結婚を控えた周作、父が倒れ昏睡状態に。自分に繋がる血縁がいなくなる事、結婚相手の子を愛せるかという不安を抱える中、父から渡された通帳をきっかけに過去を探り始める。徐々に記憶が蘇り、明らかになる真実。周作と皆瀬の過去や葛藤、迎えたラストに涙が止まらなかった。相手と向き合おうとするからこそ感じる怖さがあり、そんな自分と向き合うからこそ築ける絆、何気ない日々の中で互いを思いやり築かれた絆があった。時間でも血縁でもない、大切なものがあるのだと思う。塩ラーメン食べたくなるわけだ！食べながらまた泣きそうだけど。

楽しみにしていた続編の文庫。帰ってきた山本猛店長、変わらずみんなをイラつかせ、どこまでも空気を読まずに突き進む姿に、変な憧れ？心が芽生えそうになる。第５話なんてすっかり騙された笑。そして、後輩が増え頼られる事が多くなった谷原京子。仕事やこの先の人生、悩んでいるのかすらもわからなくなる感じに、うんうん頷いてしまう。不満や葛藤があっても、本が好きな人と好きな本の話をする、それがパワーの源であることに共感。前作ほどではないが、今作も笑ってドキドキして面白かった！いつか谷原店長として奮闘する物語読みたいな。

子ども飯を提供する食堂の息子の心也、幼馴染の夕花、子ども食堂を運営する喫茶店のゆり子。３人の視点で描かれる。母を亡くした心也、いじめ虐待に苦しみ「ふつうの安心できる場所」を求む夕花、まだ子供で力がない事を悔しく思う姿は胸を締め付けられる。ゆり子との繋がりが徐々に明かされ、ラストは涙が溢れた。心也の親父がかっこいい。龍浦や昭和堂も出てきて嬉しくなる。石村くん、他作品で登場したら嬉しいな。相手を思う気持ちは一瞬でも心に刻まれ、その積み重ねが生きる力になる。思いやりの連鎖が起こした奇跡に希望と勇気をもらえる本。

ルミ子と摩周湖の先輩医師香織と看護師マリ江があの不思議な聴診器を授かり、女子刑務所へ派遣される。受刑者達の話は誰もがいつ陥ってもおかしくない事、現実の厳しさと苦しさを知った。そんな彼女達の心の声を聴き、議論する香織とマリ江のやり取りや、後輩をも巻き込み奮闘する姿が面白くも温かい気持ちになり、改めて思い合える人がいる事の大きさ、大切さが伝わる。解説も読んで、大事な事が聴こえる、話せる場がある事が第一歩だなと思った。シリーズ全て心に響く。繋がりもわかるとより楽しめるので、シリーズ通して読んでほしい。

シリーズ第三弾。前作で互恵関係を解消した小鳩くんと小山内さんに彼女・彼氏ができて少し驚くも、甘い雰囲気は感じず。小鳩くんはやっぱり推理せずにはいられないし、小山内さんは終始不気味な雰囲気を纏っていていて、心臓に悪い。そして、今作の健吾はより逞しく感じる。そんな健吾が部長の新聞部、そして小山内さんの彼氏の瓜野くんが追う放火事件が今作の中心。瓜野の野望からの暴走が怖いし、出てくる人みんな怪しく見える。上巻の終わりがまた絶妙で、続きが気になって仕方ない。ドキドキ、いざ下巻へ。