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刊行翌年1933年に天六ゴーストップ事件が起きた。交通巡査が信号を無視した陸軍兵を捕まえ、殴り合いになり軍対警察の対立になった事件だが、この本によると、「信号機」はまだ珍しく、その標示は警官が手動で行っていた。警官によっては、少しの信号「無視」でも、激烈に歩行者やタクシーを怒鳴っていた。しかも青と赤しかなく、すぐに信号無視になった。筆者は「彼は処罰の快感でのみ生き…てゐる」と書く。しかも天六、今もその辺は信号なんかそうそう守らない。私服の陸軍兵なんてそこいらの兄ちゃん。偉そうなポリと兄ちゃんのどつきあい。
「女給」の接客マニュアルは、今以上に「決まり文句」だけで、想定外のことを尋ねられたら「彼女は忽ち顔を赤くして、もぢもぢしたまま黙ってしまった…その返事はしてもよいか悪いか、教へられてゐなかったのである」。しかし言葉遣い教育は奥ゆかしく「少しお待ちを願います」「下げさせて戴いてもよろしうございますか」と言わせる。大阪弁の少女達が、舌を噛みながらこんなことを言わされ、それ以外の客への会話を禁じられていたのは、本当に遂行できたのか不思議に思う。もっとも今だってマニュアル一辺倒の接客ばかりだが。
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