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紺
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これは大好き。伝えようとすると感じたことから離れてしまうので以下、覚え書きで。描かれる孤独も哀しみも愚かさも、切実なのに、淡い安らかさに包まれている。生きているのだから、みんな寂しい。繰り返し失っても、最初から「なかったこと」にはならない。受け取ったもの(言葉)を抱えて生きていくことができる。月(未来)はいつも手を差し伸べている。時々の幸も不幸も、偶然も必然も。その繰り返す満ち欠けに吸い込まれて滲んでゆく。時を経ての再読の方が楽しめたけれど、若い時に読んでおいて良かったとも思える、奇妙に美しい青春小説。
紺

言うまでもなく、柴田さんとオースターの相性は抜群。言葉が、ユーモアが、そしてキティ・ウーが、燦然と輝いている。

03/22 21:33
0255文字
紺
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ホテルの一室で猟銃自殺を図った三人の高齢者。その後の遺族の日々と想いがそれぞれに紡がれる。江國さんが描く、自分の為に生きる軽やかなろくでなしたちは、どうしてか自分と離れていないように思える。誰もがいつかはいなくなってしまうし、私たちの誰もが遺された人々だ。あたりまえのように喪いながら生きていく。逝去後の方が大切な人を近しく感じるのは、彼らはもう変わることが無いからだろう。胸のうちへと住処を移したのだから。伝え切れなかった想いがあるほど寂しいが、ただその人を想う時、その魂は傍に在るのだと信じていたい。
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紺
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ネタバレ大人のためのダークファンタジーが6編。ほんの数歩先にあるかもしれない、深い深いひずみに心地よく落ちていく。どの物語も容赦が無く、不思議に儚い。『死神と旅する女』今、私が在るのも、どこかの無垢な辻斬りによって生まれた未来なのかもしれない。ならばなぜ、と問いかけたくなる。『カイムルとラートリー』少女の孤独に寄り添う獣。姿を上手く思い描くことは出来ないが、その体温は伝わってくる。寄り添うふたつの魂は、自由な「風」そのものになり、遥かな旅を続けるのだろう。安らかな美しさが胸を通り抜ける。
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紺
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マチダ訳で古事記。スケールの大きさと、ヤンキー気質な神々の自由さを楽しんだ。昨年、スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」を観劇し、そのスペクタクルすぎる世界観に魅了されたので(猛スピードで花道を駆け抜ける白猪、圧巻!)、倭建命の顛末は特に楽しめた。日本人の哀感を呼び起こす、義経にも通じるキャラクター。それにしても、欲に素直に振り回され、親子や兄弟間の確執を抱え、「いやよー」と可愛らしく嘆く、これらの神々に創られた私たちが、いつの時代も同じことを繰り返すのは仕方のないことなのかもしれないと思ってしまった。
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紺
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「飼う」とはすごくおこがましいことなのだと思う。猫たちにふりまわされ、頭をたれながら彼等に心を砕くマチダさん。猫たちのめっぽうチャーミングなセリフも、ああ、そう言うよね、唄うよね、「みなしごのバラード」と笑いながら思う。写真がまた可愛い。看取りのくだりにはどうしても胸が詰まる。覚悟や経験が役に立たないほど、別れはほんとうに辛い。見守るしかないことも、気配があちこちに残るその後の日々も。それでも、共にあったことの幸福感、あのふてぶてしいぬくもりの思い出は消えない。あの子に、ありがとうね、とまた思って泣いた。
0255文字
紺
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英国の落日、時代の大きな変遷が迫り、夕陽に照らされる主人公の内省。執事としての品格を重んじ、様々なものを遠ざけてきたのは、そう在ることの方が生きやすかったからだろう。美学や矜持も、誇りある言い訳だから。とりかえしのつかない流れのなかで、誰もがそれぞれの物語を歩んでいる。後悔や逡巡、喪失の痛みや苦さを抱えることも、人生の味わいと豊かさの一部だと思わせてくれる。それでいて、彼の真実はどこにもないようにも感じる。それでも、日の名残りを胸に、再び確かに歩き出す姿には、いじらしい哀感だけでなく、静かに励まされる。
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紺
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読後、小さな青空をプレゼントされたかのような清々しさに、こうでなくちゃね、と思う。エンタメ作品として素直に楽しめた。ジョーの優しさとピュアな危なっかしさ、それでいてヒーローにふさわしい現実的なフットワーク。守るべきもののためには繊細なだけではいられないよね。陰鬱になりすぎない、生きていくことの苦さと哀感のトーンも好み。ジェレミーの語尾「~かも」がなんともいじらしく、カールの心情を通して眺める雪の情感も沁みる。時に、ちょっと上手くいきすぎかも、な物語があってもいい。続編も手に取ろうかな。
えんちゃん

紺さん、突然コメント失礼します。私もジェレミーが『ギルバート・グレイプ』のディカプリオに重なり、懐かしく思っていました。同じことを考えていた方がいらっしゃって嬉しいです!

02/25 06:17
紺

えんちゃんさん 共感、嬉しいです。私も3人の姿が重なりました。映画では追い込まれながらも、「いい人になりたい」と願うギルバートも切なくて。ジョーにはまた別の強さと優しさがありますね。続編が楽しみです。

02/25 08:53
4件のコメントを全て見る
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紺
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英国ではホームズに次ぐ人気と言われるモース警部、シリーズ1作目。ドラマで若きモースを演じたショーン・エヴァンス(知的で厄介な繊細さが非常にチャーミング。後にふてぶてしい目つきのオジサンに仕上がるとは思えず…)のイメージで再読。酒好きなのも惚れっぽいのも違和感無し。ひとりよがりで迷走する思い付き、思い込み捜査でじりじりと真実に近づいていくのを楽しんだ。フェルミ推定?のくだりには笑ってしまう。寄り添うルイスの忍耐と忠実さよ。時代色が濃く、訳も古さとじれったさが否めないけれど、やはりなかなかに味のある一冊。
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紺
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ネタバレ冷戦時代、闇と氷に閉ざされた極北の秘密基地。謎解きを担うのはCIAお抱えの精神科医ジャック。ミステリと言うよりドラマよりで巧く読ませる。腑に落ちなさも「時代」が上手くカバー。トリックには序盤で気づいてしまうが、それも著者の想定内なのだろう、安心して読みながらその先のお楽しみを待ち受ける。脇キャラも良い。いかにも用心棒なフランク、気のいいおっさん風のコティ、クリニックのシニカルな秘書も。ジャックの妻への深く抑えた叙情にも好感。敵に「勝ちたい」ではなく、「諦めない」想いが連れてきたラストが爽やかさを残す。
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紺
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読み終わるのが惜しかった。6編、それぞれに心地よく転がされる。過去作の魅力的な登場人物があちこちに。何という大盤振る舞い。きちんと年月を経た、屋根の上に立つニール・ケアリーに会えるとは。もちろん彼らと初対面でも楽しめるはず。息がとまるような容赦の無さも、ひたすらあたたかなユーモアも。『サンディエゴ動物園』のコミカルさも嬉しい。球場はアメリカの良心なのだろう。最後の『ラスト・ライド』にはやはり打たれてしまう。「壊れた世界」を、そこであがく人々を、その力を、この作家は決して見限ったりはしない。堪能しました。
0255文字

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読書データ

プロフィール

登録日
2021/01/30(1520日経過)
記録初日
2021/01/30(1520日経過)
読んだ本
279冊(1日平均0.18冊)
読んだページ
90822ページ(1日平均59ページ)
感想・レビュー
261件(投稿率93.5%)
本棚
0棚
性別
血液型
AB型
自己紹介


「おとなってかわいそうだね。」

「どうして?」

「自分より大きなものがいないもの。

 よりかかってあまえたり、
 
しかってくれる人がいないんだもの。」

(『ドラえもん』16巻より)


だから、本を読んでいるのかもしれません。




ナイスやお気に入り登録をありがとうございます。
共読の方の感想を読ませていただいています。

素敵な物語がたくさんあるように
素敵な感性の方がたくさん。
なんと心強いことでしょう。

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