絶景の前で日がな本を読みたい!そんな場所を探し求める旅を先週末に敢行。前日は紅葉の前。2日目はまた移動し、ここだ!とテンション高く見つけた場所は滝の向かいに突き出した岩の上。携帯の折りたたみ座椅子に座り、本を読んでは滝を眺めの贅沢な時間をすごしましたが、足下左右が7mくらいの崖で、なんとも落ち着かずww
ゴングール賞取る作品には、おみそれしました、と素直にうならされることが多いなと改めて。プロットやテーマの奥深さだけでない。なんてか、文学への愛が、文学への希望や信頼が、今のこんな時代でもしっかり感じられてうれしくなるのだ。本作は2008年の作品だけど、今更ながら、何でこれまで縁がなかったのだろうな。実にもったい。チェコという国、プラハという町など、東欧についての己の感度の低さにも同じく感じる。
西先生の語りは、自身が共同体なんてクソ食らえ!って、ポストモダン寄りの立場であった若き日を振り返る。その上でヘーゲルを見直して今に至る経緯などは、精神の運動そのものである。人も社会も揺れ動くのだ。マーケット・相場に凄く似ている。行き過ぎて戻り、その時には過去の記憶を保持しつつリニューアルされたまた違う意識を持った存在になっていくのだ。仕事から力抜いて、一人で本ばかりを読んではいられないなと、と私も最近つくづく思う。ヘーゲル的には、例えばストア派的生き方も、いつか飽きて社会への恨みに転化するのだ。
自分にとっての「事そのもの」、共同体・他者との相互承認の関係のあり方、そこでどの様な行動・開かれた議論を行っていくのか?まだまだ長く残っている人生の宿題だわ。って、こういう青臭い話をして少し恥ずかしい。普通は青年期に辿るもんなんだろうな。自分も社会に出た後はバリバリ働いて上へ上へ、しか関心がなかった。何も考える必要が無かった。中年を過ぎたら普通はもう人生固まるもんだろうな。一方迷い迷う自分は。いいも悪いもまるで第二の青春にいるようだわ
教科書からはなかなか伺い知れない、派閥同士の立ち位置、人々や関係が実に丁寧に描かれている。ジャコバン派、ジロンド派、フイヤン派、王党派などなど。これらは常に変化しながらある存在である。派閥として集団を捉えることは、人々をざっくりラベリングすることだ。だが、ラベル化は細部を消し去る。そこには人がいて、想いを持って生きている。当然、個別個別の人の考えはそれぞれ違うし変わるのだ。そしてその小さな差異が、派閥分裂や結成のダイナミズムを生み出し、社会変化の力学となる。これが面白い。
著者がいう様に、資本主義は経済体制というよりもはや社会体制、いわばOSになっていると思う。マークフィッシャーは代替手段の無さへの絶望を”資本主義リアリズム”と呼んだ。本書の提案はアンチ資本主義として、食われる非経済領域同士の連帯か。改めて思うのは、資本主義の矛盾は認めても、そもそも主体が概念的であることの難しさ。またアンチで連携してもそれぞれ欲しいものは違う、という点。これは革命時の論点、自由は合意してもそれぞれが見ている自由は異なる、に似ている。社会の行く末とは矛盾を内包した資本主義の行く末だ。
この年になって、結局自分の人生で必然や自力だ、と思ったことも所詮大きな偶然の流れの中でたまたまそうであったということが骨身に染みてくる。良いことも悪いことも。古来から人は、偶然性の大きな波に飲み込まれそうになるのを、なんとか足掻いて咀嚼しようとしてきた。この、理不尽との闘いの歴史に、時を超えた感情の連帯がしみじみと実感できたのは驚きだ。著者はヴィトゲンシュタイン研究者らしく、運という言葉に様々な角度から丁寧に光を照らす。運と人生の関係の内実についてあちこち彷徨いながらも、充実した吟味が味わえた。
アラフィフ。戦略コンサル、スタートアップを経てプライベートエクイティ業界で15年ほど投資業に従事。今は零細事業主として独立。
まだまだ黄昏ではなく、これから夜更かしする気満々。
小説ノンフィクション問わず、科学、SF、ミステリー、歴史、社会学、経済、哲学関連の読み物が好きです。
本を読めば読むほど、自分は思ったほど自由にモノを考えていないかった、時代や社会の大きな流れの中にある小舟の様なものだった、と最近痛感します。
そう考えるようになってから、古典を通じて異なる地域や時代性に触れることも最近は楽しめる様になってきました。
評価は個人的なものです。私との相性だとご理解ください。
物差しは以下の通り
・5:心動かされる。価値観や行動に具体的な大きな影響を及ぼす。一生読み返したい。
・4:メモをとりながら深く読みたい。必ず再読したい。図書館で借りた本ならば手元用に買いたい。人生のテーマを広げる/この本を起点に新しいワクワクする探索領域が広がる。人に勧める。
・3:面白かった。没頭できた。共感できた。1回読めばいい。
・2:読まなきゃよかった、程ではないが、共感できない。没頭できない。目新しくない。読後のもやもやなど。BOOK OFFで売?人にはお勧めしない
・1:読まなきゃ良かった。面白くなくて読み続けるのを断念。
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図書館の予約が膨大な数で、予約を取り消しました。読みたいですが。。
図書館予約争奪は熾烈ですね。私もこれ借りたんですが結構待ちました。。。定期的に図書館の新刊ページサイトをチェックして、入荷すぐ予約するしかないですねぇ。この手のは