タイトルが最高にイケてる。秀逸とかではなく、並びがとにかくかっこいい。球形って言葉は使われてそうで使われてないイメージがある。(本のタイトルに意外と多いことに驚いた)それに季節っていう汎用性の高い言葉が連なってる。そもそも球形の季節って頑張って想像しようとしても意味が結実してこない。この並びだけのかっこよさで読んでみた。田舎の不気味な閉塞感と、すぐそこに裏の世界があり、一瞬で飲み込まれることもあるという怖さ。ユージニアにもあったけどツインピークス感。よりもこの本はストレンジャーシングスかも。

タイトルが最高にイケてる。秀逸とかではなく、並びがとにかくかっこいい。球形って言葉は使われてそうで使われてないイメージがある。(本のタイトルに意外と多いことに驚いた)それに季節っていう汎用性の高い言葉が連なってる。そもそも球形の季節って頑張って想像しようとしても意味が結実してこない。この並びだけのかっこよさで読んでみた。田舎の不気味な閉塞感と、すぐそこに裏の世界があり、一瞬で飲み込まれることもあるという怖さ。ユージニアにもあったけどツインピークス感。よりもこの本はストレンジャーシングスかも。

小さな町で噂が伝染する醜さは見るに耐えない。そんな閉塞した町のさらに暗渠に暮らす福田に釘付けになった。彼が住む暗渠＝団地と町の境目としての沼が、彼と斉藤の貧困さを区分する装置になってた。頭にこびりつく大きな存在は、三島由紀夫の金閣寺、九段理江の東京都同情塔のような作中の「でかいもの」の拭えない存在感に似ていて、沼を中心とした天動説に支配されるような気分でジャックされた。一部分かすったこの被支配感覚は、きづいたら物語の大きなテーマの性欲という厄介なものの支配に繋がっていった。偶然に支配された読書体験だった。

白は膨張色。さっと流れていきそうなシンプルな言葉が並ぶけど、心を離さない感覚。その求心力は白のように広がり、気づいたら目の前が真っ白で手持ちの感情が一旦全滅。瞬時にわかるフォーマットの通り、余白の多さは歌集のようで、無尽蔵に広がる空白に言葉が靄になって視界が白む。言葉を掴むために読めば読むほど、痛い表現で傷だらけ。橋本絵莉子の言葉を借りると、薄い紙で指を切って赤い赤い血が滲む感覚。でもその血の赤さえ、小説全体の持つ白さでゆっくり上書きされ、気づいたら雪が積もる。見えない傷跡が何個も残った。