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2024年2月の読書メーターまとめ

特盛
読んだ本
20
読んだページ
6420ページ
感想・レビュー
20
ナイス
779ナイス

2024年2月に読んだ本
20

2024年2月のお気に入り登録
8

  • tyfk
  • マーク
  • 加納恭史
  • ちゅんさん
  • 愛の伝道師カロン@イケメンは無敵ですよっ
  • カワウソ
  • ふみあき
  • ネジ

2024年2月のお気に入られ登録
5

  • tyfk
  • ふみあき
  • ちゅんさん
  • ネジ
  • きゃれら

2024年2月にナイスが最も多かった感想・レビュー

特盛
評価5/5。読みながら、実家にある写真を思い出した。3歳くらいの、よちよち歩きの自分を映した写真だ。そこからここは、もう40年以上の距離がある。故郷に残し会う頻度が減った家族の事や、今はもう辞めたが過去酒に浸ってにっちもさっちも行かなかった日々や、毎日チェックするS&P500やら、心が乱れるSNSのことを考えた。なんでこんなことになってしまったんだろう?俺は今どこにいるんだ?と思う。枕元に星の王子様を置いていたら、今朝妻が嬉しそうに言った。「星の王子様なんて読むんだ?私この本大好き」。とても嬉しかった。
特盛
2024/02/14 10:43

少し前に読んだ、夜間飛行を反芻した。星の王子さま、は夜間飛行の世界がさらに美しくナイーブに結晶化したような印象を持った。夜間の飛行機のパイロットが見る、大地にぽつねんと光る農家の明りを心に描き直してみる。それは80㎞彼方からも見えるのだ。農夫は、自分が見られている、なんてことは想像だにしない。ましてや誰かに美しいと思われていることなんて。我々一人一人が星に生きている。寂しくも美しい。本作最後のページのイラストは印刷して壁に張りたい気分になった。

特盛
2024/02/14 10:49

ところで、本作で描かれる大人には戦争をする大人は何故登場しなかったのか?と考える。著者は本作で戦争を描かず、結局ナチスと戦い、空の上で命を落とした。彼はコックピットで死ぬ直前に何を考えたのだろう。 そういや、箱根に星の王子様ミュージアムなんてあったな。今まで素通りしてたけど、次箱根に行くことあったら寄ってみたいな、と思ったら!コロナの影響で2023年3月31日に閉館していただと!人生には様々なタイミングというものがあるな。

が「ナイス!」と言っています。

2024年2月にナイスが最も多かったつぶやき

特盛

喫茶店とホットケーキと読書の相性の良さよ。色々食べ比べたが、珈琲館のホットケーキの焼き目が一番好きだ。銅板で焼かれ美しく、芸術ですらあるな。バターをたっぷり伸ばし切る。二層なので1階部分にも忘れず配慮して塗る。メープルシロップをかけ、切り分けてホイップにちょっとつけて、熱々で半分まで食べる。再び本に手を伸ばす。2ページ読んではまた少し食べる。ゆっくり冷めていきながら、少し硬くなり食感が変わるのも楽しみながらちびちびと。良い。

喫茶店とホットケーキと読書の相性の良さよ。色々食べ比べたが、珈琲館のホットケーキの焼き目が一番好きだ。銅板で焼かれ美しく、芸術ですらあるな。バターをたっぷり伸ばし切る。二層なので1階部分にも忘れず配慮して塗る。メープルシロップをかけ、切り分けてホイップにちょっとつけて、熱々で半分まで食べる。再び本に手を伸ばす。2ページ読んではまた少し食べる。ゆっくり冷めていきながら、少し硬くなり食感が変わるのも楽しみながらちびちびと。良い。
が「ナイス!」と言っています。

2024年2月の感想・レビュー一覧
20

特盛
評価4/5。勉強とはある環境=ノリ=言語から、別のノリへの引越すプロセスである。既存の枠組みをわざとノリ悪く疑い、見方を変え、テーマを定めて深堀と自らの体の感覚に寄り中断=仮固定を通じてどんどん自分の生きる世界を多様化していくことの重要性、意義を著者は説く。言語に意識を向けるそれは環境を縛り、作り出す重要なもので注意深くあらねばならないと語る。共感できる点が多かった。中年として人生の転換期に、知らず同じプロセスをなぞっていた(=足掻いていた)ので、勇気を貰えた気もした。
特盛
2024/02/28 18:52

人生これから、と言う人よりも、ある環境に染まり切って違和感を持ったタイミングには特によい気がする。少し前まで自分が属して違和感が抑えきれなくなったのは金融資本主義のパワーゲームの世界だった。職を辞し3年の今、元同僚から見た今の私は、ゲームに力尽き、中途半端な、何も志がない不気味な存在に思えるかもしれないな。ただ、自分では横断的に様々なノリをつまみ食いし、楽しいのだ。多分これも仮固定だろうとアイロニカルな目を持ちつつ、目の前をできる限り楽み、日々を日記に記し生きている。これは孤独だ。そんな私にはハマった。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。言葉って何故どう理解可能されるのか。ごく基本から始まり、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタインの議論に触れるにつれ、当たり前の事がどんどん不思議になる。タコが「8本もどうやって足を動かすの?」と聞かれ、そういえばどうやってるんだっけ?と考え込むと足を動かせなくなった、というお伽話を聞いたことある。あれに近い感覚になる。フレーゲの文脈原理や合成原理、ラッセルの確定記述や記述理論、ヴィトゲンシュタインの論理形式と論理空間、真理関数。骨が折れるが丁寧に辿ると世界は全く違って見える。
特盛
2024/02/27 01:05

自分がこの文章を書けることや本を読めることが不思議に思えてくる。フレーゲもラッセルもヴィトゲンシュタインも用意したのはそれぞれ説であるが、天才たち自身、皆迷い、行きつ戻りつ語る。我々が考える言葉との解像度が違う。文の意味として、真偽としての指示対象と意義の両面を唱えるフレーゲ。意義を認めず文の指示対象は命題とするラッセル。言語は思考に先立ち、論理空間における真理関数の真偽が世界の在り方を語るとするヴィトゲンシュタイン。云々。まったく、凄い世界に誘われたものだ。時間を置き、また読み返さねばなるまい。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3.5/5。池澤夏樹は科学/人文の良い所をバランス良く持ち、人や自然への慈しみと温かいまなざしで見る作家だなぁと思う。本作は短編集で、様々な場所で様々な人たちとのすれ違いの様な出会いと別れを切り取る物語が綴られる。理系色は薄め。どれも素敵だが、「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」はウルっときた。「レシタションのはじまり」はちょっとテッド・チャンぽいSF作品なので新鮮。人との出会いには常に終わりがある。意味は後になってからしか分からないことも。ああ、旅に出て人と話したい。そんな気持ちになった。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4.2/5。完成された青春小説だ。明治末期だから百年以上前の小説なのに今でも、今だからこそ面白い。漱石らしい温かいユーモアに人物が立っている。時代の空気が感じられる。時代を経ても変わらない若者の心と変わる世の中。四六時中忙しい東京、明治15年以降の新しい若者との世間のレッテル(調べるとそれ以前は漢文の素読が教育に入っていた世代。今でいうとデジタルネイティブのZ世代だ)。個が強くなり、共同体は弱くなり、他者へ無関心になる。人は健気に悩む。今は変化が早いというが、今に限らずずっとそうなのだ。
特盛
2024/02/26 11:16

翌日、反芻して面白いなと思ったこと。広田先生、ひいては知識人について。彼の印象的な言葉がある。三四郎が上京する列車で、日本は進歩してこれから良くなるだろうという見立てに、一言「滅びるね」と返すのだ。富士山くらいしか誇れるものは無いという。知識人は往々にして悲観的である。俗世から離れ高の見物をするが、どこにも行けない。中島敦の言う、臆病な自尊心と尊大な羞恥心だ。その位置を相対的に維持する為には、世界が沈んでもらわないと困るからかもしれない。世界がダメになる、という思想と知識人はいつの世も相性がいいのだな。

特盛
2024/02/26 11:21

では、知識人はおろかなのか?そうではない。三四郎は中盤、自分を取り巻く世界として3種あげる。変わらない故郷と、静謐な象牙の塔である学問の世界と、猥雑で変化する東京だ。この3つ、どこを選んでも人は選ばなかった残りの2つを比べて認知的不協和に悩まされる。宿命だ。その意味では与次郎は実に達者だ。彼は愛すべき滑稽なキャラだと描かれるが、領域を横断するその器用さは実は人生の達人の秘訣ではないか。代償として、それぞれの世界から、中途半端だとそしりを受けるが、選ばなかった道の後悔はない。中途半端と後悔の天秤が人生だな

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価5/5。千葉雅也始め、知識人より方々で言及され気になる。本好きには魔書だ。読書や教養の脱構築で、読書の道徳観、意味を破壊し揺さぶる。本は作者にも、読者にも不確定で揺れ動く。解釈は誤解され、忘れるし、記憶は改変されて、結局曖昧なものとして主観的断片にしか残らない。なら読書に何の意味があるのだ?単なる時間の消費、或いは気晴らしか。いや違う、自由・他者からの自分の解放の口実なのだ。ふざけた題名だが、自由の不安に向かい合う際への勇気がこの本の価値で、本だけの話ではない。リベラルアーツの力そのものだわ。
特盛
2024/02/23 19:20

この辺の主題を濃く思い起こせる小説が、昨年読んだ、「人類の深奥に秘められた記憶」だ。こちらもフランス人だなぁ。好きだなぁ。もう一回こちらも読んでみたい。しかし人生、本当に時間が足りないな。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。恐るべき厳しい事業構造(メディアシフトトレンド・粗利率22%・インターネット通販/大手への集約)から本屋を開業する個人はほとんどいない時代だ。元リブロ池袋の1000坪もマネージした名物書店員による著者の、本屋開業記。大型書店の内情、起業の動機、実際の苦労、喜びが綴られ、本好きにとっては物語としても非常に面白かった。損益計算書や開業時の事業計画まで語られる。憧れても自分には本屋は無理だなぁ(本を読む時間が全くなくなる)。でも本屋は凄い仕事だ。世の中の全ての書店員さんに改めて敬服したい!
特盛
2024/02/23 17:31

自分の好きな本だけ集めて客が全く来なくても良い、本屋。そんなものなら本を読む時間がとれるかもしれない。それは人に売っても良い、書斎という形態か。恐るべき傲慢な。昔小学生から毎日通っていた古本屋がそうだった。世捨て人の様なおっちゃんがひたすら本を読んでいて、合間に接客していた。憧れだった。時代の波に溺れ、もうとっくに無くなってしまったが、懐かしい。 働かなくても良くなるほど稼ぎ切った後の夢だな。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。ノーベル賞受賞者が語る「生命とは何か」。かつてシュレーディンガーが生命について書いた本と同タイトル。細胞、遺伝子、自然淘汰、化学反応、情報の観点から生命の科学史、面白さが綴られる。個別の細胞と人間、社会の関係の類似性よ。細胞はそれ自体遺伝子とは別の短期記憶を持っているのは驚き。生命誕生は1回キリでセントラルドグマにより全ての生物は繋がる。また環境的にも相互依存的であり、不可分だというメッセージは他でも語られるが改めて忘れがちだ。そしてそのことを理解するたった一つの生物だということも。
特盛
2024/02/23 16:37

細胞、人間個人、人類社会、生命生態系、環境。これらのフラクタル的なつながりを想像をすると茫洋とした気持ちになる。なんだか手塚治虫の火の鳥にそんなシーンがあったな。細胞は60億で一つの人間を作っている。細胞一つ一つは細胞膜に閉じられ孤独だ。だが繋がっている。ある意味、我々は孤独ではないという意味にも読み取れる。ただ、コミュニケーションが難しく、想像が働きにくいだけだ。

特盛
2024/02/23 16:41

生命科学は脳や情報の観点から、将来的に人間の意識や心を解き明かすだろう、と著者は確信するという。それは21世紀まるまるかかるかもしれないがと。 ふと、それが解明しきれていない間に生きることが出来て良かったと思う。それが解明しつくされると、人間は本当に追い詰められてしまう気もするので。今の我々、まだ知らないことがあり想像・物語の中に遊び、苦しめる白地がある、「歴史のここ」は生物史での絶妙で贅沢な享楽圏かもしれないな。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3.8/5。歎異抄、名前をよく聞く。NHKの100分で名著でも取り上げられてた。無人島に一冊持って行くならこの本というのも聞いたことがある。どういうこと?と手に取った。本書は歎異抄の超訳だ。当時の人が読んだ感覚を大事にくだけて書いているのが面白い。「阿弥陀は人を一人残らず救うと決心した。我々はそれにすがり全部お任せし、その名を唱えることしかできない。救われるか分からないし、自分も迷うけど、それしかない。」悪人正機や他力本願など、革命的だったのだろう。強烈な迫害を受けた法然と親鸞。ある意味パンクスだ。
特盛
2024/02/21 16:27

付属年表を眺めてていて、ちょうど親鸞の活動期が、鴨長明の方丈記で描かれていた京の都の地獄絵図と同じというのが分かった。ああ、あの戦乱と飢饉の時代に同時にいたのかと感慨深い。調べると、1200年時点では、鴨長明が45歳、法然が67歳、親鸞が27歳。歎異抄のメッセージを読み返して、なるほど、これは世界と人生の絶対的肯定装置かもしれないと思った。思考の余地を挟ませない。 著者の高橋源一郎は無神論者であるという。だがこの本を書いた。光、肯定の象徴的なものか。死ぬ前に、自分も多分読み返すかもしれない

特盛
2024/02/21 16:38

考える=理性=幸福になる為の行為→結局執着に繋がって不幸を呼ぶ。この図式を全部ぶっ壊すというのは、確かに仏教的に思えた。瞑想か、音を伴なった記号で心を満たすのかの違いは色々あるかもしれない。所詮個人の考える事全て浅はかだ(善悪ですらも)、どこにも行けない。なら黙って念仏を唱えろ。というのはそれはそれで合理的で極度に洗練されている様に思えた。瞑想のが大変だ。悩み悩んだ時に、確かに忘れずに心に留めておく価値があるかも。ここに無神論者であることは関係ないかもしれない。意図的に、機械的に、思考せず、ゆだねる。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。まさにディストピアな世界観。時代は核戦争後。人とアンドロイドの区別のつかない世界。生物は絶滅しかけており生きた動物は貴重で人は電気仕掛けでも動物を飼うことをステータスをみなす。感情は劣化し、機械の補助でなんとかそれを維持する。時に人は自分はアンドロイドじゃないか?とさえ疑う。アンドロイドは動物を躊躇なく殺し、人はアンドロイドを躊躇なく殺す。共感、は妖しい宗教のドグマにすらなっている。68年出版の古い小説で時代性の違和感が目に付くが、寓意は強烈だ。改めて映画ブレードランナーを見返したい。
特盛
2024/02/21 15:29

結局、個々がそのゼロに近い謎の点、みたいな存在に収れんしていった世界はディストピアそのものなんだろう。そしてそれってもうすぐそこにあるんじゃないか。近頃は監視社会的な文脈でのディストピアは良く語られるが、虚無的なディストピアはそれこそ宗教が破壊されてからずっと社会はそれに怯えていたかもしれない。そう考えると、唯一残った宗教として本作で描かれているマーサー教も面白い。不条理を描いたカミュのシシューポスの神話めいた振る舞いをする教祖。

特盛
2024/02/21 15:34

最終ページが良い。最後に妻が旦那リックの「こうして欲しいと思うこと」を想像して(共感して)、ヒキガエルの餌を注文する電話だ。抑うつに沈んでいた彼女が、最後は気分も良くなって自分の為にコーヒーを入れる。収れんする環は半径数メートルで、なんとか守られたのだ。ナイスハッピーエンド。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3/5。作者のデビュー作で、横溝ミステリーホラー大賞受賞作。出会ったら死ぬ、という謎の魚にまつわる怪談を追う物語。主人公が怪談師という設定はなかなか新鮮だった。 ただ、これは個人的な特性なんだけど、怪異の対象が妖怪っぽくなると、自分はあまり怖さを感じなくなることが分かった。(ちょっとコロナの頃に流行ったアマビエ、みたいなのを想像してしまった。だとするとコロナ前に読むとまた違ったのか?後、京極堂シリーズの影響もあるのかも)。第二作の「あさとほ」の方が、歴史を下敷きにした妙な不気味さがあり好みだったかな。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。能天気なロシアがナポレオンにボコられた第一巻。第二巻は講和後、ロシア上流社会のつかの間の平和を描く。本作は728頁。まだ半分か!平和の退屈の中にも、人々の心理には様々な動きが。退屈時に人は色々考えてしまうものだ。賭博で破滅に向かう心理や、時代変化と没落の兆候の悩み、なすべきことが分らない実存に迷う者もいれば、または迷いから覚めて一歩踏み出す者、など人生の喜怒哀楽が描かれ、所々共感・感心した。人は変わる。変わるがまた新しい悩みは尽きない。さて、次回3部はいよいよナポレオンのロシア侵攻だ。
特盛
2024/02/20 08:47

長い小説で味わう、冗長さという感情もまた味わい深い。短い小説における冗長のパートの意味とは違う。映像ならばカットされるであろう冗長シーンというのは、小説の懐の大きさ、遊びはリアリティでもある。実際の人生も冗長であふれているのだ。また小説故に、必然的に次に物語が大きく動いた場面との対比にもなる。それゆえ、後で読み返すとさらに味わい深い冗長もある。ニコライ、ナターシャのクリスマスの狩りのシーンなどは、実に良いシーンだった。何でもないようなことが~幸せだったと思う~虎舞竜のBGMが勝手に脳内再生された。

特盛
2024/02/20 08:54

上述した感情は、船戸与一の満州国演技(満州国の成り立ちから終わりを描く7500枚、全9巻の大作)以来の感情だわ。ああ、あれはもう一つの戦争と平和だったのだな、よくあんなものかけたな、と別の作品の再発見にも繋がった。長い小説、これはいいんじゃないか!プロットではなく、プロセスそのものに価値がある。もし同じ感情を味わえる小説があればもっと読んでみたい。プルーストの失われた~はいつかどこかでチャレンジするとして、他に何があるか?探すのも楽しみだ。(もしいいのがあれば誰か教えてください。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
[ガーディアン1000]評価5/5。魔書だわ。凄い本だが子供には勧められぬ。SF小説だがSF要素はページの全体の3%。残りは絶望と虚無で構成される。西欧社会で精神の拠り所となるキリスト教価値観が破壊され、理性・進歩を標榜する近代科学主義と体・感情・解放を掲げるロマン主義の間で人は引き裂かれた。延々分断と分裂が続く運命。強大な力を持ち、神になった様にも誤解するが、神と決定的に違うのは一人では生きてられぬ、そして必ず死ぬ、という点。人類は迷子だ。本書の一つの救いは、自分はまだ生きている、ということの再確認だ。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
19世紀の百科事典の美しい挿絵たち。写真や動画が当たり前のようになり、またインターネットの時代においては、紙の百科事典の絵、というのはもはや、今は人が住まない歴史遺産の遺構のようだ。沢山の人々、とりわけ子供が魅了され、食い入るように眺めたであろうな。そして子供たちは大きくなり仕事をし、文明を前に推し進めたのであろう。当時の最新、関心が時代性を持ち面白い。じゃがいもの病気やら、ぶどうの病気の絵やらを眺め、実に生活に根ざしているのも驚いた。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価5/5。読みながら、実家にある写真を思い出した。3歳くらいの、よちよち歩きの自分を映した写真だ。そこからここは、もう40年以上の距離がある。故郷に残し会う頻度が減った家族の事や、今はもう辞めたが過去酒に浸ってにっちもさっちも行かなかった日々や、毎日チェックするS&P500やら、心が乱れるSNSのことを考えた。なんでこんなことになってしまったんだろう?俺は今どこにいるんだ?と思う。枕元に星の王子様を置いていたら、今朝妻が嬉しそうに言った。「星の王子様なんて読むんだ?私この本大好き」。とても嬉しかった。
特盛
2024/02/14 10:43

少し前に読んだ、夜間飛行を反芻した。星の王子さま、は夜間飛行の世界がさらに美しくナイーブに結晶化したような印象を持った。夜間の飛行機のパイロットが見る、大地にぽつねんと光る農家の明りを心に描き直してみる。それは80㎞彼方からも見えるのだ。農夫は、自分が見られている、なんてことは想像だにしない。ましてや誰かに美しいと思われていることなんて。我々一人一人が星に生きている。寂しくも美しい。本作最後のページのイラストは印刷して壁に張りたい気分になった。

特盛
2024/02/14 10:49

ところで、本作で描かれる大人には戦争をする大人は何故登場しなかったのか?と考える。著者は本作で戦争を描かず、結局ナチスと戦い、空の上で命を落とした。彼はコックピットで死ぬ直前に何を考えたのだろう。 そういや、箱根に星の王子様ミュージアムなんてあったな。今まで素通りしてたけど、次箱根に行くことあったら寄ってみたいな、と思ったら!コロナの影響で2023年3月31日に閉館していただと!人生には様々なタイミングというものがあるな。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4/5。仮面の告白と同じ?、疎外されたもの、疎外された理由が存在理由と縛りになる、若さの吐露か。 想像の金閣=美(=永遠、本質)そのもの=俗性を生きる自分を阻むもの>実際の金閣>戦争で焼けるかもしれん金閣≒自分。 延々続いてきた物語の流れがあった後の、金閣を焼かねばならぬ。という一文は凄みもあり、滑稽さもあり、恐怖でもある。(全く関係ないが、JRのCM、そうだ、京都行こう。のポップさを思い出して対比してしまう。)
特盛
2024/02/10 13:56

美というものへの自分の鈍感性やその意味の捉えどころのなさはずっと課題だった。確かに美しい、ってものはあるが、昔の人や他人が言うみたいにそこまで美を渇望して、美の為に人生をささげる、という感覚が分らなかった。こういうのこそ、小説の中で想像して手がかりを得るしかないと思った。なるほど、と思う所はいくつかあったのは収穫だった。三島由紀夫の金閣寺はサマセットモームの月と六ペンスみたいな読後感があった。

NORI
2024/03/02 12:44

通りすがりですが、コメント失礼します。仮面の告白と同じ?という印象、同感です!戦争で悲しくも、美しく散るはずだったのに、なんで生き残ってしまったという焦燥感は、両者共通ですね。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3.5/5。正義の下にネットで個人を寄ってたかって攻撃し、社会から抹殺するムーブメント、キャンセルカルチャー。本書はその背景を考察する。世界は平和になり、リベラル化した。リベラルとは自分らしく生きたいという価値観だ。価値観同士で永遠に決着のつかない争いが起き、一部は相手を社会的に完膚なきまでに叩き潰す。いつしか、人々は目に見えない、いつ自分に向けられるか分からない大衆の狂気に怯えて暮らすという、ディストピア社会が出来上がっている。著者によると、君子、危うきに近寄らず的生き方が解であると。ふむ。
特盛
2024/02/09 00:33

世界は行き過ぎて、また戻ってくるもんだと思っている。地獄=グローバル空間ってのは、SNSにしかない。いつか、「SNSってあれ、何だったんだろうな?」って大部分が正気に戻る世も来るかもしれない。タバコの様に。電車の中ではスマホを見ずに本を開いたりおしゃべりする人達をまた目にする時が来るかもしれない。そん時には自分が生きてるか、知らないけど。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価5/5。設定に哲学的なテーマをはらむ作品が多いSF短編集。メタ認知をくすぐられ、読後ああ、人生や世界は捨てたもんじゃないなって思わせてくれる作品が多いのが良い。表題作「息吹」と「偽りのない事実、偽りのない気持ち」「ソフトウェアオブジェクトの(略」が特によかった。息吹は滅びた文明からの手紙を扱い、エントロピーの儚い結晶として文明を描く。東京に住んでいて、都市は醜く、ともすれば自然が恋しい、なんて気持ちになる。だがこの雑然とした世界も、宇宙にほんの一瞬だけ存在を許された、儚さと美しさがあるのだな
特盛
2024/02/08 10:04

「偽りのない事実、偽りのない気持ち」はデジタルが更に浸透した少し未来での混乱と、ヨーロッパのアフリカ植民地で文字が普及した過去の物語が交互に語られる。いつでも人は新しい変化に心をかき乱されるし、今我々が古典的にさえ思われるテクノロジーも思想も、世に出た時には社会に悲喜こもごもをもたらすのだ。最近の世の中の変化の速さに、ついていけないな、未来はどうなっちまうんだろう?って思ったりする。ただ、それでも人は新しい世界に何か意味を見つけ、折り合いをつけ、生きていかんといかんのだ。

特盛
2024/02/08 10:11

「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は本作品集の中ではもっとも長い中編だ。AIが進化し、家族の様になった世界で、人や企業の寿命とソフトウェアの人生の時間軸をどう整合させるか?そんなもの人や企業が死んだら終わり、という立場もあるが、割り切れない愛着をもつ人からしたら何が起きるか?自分が死んだ後もどうやって幸せに生きてもらうか。AIの話だが、自分の子供の人生についても強烈に意識せざるを得ない。作中描かれた赤ちゃんの頃のディジェント(AI)がとにかくかわいい。感情移入して成長を見守ってしまった。

が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3.2/5。横浜駅は大正4年に作られて以来、一度も工事が途切れたことが無いという。本作は、このイメージを極端に膨らまし切り、横浜駅が無限自己増殖する世界を描くSF。舞台は世界規模の戦争が起き今の文明が滅びた後である。本州の99%が癌細胞の様に横浜駅に覆われ、四国は無政府地帯、北海道と九州は横浜駅と抵抗戦争を数十年以上続けている。駅の勢力が及ばない、エキソトという数少ない地域で生まれ死んでいく人もいる。こんな設定よく考えるな、とただただ感心した。続きもある様なので、こちらは図書館で借りようと思う。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価3/5。アメトークの本大好き芸人の回で紹介され読む。 連続自殺事件の死体に張られる「暃」というステッカー。この字は、幽霊文字と呼ばれ、音も意味も不明で形だけがある、実際に存在する漢字なのだ。この謎解きをめぐるミステリーで、主題はぞくぞくする。そもそもなんで幽霊文字ってあるのか?や、漢字の成り立ちのパターンも6種類ある、知的にも興味深かった。人物の描き方も好きだ。だがプロットのオチの評価は分かれるところだろう。ちなみに、幽霊文字はほかにもこんなのあるのね。蟐椦妛挧閠彁。確かに見たことないし不気味だ。
が「ナイス!」と言っています。
特盛
評価4.5/5。1983年ノーベル文学賞受賞者である著者の代表作。事前知識なしで読む。スティーブンキングっぽいサイコホラー?って思ったが大違い。無人島に漂着した少年達の関係が、歪み、壊れていく様が描かれる。強烈な寓意性は大江健三郎の飼育などを思い出した。社会において人権や秩序がいかに容易く壊れ、暴力と狂気に支配されるか?このメカニズム。外的恐怖に対するせん妄的団結、ポピュリズム、大衆の狂気、暴力、善人の悪人化など。内部の力学では変えられないという絶望。忘れた頃にはいつでも起こりうる普遍性。子供に読ませるわ
きゃれら
2024/02/01 12:25

>短期間で色々繋がり そういうことってありますよね。ネットのレコメンドもあるけど、自分の無意識的な何かの影響もあるかもと思ってます。僕は今、「死との向き合い」で繋がり中です。

特盛
2024/02/01 13:26

無意識って、ほんと不思議ですよねぇ。自分の人生の主役が意識じゃないかもしれないって、足場がなくなって不安にもなりそう。ただ、偶然っぽく見えるのも、実は偶然じゃないかも、って捉えると新しい楽しみも出そうです。今回は、偶然に見えて実は違う。無意識に何か問があるから、普段なら見落とすところに意味合いを見つけてる、ということだったんじゃないかなと思いました。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2023/08/15(284日経過)
記録初日
2023/03/22(430日経過)
読んだ本
291冊(1日平均0.68冊)
読んだページ
99919ページ(1日平均232ページ)
感想・レビュー
247件(投稿率84.9%)
本棚
0棚
性別
職業
役員・管理職
現住所
東京都
自己紹介

アラフィフ。まだまだ黄昏ではなく、これから夜更かしする気満々。
小説ノンフィクション問わず、科学、SF、ミステリー、歴史、社会学、経済、哲学関連の読み物が好きです。

本を読めば読むほど、自分は思ったほど自由にモノを考えていないかった、時代や社会の大きな流れの中にある小舟の様なものだった、と最近痛感します。

そう考えるようになってから、古典を通じて異なる地域や時代性に触れることも最近は楽しめる様になってきました。

評価は個人的なものです。私との相性だとご理解ください。
物差しは以下の通り
・5:心動かされる。価値観や行動に具体的な大きな影響を及ぼす。一生読み返したい。
・4:メモをとりながら深く読みたい。必ず再読したい。図書館で借りた本ならば手元用に買いたい。人生のテーマを広げる/この本を起点に新しいワクワクする探索領域が広がる。人に勧める。
・3:面白かった。没頭できた。共感できた。1回読めばいい。
・2:読まなきゃよかった、程ではないが、共感できない。没頭できない。目新しくない。読後のもやもやなど。BOOK OFFで売?人にはお勧めしない
・1:読まなきゃ良かった。面白くなくて読み続けるのを断念。

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