あっという間に終わった2月を振り返り。2月の週末は1月に続き、雪山に籠っていたので、それぞれの本のカバーを見ると安宿の窓からの雪景色が思い出される。雪遊びは雪が少なく苦労したが、3月にもなってやっと本気出してきたみたいな天気で何とももやもや。 2024年2月の読書メーター 読んだ本の数:20冊 読んだページ数:6420ページ ナイス数:779ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1432689/summary/monthly/2024/2
意識は通常、反応で確認する。反応が無くても意識があるケースが理論上存在し、それが結構多いんではないか?(植物状態で1/5)と本書は示す。空恐ろしいことだ。少しマシな閉じ込め状態(眼だけが動く)でも身震いする。向こうの声は聞こえるが、こちらからは通信手段がない。映画インターステラーの、遠く離れた宇宙で描かれる一方通行の通信みたいな残酷さ。ここに意識がある何かである、という神秘は深まるばかり。この理論への批判を少し調べたら、面白いが、この先発展するには検証可能性に難がありと。進化の適用含めそんな領域多いなぁ
ロベスピエールはまだまだ素朴、純真で世間知らずだ。そんな彼が、妖怪の様な知者ミラボーパイセンに刺激を受け、少しずつ強くなっていく。後のダースベーダー、アナキンスカイウォーカーを見ているようだ。選挙に落ち劣等感に苛まれ、何もできないでいた知識人デムーランが変貌する様が面白い。何でもない人が、感情で立ち、民衆の痛いくらいの視線に動かされ、高揚感で立場を引き受け、人は英雄になるのだ。次巻はバスティーユ襲撃だ。何故武器を取らなければならなかったのか。そこに至るまでの経緯も丁寧に描かれており楽しみだ。
そいや、上で述べた「ガソリンの充満した密室」ってどこで聞いたんだっけと思い出したらWW1前のバルカン半島の状況についてのどこかの語りだった。サラエボ事件がなければWW1が起きなかったか?という話の流れだ。本作でも、例えばデムーランの演説がなければ、フランス革命は起きなかったのか?そして今の我々が享受するリベラルな市民社会は無かったのか?夢想することしかできない。もう死んでしまったこれら実在した人物の顔をgoogleで検索してじっと眺め、不思議に親しい気持ちになる。もし近くにあったらお墓参りでもしたいくらい
読後、本作のアメリカ文学への大きな影響を知った。 以下、ヘミングウェイの言葉。 「あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。……すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。」 サリンジャーのライ麦畑もなんだか一人語りが似ているなぁと思っていたら、影響を受けた一冊だと知り、やっぱそうなんだ、と納得。
黒人差別はこの時代では当たり前だった。後から見たら、おかしな社会や倫理も、その時にはなかなか気づけない。これはある意味原理的でもあり絶望的だ。なんてふと読後思いながら、この絶望どこかで見たことあるぞ、と。SF小説三体だ。この絶望がきっかけになり、宇宙人に対してこんな世界を滅ぼしておくれ、というメッセージを送ってしまう科学者が全ての始まりになったね。三体ではカーソンの沈黙の春が題材だった。今の社会の価値観でも、後世からしたら全くけしからん!ってなるのもあるんだろうな。
純文系の人から見たら、著者はかなりクセが強い人と印象を受けるだろうな。例えば、哲学については、まったく勉強したことが無い、と言う一方で新橋の酔っぱらいの方が哲学者より哲学的、と言い切る。人文知的領域が全く人生から切り離された人生の結晶だな。一方で評判は気になるのか、ディスクレーマー的言葉も目立つ。尖っているが、ある種の幼さを感じる。こういう見方で世界を捉えている人もいるのだなぁと新鮮でもあった。
著者が冒頭で紹介する宇宙観「この宇宙は138億年前誕生。この宇宙を生んだ親宇宙は存在していたかもしれない。親宇宙から様々な宇宙が生まれる可能性は否定できない。もっと年齢のいっているのも、若いのも無数にありうる。そして子宇宙、孫宇宙まで。無数の階層が存在する」。現代宇宙論の先端の一つの立場であるこの世界観はパラレルワールドも否定しない。後段紹介される「ボルツマン脳」には、ある意味ニーチェの永劫回帰的世界観も連想した。ここまで来ると、世界はもう何でもありだなwとちょっと楽しくなる。
かつて、占いをチェーンビジネスにしている人と話したことがある。日本には話を聞いてくれる場が少ない。海外はカウンセリングがあるけど。と彼は言った。確かにそうだ。私的なことや、それこそ「贅沢な悩み」に関して「言葉にする」機会がない。言葉にする機会がまず重要ならば、手相やらタロットやら解説理論はどうでも良いことになる。共同体が崩壊して、人はどんどん孤独に分断されるようになった。占い師でなくても、恥ずかしい事を話せる人、というのを持ち、また自分もそういう存在になることが大事だなと感じる。
本論とは少し離れるが、気になったのでメモ:臨床の場で著者が見た人間の狂気の分類。統合失調症・躁うつ病・神経症・器質性精神病・パーソナリティ障害・依存症。改めて眺め思う。多かれ少なかれ傾向を人は持っており、環境に応じて顕在度が変化するのではないか。自分の中にもそれぞれ種があるけど、現実生活で問題にならない限りはまぁ、意識も向かない。現実に問題が起きると意識が向き、病名診断される。おお、こわ。「一つ一つの事が明るみに出るたびにそれは、光でなく、影を投げかけた」という巻末のエピグラムが印象に残る。
うちの妻はリビングに物を置くと怒る。本も例外ではない。なので自分の部屋は床まで本だらけだ。床に本を置きだすと、際限なく散らかる。これは不可逆なプロセスだ。なので床においてはダメなのだ。いくら丁寧に並べても床の本は床の本だ。理解を得るために、妻を本を好きにさせよう、と色々な本を薦める。ようやく月1-2冊くらい読むようになってきた。だがリビングに本棚を置ける日はまだまだ遠い。
この本の主題と離れるが、あるテーマに関して読むときって、複数集中して読んだ方が理解できて味わえるなぁ。例えば、一冊読んで、同じテーマの別の本を読むのが3か月後、ってなるとまず用語の馴染みからだいぶなくなってしまう。一方、間隔が狭い、または同時だと重ね塗りする感覚になる。これは覚えておかねば。特に、手触り感のない宇宙論や素粒子の話など、毎回振り出しに戻ってしまう。あれを読めばこれを読む時間がない。精読と大要を掴む速読など、ちょっと読み方も意識して変えないといけないな。。。
読みながらずっと思っていた疑問。グローバル化やテクノロジーの浸透で、世界が均質化する中でもはや素朴な昔を伝えるリアルな現場が消失する世界で人類学は今どうなっているんだろ?という問いだ。これにもしっかり大きな問題意識として巻末に作者が取り上げているのが興味深かった。人類学は外を見る。その外、は今や動物や植物、その他環境まで射程をとらえだしていると。知人に人類学者がいる。これまで、イマイチ何をやっている人なのかよく分からなかったが、今度じっくり色々話を聞きたいとが沢山できた。
印象に残った点。オノマトペは違う言語の話者にはなかなか理解できない点。やっぱり人間ってのは実に社会的枠組みの中の生き物なのだなぁと驚いた。後は、自分が言語を当たり前の様に使っている様に思えるが、どう習得していったか、のプロセスを何も覚えていないし、それが実に不思議なことだと改めて思い知らされた点。言葉というのは実に懐の深いテーマだな。言語学ラジオ、今度聞いてみよう。
全体、偶然性とそれを取り巻く説明と理解の断絶の議論が強く印象に残る。先日少し勉強したリチャードローティ―と、古生物学者スティーブンジェイグールドは似てるなと思った。前者は「理解」の領域で偶然性の論点をぶち上げた。後者はよりアレルギーが予想される「説明」の領域でそれをやった。どちらも主流からボコられたという感覚。理不尽さは今読んでるダンバーの、宗教の起源にも繋がる。差異や生成変化といった現代思想にも。偶然性と理不尽さへの向き合いは、今後も人生のテーマになりそうだなと改めて思った
雑感追記。個人的には、金融マーケットにずっと触れていたから偶然性、というワードがより魅力的に映るのかもしれない。何百億稼いだって人の言う事は全て正しいのか?というとそうではない。そこには生存者バイアスや、勝った理由で破産するかもしれない、という後付けの論理が潜みうる。進化論にもあるトートロジー的なものが存在する。何十年も投資をしていると、偶然性に必然を無理に見たらいつでも死ぬ、という根本的恐怖が下地にあるかもしれない。一方で全てが偶然だとすると何をやっているんだ?という話になる。その感覚が本書と近い
印象に残ったのは、DJ社長ってレぺゼン地球ってユニットを作った時に全く音楽の事詳しくないし作曲もできなかったこと。音楽も偶然知り合いの伝手を辿って頼み込んで作ってもらい、後先考えず前に進む。最終的には幕張メッセワンマンライブは全チケット10分で完売まで成りあがる。ブリコラージュ・直感。野生の思考。超人的。そのたくましさに圧倒される。橘玲はSNS/つながり過ぎた世界の残酷さを前に、世界は地獄だと言ったが、地獄を見事に波乗りしている様に見える。と書くと、ほめ過ぎかね。
メディアの発達=政治家と直接相対することがない。ギリシャのポリスでの相対演説と違い、彼我の距離は遠く、断片的に加工され尽くしたた本人としか触れられない。世界は複雑になり、言葉の検証もやれず、その場その場を流し聞きにするだけになっている。我々民衆は政治家(或いは、有名人)をどう評価すればいいか。テレビに映る岸田首相を見ながら、一体この男は誰なのだ?何なのだ?この笑顔はなんなのだ?といちいち不思議、不気味な気持ちになる。
後は、話の本筋自体に最後躓いて混乱している。「7号の最後の言葉は何なのだ?」。3つの可能性。1.死んだと思われた7号は生きていて声をあげている。(監察医が7号を生かしている)→前書きで明確にクーデータは2回と書いている。7号は厳密には政権取得取っていないとすると、2回目は首都防衛司令官政権の転覆か?。2.7号は死んでいる。独裁者の演説時に声が記録され、(誤って?意図的に?)削除されずに録音が誤って再生されている。3.幽霊の声。或いは心の残響。故に首都防衛司令、少佐にも聞こえない。・・・うーむ。
先般読んだ、千葉雅也の勉強の哲学の、アイロニカルな態度、新しい言葉を操る感覚、自分を仮固定する議論、とかなり重なる部分があるので、あちらももう一度読み返したい。ところで利潤目的の企業向け研修でそもそも哲学なんてやる(私は講師でなくアシスタント)と、仕事なんてしてる意味がねぇ!って人はやる気なくなる恐れもある。プラグマティズムに素材が向くのは原理的に仕方ないのかもしれない。危険な中二病的哲学探究の沼の浮き輪としては、とても心強いが、これで議論が終わるのもまた違う。1984であった二重思考が人生には重要だ
儲かります!という殆どの投資の本は生存者バイアスの塊だ。本書も原理的にその宿命を帯びざるをえないが、卓越した成果の全ては偶然ではない。手っ取り早く儲けましょう、って本ではないし、忍耐と成果には流さなければいけない血があることを否定しない親切な本だと思う。卓越した実績を出した人が失敗を丁寧に話してくれるのは大変フェアで好感できる。清原氏は病気で声を失い、自身の仕事での限界を感じ引退する。バラ色に見えて妬みの対象になっても、皆それぞれしか分からない苦悩や理不尽な地獄があり、目の前を一生懸命生きるしかないのだ
特盛さん、詳細なレビューありがとうございます。とても参考になります。図書館予約待ち50人以上なので、買うか迷ってましたが、やはり買おうかな。私は不動産メインで、株はわずかなので初心者ですが、気長に勉強していきます。
まず灯台守、という職業が良い。連絡船は3か月に1回。他者から距離を置き、星空、海、美しい自然に囲まれ、しかも海の安全に貢献するという社会貢献感も満たされる。そこに妻・外から来た子供という「他者」が登場する。他者は幸せも混乱ももたらす。一人には動きはなく、時間は死んでいる。他者が入ると動きがあり、変化は時間を作る。冒頭、傷心のトムは一人死んだ時間の中に生き方を志向するのは無理もない。だが、人の心は他者を磁石の様に求める。また勝手に向こうからやってくる。孤島といえども避けられない。
にしてもハヤカワepi文庫は外れなくいい仕事しますなぁ。レスペクト。読み易い文章なので、さらっと読めてしまうんだが、もったいない気がするので、下巻はウィスキーを味わう様にちびりちびりと読む事にする。
時代時代の過去の小説を振り返ることに思う。作家は時代/社会に敏感にテーマを追い求める。売れる為だ。だが大体のテーマは一時的で少し時間が経つとあっという間に古臭くなるものだったりする。かといって震災やコロナの様な何十年に一度という大きなテーマは作家以外が散々報道しつくし、読み手は食傷気味になった挙句、むしろもう忘れたいものだったりする。そうすると、一体何が残るのだろうかと考え込んでしまう。
アラフィフ。まだまだ黄昏ではなく、これから夜更かしする気満々。
小説ノンフィクション問わず、科学、SF、ミステリー、歴史、社会学、経済、哲学関連の読み物が好きです。
本を読めば読むほど、自分は思ったほど自由にモノを考えていないかった、時代や社会の大きな流れの中にある小舟の様なものだった、と最近痛感します。
そう考えるようになってから、古典を通じて異なる地域や時代性に触れることも最近は楽しめる様になってきました。
評価は個人的なものです。私との相性だとご理解ください。
物差しは以下の通り
・5:心動かされる。価値観や行動に具体的な大きな影響を及ぼす。一生読み返したい。
・4:メモをとりながら深く読みたい。必ず再読したい。図書館で借りた本ならば手元用に買いたい。人生のテーマを広げる/この本を起点に新しいワクワクする探索領域が広がる。人に勧める。
・3:面白かった。没頭できた。共感できた。1回読めばいい。
・2:読まなきゃよかった、程ではないが、共感できない。没頭できない。目新しくない。読後のもやもやなど。BOOK OFFで売?人にはお勧めしない
・1:読まなきゃ良かった。面白くなくて読み続けるのを断念。
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