山岳小説では登山と仕事・家庭の話が並行して進むパターンは珍しくはないものの、本作では道無きルートを登る「バリ山行」を取り上げながら、予想よりも仕事の比重が高めではあったが、バランス良く展開されていた印象。主人公がバリ山行にハマる過程は余り共感できなかったが、仕事や家庭のことを忘れたくて一人で登山するがなかなか頭から離れない、みたいな描写には大いに共感。また、芥川賞の条件となっているらしいが、中編作品で、ストーリーの深みを出すのは難しかったと思われた反面、読み易かったのが良かった。

他の方々と同様にNetflixのドラマが面白そうで、という動機にて。積水ハウス地面師詐欺事件がベースになっているが、事件の概要を調べたところ思ったよりも実際の内容が多いようで、こんな世界もあるのか、と社会勉強にもなった。

山岳小説では登山と仕事・家庭の話が並行して進むパターンは珍しくはないものの、本作では道無きルートを登る「バリ山行」を取り上げながら、予想よりも仕事の比重が高めではあったが、バランス良く展開されていた印象。主人公がバリ山行にハマる過程は余り共感できなかったが、仕事や家庭のことを忘れたくて一人で登山するがなかなか頭から離れない、みたいな描写には大いに共感。また、芥川賞の条件となっているらしいが、中編作品で、ストーリーの深みを出すのは難しかったと思われた反面、読み易かったのが良かった。

水上勉の『飢餓海峡』以外の社会派推理小説作品ということで興味を持った。東京で詐欺被害にあった洋服問屋社長の失踪事件と福井の若狭海岸で起こった小学校教員の墜落死が、新聞記者の追跡調査により辺鄙な小集落を起点としていることが解明される内容だったが、登場人物が多く、更に犯行側のみならず捜査側も多くが偽名を使っていることもあり、読んでいて混乱気味になってしまった。

前作『バッタを倒しにアフリカへ』に続く海外でのフィールドワークの奮闘ぶりと共に、前作では論文発表前で紹介されていなかった研究成果も盛り込まれており、少々長かったが十二分に堪能できた。オスが集団を作りメスが交尾のために訪れる「レック」という配偶システムが様々な生物種で見られることについては学術的に興味深いところで、今後研究が進展した暁には一般向けの自然科学書として紹介されることを期待。ところで表紙にバッタコスプレの人物が2人になっていることの説明が本文にはなかったような？

江戸川乱歩賞作品では珍しく？殺人事件は起きない（『完盗オンサイト』もだったか？）が、短期間でボディービル大会の上位入賞を果たした人気アイドルのドーピング疑惑を新人雑誌記者が潜入取材、ジムのトイレに細工して尿を採取、のような作品紹介に興味が湧いた。コミカル風味だが、いろいろな謎や疑問を納得できるレベルで解決していて面白かった。また、江戸川乱歩賞作品では珍しく？シリーズ化できそうだし、それを仄めかしたような終わり方だったので続編に期待。

初書籍化となる表題作中編「閉じた海」と短編２作（「よごれた虹」「雨」）、および、対談・エッセイなどからなるコレクション。２年ほど前に読了した未書籍化作品集『任務』の小説は出来が十二分ではなかった感を持った（故に未書籍化だった）が、本作小説は『任務』よりも出来が良いと思った一方、未完成のような印象もあり、著者自身はもう少し手を加えたかったのでは？と推量した。

途中で既読だったことに気付いたが、予め読メに記録しているか調べたものの、同一著者・同一作品でも、単行本/文庫本/電子書籍で、さらに出版社が異なると別作品扱いになっているので見落としてしまった。個人的に読書数が少ないのに無意識に？再読してしまうのは情けない気分に。内容については、あらすじは省略するが、登場人物の台詞で「洋式トイレの普及に伴い股関節の柔らかい投手と力士が減ってしまった」には納得。