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2024年4月の読書メーターまとめ

chanvesa
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感想・レビュー
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ナイス
246ナイス

2024年4月に読んだ本
4

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

chanvesa
「文明はあらゆる限りの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付け様とする。(175頁)」西洋文明が怒涛のごとく押し寄せるもすんなり受け入れてしまった明治の日本で、漱石の文明批判は本質をえぐり出している。(冒頭の書き出しに帰って来る。)しかも後年『彼岸過迄』でパロディにするまでずっと茶化し続けた「屁の勘定(138、147頁)」探偵行為という相互監視に支えられた足の引っ張り合いに対し、その世界から抜け出し、自然天然の境地にいるため、作為とどう向き合うかと格闘していた。
chanvesa
2024/04/21 09:59

那美をもし役者にしたらという妄想で「しかも芝居をしているとは気がつかん。自然天然に芝居をしている。」(154頁)やラストのあふれ出る「憐れ」の称賛に託していたのだろう。ストーリーを追うことをやめ、「開いた所をいい加減に読んでる」(112頁)ことを漢詩を楽しむような境地に漱石は救いすら見出そうとしていたのかもしれない。「兎角に人の世は住みにくい」ように仕向ける「汽船、汽車、権利、義務、道徳、礼儀に疲れ果てた後、凡てを忘却してぐっすりと寐込む」(13頁)ことを求めたくなる心情は心に沿ってくる。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
4

chanvesa
「自殺の仕損いから起った自滅の第一着」(86頁)としてポン引きに銅山に連れられるが、強い意志によるのかあいまいだ。「…人間程的にならないものはない。約束とか契とか云うものは自分の魂を自覚した人にはとても出来ない話だ。」(29頁)というように、デーモンか何かに突き動かされた行動であり、それを自覚し受け入れている。主人公の青さを感じる。飯場掛の原さんに「あなた」と言われ涙が出そうになる場面(119頁)は、二人称の些細な違いで感情が揺れ動く、この男の神経の細さを感じさせる。お坊っちゃまというより若旦那なのだ。
chanvesa
2024/04/28 08:49

「自分がこんな泥だらけの服を着て、真暗な坑のなかに屈んでる所を、艶子さんと澄江さんに見せたらばと云う問題」(193頁)を考えてしまう根性。銅山での実際の仕事はなく、坑に入っていく下見を一日だけして、気管支炎から帳場の仕事を5ヶ月やって、東京に帰ったこの男は、銅山の荒くれ者に接し、社会への免疫が付いたであろう。そしてこの男は東京に戻ってから、この『坑夫』を書いた(という体になっている)。

chanvesa
2024/04/28 08:53

話の流れで精神の成長過程がないが、敬意を持てる安さんが殺人を犯したことを想起する場面で「だから社会が悪いんだと断定してはみたが、一向社会が憎らしくならなかった。唯安さんが可哀想であった。出来るなら自分と代わってやりたかった。」(242頁)はこれまで人の風体や職業で順位を付けていたこの男が、人格で考えている。幼稚な考え方のようだが、『二百十日』より好感が持てる。

が「ナイス!」と言っています。
chanvesa
漱石40歳前後に書かれた2作品。現代の40歳に対するイメージより、若く青い作風に感じる。友情、金と生活、金持ち攻撃といった要素がそう思わせる。金持ちは金に執着する人間として戯画化され、それに対比されるように友情が、エゴイズムへの武器として友情が出てくる。「野分」は「文七元結」のようであり、この作品の会話の場面は落語のようなやり取りが出てくる。江戸落語にある江戸っ子気質が漱石の内面と重なり、書かれているように思われる。ただし、この後の作品ではエゴイズムとの闘いは、簡単に解が出ない苦闘になっていく。
chanvesa
2024/04/27 09:41

「二百十日」の「文明の革命」(59頁)で金持ちと対抗するという圭さんの議論で「社会の悪徳を公然商買にしている奴等」は『それから』『こころ』での天下国家にすり替えるという暴露につながる。『こころ』とのつながりは「野分」が強い。道也先生の「君は自分だけが一人坊っちだと思うかも知れないが、僕も一人坊っちですよ。一人坊っちは崇高なものです」(222頁)という思想は源流であろう。後の作品では、さらに陰影が増していく。

が「ナイス!」と言っています。
chanvesa
「文明はあらゆる限りの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付け様とする。(175頁)」西洋文明が怒涛のごとく押し寄せるもすんなり受け入れてしまった明治の日本で、漱石の文明批判は本質をえぐり出している。(冒頭の書き出しに帰って来る。)しかも後年『彼岸過迄』でパロディにするまでずっと茶化し続けた「屁の勘定(138、147頁)」探偵行為という相互監視に支えられた足の引っ張り合いに対し、その世界から抜け出し、自然天然の境地にいるため、作為とどう向き合うかと格闘していた。
chanvesa
2024/04/21 09:59

那美をもし役者にしたらという妄想で「しかも芝居をしているとは気がつかん。自然天然に芝居をしている。」(154頁)やラストのあふれ出る「憐れ」の称賛に託していたのだろう。ストーリーを追うことをやめ、「開いた所をいい加減に読んでる」(112頁)ことを漢詩を楽しむような境地に漱石は救いすら見出そうとしていたのかもしれない。「兎角に人の世は住みにくい」ように仕向ける「汽船、汽車、権利、義務、道徳、礼儀に疲れ果てた後、凡てを忘却してぐっすりと寐込む」(13頁)ことを求めたくなる心情は心に沿ってくる。

が「ナイス!」と言っています。
chanvesa
昔読んだ時と同じく今回も苦手な作品群だ。理屈を超えた内容は『猫』の挿話にもあったが、「幻影の盾」「薤露行」「一夜」は頭に入っていかない。「琴のそら音」は後の「野分」に雰囲気が、そして内田百閒に継承されたと思う。「趣味の遺伝」は当時の英雄主義が一般的であっただろう時代に、浩さんという市民の死を題材の一つにしたことは印象的だ。冒頭の「陽気の所為で神も気違になる。(192頁)」から始まる数行は戦争の一面を冷静に書いている。ただし戦争は主題ではない。『こころ』で戦争がきっかけであったことに類似しているように思う。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2011/08/24(4658日経過)
記録初日
2011/08/01(4681日経過)
読んだ本
635冊(1日平均0.14冊)
読んだページ
230766ページ(1日平均49ページ)
感想・レビュー
635件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
性別
血液型
A型
職業
営業・企画系
現住所
大阪府
自己紹介

町田康、武田百合子、ゼーバルトが好きな作家、ナボコフ、ウルフ、フォークナーが気になる作家です。

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