気高く感じられた。クロの最後の生はクロらしく生きながらも周囲の優しさに触れて、魁星と一人の少女を救い充実した幸せな最期だったのだろう。読み終えた時「クロお疲れ様でした」と声をかけたくなった。

エピローグ以降のネタバレが一番ビックリ！マジでこんな邸宅建てちゃうなんて正気の沙汰ですか？と思いましたが、おかげでこんなに面白いミステリ作品が出来たのならアリなんでしょうね。大御所覆面作家の邸宅に招待された中堅作家や書評家と担当編集者、それに探偵。吹雪に閉ざされクローズドサークルとなった邸宅で突如起こった覆面作家消失事件から展開する物語は謎が謎を呼び混沌としていく。不安が増大していく中で起こる殺人事件がきっかけとなって話しは解決編へと向かっていくのだが、その転換点だけが私的にはイマイチ興が削がれた感あり。

東京の片隅で其々に悩みや誰にも言えない悩みや生き辛さを抱えながら暮らす人々の連作短編集。読んでいると自分の中にある黒い感情だったり忘れていた過去のモヤモヤや嫌なことが抉り出されてちょっとしんどかったりもしたけれど、それでも最後には『惑いの星』に住んでいる私達は惑いながらも生きていていいんだと背中を押されて励まされているように感じた。特に『眺めのよい部屋』は私と母の年代にピッタリなので感情移入して泣いたし、後悔なく母を見送りたいと思った。生きることに疲れたら読み返してプラネタリウムで癒やされたい。