生理帯は外に干すようなものじゃないから、押し入れで乾かしたという話は実に切ない。 そういう背景を踏まえると、アンネナプキンの登場がいかに革命的であったかがよくわかる。 「40年間お待たせしました!」 この有名なキャッチフレーズは、使い捨てナプキンの国内販売がアメリカに40年遅れたことを意味するだけでなく、相当に頼もしいメッセージ性を含んでいたに違いない。
そして、そのアンネナプキンがどういう経緯で消滅してしまうのか。また、ユニチャームなど、他の会社がどのように台頭していくのか。 布ナプキンや月経カップ、吸引法など様々な生理用品が紹介されていて、性別を問わず必見の内容が満載だった。
ただ、ここまでは単なるフリでしかなく、本当に凄いのは現場検証パートだった。 現場検証に向かったエンチア星では、原始的な生き方をする勢力と、過度に知性(知精)が発展し過ぎた勢力が、それぞれ異なる社会を築いている。 これが冷戦構造を喩えているのは明らかなのだけれど、当時の状態を揶揄するのではなく、それぞれの成れの果てを描いているので、もはや笑えない冗談。
読みながら『第十四回の旅』という過去作に絡めた仕掛けっぽい箇所がたくさんあり、読む順番を間違えたと自覚はしつつも、面白いので最後まで読み切ってしまった。 いちいち哲学的なので、途中、ストーリーが消えてなくなろうと、そんなことはどうでもよくなるぐらい文字を追うのが楽しい小説だった!
もはや、誰もが、実習生は安価な労働力であることを知っている。 そして、日本人はその労働力によって安価に作られた食品や製品を消費している。 この時点で、我々は皆、共犯なのだ。 技能実習生たちを可哀想な人たちとして、自分とは遠い場所で起きている出来事にしてしまうのは、ある意味、無責任な態度かもしれない。 NHKのドキュメンタリーで描かれているのも、真実であるのだろう。 ただ、違う角度からも真実を眺める必要がある。
例えば、ベトナムという国は政府も一丸となり労働力を輸出する体制をとっているという事実も真実の一面かもしれない。 あるいは、似たような制度をヨーロッパも導入し始めて、いまや、安価な労働力を巡り試乗バトルが繰り広げられているという事実も同様。 悲劇にするのは簡単だ。 もしくは喜劇にすることも。 そうやってフィクション化してしまえば、自分は無関係な存在でいられるから。観客でいられるから。 でも、技能実習制度を巡るすべては現実の出来事であり、我々も当事者なのだ。 この本は常にその姿勢が貫かれていた。
つまり、格差社会における人々は、「他人より上になる」ためではなく「他人より下にならない」ための振る舞いをする。 その最も効率的かつ簡単な行動こそ、弱者に対する差別なのだ。 ここまでくると、なぜ格差は心を破壊するのか、だいたいのことは見えてくる。
この本が特徴的なのは、そのような現状把握をした上で、個人ができる解決策を提示しているところで、そこにはアドラー心理学の考えが用いられている。 畢竟、「争いは同じレベルの者同士でしか発生しない」ってやつで、格差は近い立場同士で発生する。 故に、解決策はコミュニティの拡大にあるのだ。 結論部分では、SDGsを思わせる具体的な施策案がたくさん出てくる。 うまくいくか疑わしい部分もたくさんあるけど、格差を緩和するために必要なのは、共同体のつながり強化なのは間違いないだろう。
プログラミングを書くように、決まり切った表現で決まり切った感情を伝達すれば、予想通りの意味を相手に認識してもらうことはできるのだから。 でも、それだと、予想通りを超えてこない。 「わかるやろ、だいたい」の「だいたい」をどう表現するかにその人間の面白さが滲み出るし、予想を超えた何かが起こる可能性がある。 そして、それが裏切りになり、笑いだったり悲しみだったり、新たな感情を作り出すのだ。
フロベールは紋切り型を嫌った。 紋切り型には裏切りがないからだろう。 松本人志は「笑いは裏切りやからね」とよく言うけれど、きっと、裏切りは笑いに限らず、新しい感情にすべからく必要な要素である。 そのことは直感として、みんなわかっているとは思うが、リサ・フェルドマン・バレットの示す構成主義的情動理論は、それを論理的に説明してくれる。
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生理帯は外に干すようなものじゃないから、押し入れで乾かしたという話は実に切ない。 そういう背景を踏まえると、アンネナプキンの登場がいかに革命的であったかがよくわかる。 「40年間お待たせしました!」 この有名なキャッチフレーズは、使い捨てナプキンの国内販売がアメリカに40年遅れたことを意味するだけでなく、相当に頼もしいメッセージ性を含んでいたに違いない。
そして、そのアンネナプキンがどういう経緯で消滅してしまうのか。また、ユニチャームなど、他の会社がどのように台頭していくのか。 布ナプキンや月経カップ、吸引法など様々な生理用品が紹介されていて、性別を問わず必見の内容が満載だった。