読書メーター KADOKAWA Group

綾野つづみさんの感想・レビュー

データの取得中にエラーが発生しました
感想・レビューがありません
綾野つづみ
新着
一人の女性が一生の間に経験する生理の回数は、現在約450回なのに対し、明治時代までは50回ほどだったんだとか。 なんと9倍の違い! 年に一度あるかないかのレアイベントなら、女性たち自身も恐ろしかっただろうし、社会全体が生理を穢れ扱いしたのも納得だ。 それが近代化の中で、毎月やってくるものへと変わっていったのだから、旧来の穢れイメージも相まって大変だったはず。 実際、『女工哀史』の引用や語り部たちのエピソードから、当時の苦しさが伝わってくる。
綾野つづみ

生理帯は外に干すようなものじゃないから、押し入れで乾かしたという話は実に切ない。 そういう背景を踏まえると、アンネナプキンの登場がいかに革命的であったかがよくわかる。 「40年間お待たせしました!」 この有名なキャッチフレーズは、使い捨てナプキンの国内販売がアメリカに40年遅れたことを意味するだけでなく、相当に頼もしいメッセージ性を含んでいたに違いない。

01/05 12:47
綾野つづみ

そして、そのアンネナプキンがどういう経緯で消滅してしまうのか。また、ユニチャームなど、他の会社がどのように台頭していくのか。 布ナプキンや月経カップ、吸引法など様々な生理用品が紹介されていて、性別を問わず必見の内容が満載だった。

01/05 12:47
0255文字
綾野つづみ
新着
樋口恭介の炎上騒動で、大野典宏がレムの『現場検証』で皮肉を言っていたと書いてあるのを見て、この状況で皮肉が成り立つ小説ってどんな内容なんだろうと気になり読んでみた。 これがめちゃくちゃ面白い。 なぜ絶版? もったいない。 本当に前情報なしで読み始めたので、「泰平ヨン」が名前ということに最初驚く! どうやら泰平ヨンは宇宙を冒険した過去があり、そのときの記録を出版、有名人になっているらしい。 で、優雅なスイス旅行に出かけたら、詐欺にあって大変なことに、とドン・キホーテの後編みたいなメタ的展開に。
綾野つづみ

ただ、ここまでは単なるフリでしかなく、本当に凄いのは現場検証パートだった。 現場検証に向かったエンチア星では、原始的な生き方をする勢力と、過度に知性(知精)が発展し過ぎた勢力が、それぞれ異なる社会を築いている。 これが冷戦構造を喩えているのは明らかなのだけれど、当時の状態を揶揄するのではなく、それぞれの成れの果てを描いているので、もはや笑えない冗談。

12/29 22:36
綾野つづみ

読みながら『第十四回の旅』という過去作に絡めた仕掛けっぽい箇所がたくさんあり、読む順番を間違えたと自覚はしつつも、面白いので最後まで読み切ってしまった。 いちいち哲学的なので、途中、ストーリーが消えてなくなろうと、そんなことはどうでもよくなるぐらい文字を追うのが楽しい小説だった!

12/29 22:36
3件のコメントを全て見る
0255文字
綾野つづみ
新着
技能実習生は、後に、新たな慰安婦問題になる。 金を稼ぐために日本へ来て、満足している人もいれば、酷い扱いを受けた人もいる。 つい、極端なケースにばかり目が向いてしまうけれど、実際は様々なケースが量子的に重なり合っているのだと、この本は教えてくれる。 全体的ポップな書き方だから読みやすく、技能実習制度の明暗、両方がバランスよく示されていて面白い。 そして、問題があるのは制度以上に、日本の管理団体と受け入れ先の日本人のモラルのなさだってことがよくわかる。
綾野つづみ

もはや、誰もが、実習生は安価な労働力であることを知っている。 そして、日本人はその労働力によって安価に作られた食品や製品を消費している。 この時点で、我々は皆、共犯なのだ。 技能実習生たちを可哀想な人たちとして、自分とは遠い場所で起きている出来事にしてしまうのは、ある意味、無責任な態度かもしれない。 NHKのドキュメンタリーで描かれているのも、真実であるのだろう。 ただ、違う角度からも真実を眺める必要がある。

12/28 14:27
綾野つづみ

例えば、ベトナムという国は政府も一丸となり労働力を輸出する体制をとっているという事実も真実の一面かもしれない。 あるいは、似たような制度をヨーロッパも導入し始めて、いまや、安価な労働力を巡り試乗バトルが繰り広げられているという事実も同様。 悲劇にするのは簡単だ。 もしくは喜劇にすることも。 そうやってフィクション化してしまえば、自分は無関係な存在でいられるから。観客でいられるから。 でも、技能実習制度を巡るすべては現実の出来事であり、我々も当事者なのだ。 この本は常にその姿勢が貫かれていた。

12/28 14:28
3件のコメントを全て見る
0255文字
綾野つづみ
新着
「うちはうち、よそはよそ」なんて子どもの頃はよく親に言われたけれど、実際、正しい考えだったのかも。 直感的には皆知っている「他人と比較することの無意味さ」をこの本は科学的に検証している。 そもそも、いつから人類は自分と他人を比較するようになったかと言うと、農耕社会が始まってからなんだとか。 要するに農業というのは、自然や知識に左右されるもので、収穫量にばらつきが生じ、それが格差となって表れてきたのだという。
綾野つづみ

つまり、格差社会における人々は、「他人より上になる」ためではなく「他人より下にならない」ための振る舞いをする。 その最も効率的かつ簡単な行動こそ、弱者に対する差別なのだ。 ここまでくると、なぜ格差は心を破壊するのか、だいたいのことは見えてくる。

12/27 14:50
綾野つづみ

この本が特徴的なのは、そのような現状把握をした上で、個人ができる解決策を提示しているところで、そこにはアドラー心理学の考えが用いられている。 畢竟、「争いは同じレベルの者同士でしか発生しない」ってやつで、格差は近い立場同士で発生する。 故に、解決策はコミュニティの拡大にあるのだ。 結論部分では、SDGsを思わせる具体的な施策案がたくさん出てくる。 うまくいくか疑わしい部分もたくさんあるけど、格差を緩和するために必要なのは、共同体のつながり強化なのは間違いないだろう。

12/27 14:50
6件のコメントを全て見る
0255文字
綾野つづみ
新着
常識をひっくり返すような本で面白かった。感情は反射ではなく、思考による反応なんだとか。 名前の知らない感情を人は感じることができない。つまりは「始めに言葉ありき」。 実際、その言語にしか存在しない感情はいろいろある。 例えば、柴田元幸と小島敬太の『中国・アメリカ 謎SF』の一編、『深海巨大症』の中に「ラペル・デュ・ヴィド」という印象的な言葉が出てきた。 なんでもフランス語で、高いところから飛び降りたくなる衝動を意味しているらしい。
綾野つづみ

プログラミングを書くように、決まり切った表現で決まり切った感情を伝達すれば、予想通りの意味を相手に認識してもらうことはできるのだから。 でも、それだと、予想通りを超えてこない。 「わかるやろ、だいたい」の「だいたい」をどう表現するかにその人間の面白さが滲み出るし、予想を超えた何かが起こる可能性がある。 そして、それが裏切りになり、笑いだったり悲しみだったり、新たな感情を作り出すのだ。

12/23 15:11
綾野つづみ

フロベールは紋切り型を嫌った。 紋切り型には裏切りがないからだろう。 松本人志は「笑いは裏切りやからね」とよく言うけれど、きっと、裏切りは笑いに限らず、新しい感情にすべからく必要な要素である。 そのことは直感として、みんなわかっているとは思うが、リサ・フェルドマン・バレットの示す構成主義的情動理論は、それを論理的に説明してくれる。

12/23 15:11
4件のコメントを全て見る
0255文字

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/12/23(1128日経過)
記録初日
2021/12/27(1124日経過)
読んだ本
5冊(1日平均0.00冊)
読んだページ
2126ページ(1日平均1ページ)
感想・レビュー
5件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
外部サイト
URL/ブログ
https://note.com/nabewata_lit
自己紹介

読んだ本の感想を呟いています。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう