読書メーター KADOKAWA Group

2024年6月の読書メーターまとめ

zunzun
読んだ本
17
読んだページ
4614ページ
感想・レビュー
6
ナイス
82ナイス

2024年6月に読んだ本
17

2024年6月にナイスが最も多かった感想・レビュー

zunzun
数十年ぶりに買い直して読んだ。この本を以前読んだとき、まだ新潮文庫の文字は小さかった。多くの評者がいうとおり、本書は晦渋な内容もさることながら、非常に難解な漢語が駆使される。また表現も俳句、漢詩、古諺、英詩などがこれでもかというほど引かれ、それについての論評なども行われている。あらゆる文学表現の宝庫ともいえる小説なのである。解説は江藤淳と柄谷行人という豪華さだが、さすがに現代の漱石研究者にしてもらいたかったりもする。『草枕』は「俳句的小説」といわれていたがこれでは何のことか普通はわからないのではないか。
zunzun
2024/06/23 14:14

そして私ズンダはこれは「俳句的小説」ではなくて「俳文」といわれるジャンルに属すると再読しながら思っていた。今なら岩波文庫において松尾芭蕉の弟子であった各務支考の孫弟子の横井也有『鶉衣』が手に入るので『草枕』という近代文学ではない、前近代文学の系譜を感じたい人はこれを読んでみるといい。『草枕』に近いものを感じるだろう。このように捉えてみると小説というのは実に批評要素が強いものだとわかるはずだ。そこにあるのは物語だけではない。作者が把持している現実への激しい批判精神なのである。

zunzun
2024/06/23 14:21

様々に意匠を凝らし、批判する。そのための意匠として俳句、漢詩、古諺、英詩は利用される。『草枕』のなかでも主役と那美との間で小説の「筋」について語られているが、これは本書自体に「筋があまりない」からである。そして、画工である主役の藝術論は「言葉にできそうだができない段階に藝術の極地がある」といったものだ。「言語化と非言語化の際」なのである。この曖昧な、つまり依稀こそが『草枕』であったといえる。これは漱石の死後、谷崎潤一郎と芥川龍之介の間で始まることになる論争『文芸的な、余りに文芸的な』に引き継がれる。

が「ナイス!」と言っています。

2024年6月の感想・レビュー一覧
6

zunzun
「日常美学」という聞き慣れない家を中心とした生活に焦点を当てた美学を展開する本。教科書や入門書などではなく、佐々木健一『美学への招待』や以前、私が紹介した井奥陽子 『近代美学入門』などのように収まりの良い本ではない。通常の美学の本にあるような理屈っぽい説明もあまりなく、読書感想文を書くのも難行である。2000年代にはいってから盛んに議論されるようになぅた日常美学は2005年に初の論文集が刊行され2007年にはユリコ・サイトウやカチャ・マンドキという美学者によって『日常美学』という本が出たとう
zunzun
2024/06/24 22:33

しかし、vlogは多くの人々に受け入れられ、何万、何十万と再生されている。 著者はフィンランドの美学者・プオラッカによる日常生活の「ルーティーン」の5つの区分を引用する。そしてこの5つの区分は動画制作者と個人の視聴者との間で「ルーティーンの階層変化」を生ぜしめているというのだ。たとえば「生命維持のためのルーティーン」が人によっては「趣味に関わるルーティーン」にみえる可能性がある。またプオラッカはプラグマティスとのジョン・デューイの「美的経験におけるリズム」の考えを援用し、反復による生活リズムが人間にはあり

zunzun
2024/06/24 22:40

彼の「改良主義」と結びつき、リズムによる単純な反復だけではなく、成長するためのエネルギーを蓄え、生活を改良していくことにつながるという。わかりづらいが、日常のルーティーンの中に変化への胚胎があり、長期的な視野をもちながら、短期的な苦労(たとえば、子育てや仕事、環境の変化)などにおしつぶされることなく、リズムにのって生活の中に美的経験を育むようにしていこうという考えなのだろう。このように生活に美学を孕む要素をみとめることで、凡人でも世界を豊かなものにしていけるのではないかというのが本書の内容である。

が「ナイス!」と言っています。
zunzun
保守思想家として知られる福田恆存の初の評伝である。 福田の人生、業績を纏めた本はこれ以外ない。彼の思想を紹介、批評した本、あるいは息子である逸による父を回顧したものがあった。末っ子である父・幸四朗はサラリーマンでありながらも書道を嗜んでいた。仕事場の電力会社も「柱登り」という工夫を擁しており、今の会社勤めとは雰囲気が異なっていたとされる。他の兄弟はみな職人であった。母・まさの父親も職人先祖は石工職人だった。 福田は東京の下町に育ち、関東大震災前の江戸の面影が濃かった時代に成長した。
zunzun
2024/06/24 21:08

福田の本を読みたい方は新潮文庫の『人間・この劇的なるもの』やちくま文庫の『私の幸福論』、『私の恋愛教室』をおすすめする。政治的な文章が好きであれば文春学藝ライブラリーから浜崎洋介編纂の文庫がある。これらを読めば有名どころは押さえられるだろう。

zunzun
2024/06/24 21:10

それにしても今回この評伝を読んで思ったのは、福田恆存の「弱者論」などはずいぶん自分がnoteで書いてきたスプラ界隈を批判したものと似ているので驚いた。知らないうちに摸倣していたのだろうか。

が「ナイス!」と言っています。
zunzun
人は頼まれることを拒んでない。むしろ、頼まれると喜んでそれに応えようとする傾向がある。問題はその頼み方にあり、人間のアイデンティティを見据えながら、それをすることでどのような効用があるのかを踏まえて申し込むと、すんなりと相手はいうことをきいてくれるといったことがかいてある。今までの心理学的研究を混ぜ合わせることで「頼むやりかた」を記してあるわけだが、単独の研究ではないものもおおく、どこまで現実的なのかはわからない。しかし、何もしらないよりはマシだろう。
が「ナイス!」と言っています。
zunzun
18~19世紀までのイギリスの哲学者、経済学者によって繰り広げられた「人間本性論」をまとめたものである。題名の通り「利己的かそうでないのか?」の応酬が行われていたわけだが、どの学者も「利己的であることは否定しない」のであり、「どこまで、あるいはなぜ利他的か?」が論争の的になっている。今現在、この問題は行動生物学者の格好のネタになっている。書店へいけば「人間は利他的である」といった内容の書物にいくらでもあえるだろう。「利己的、利他的について語りたくなったとき、参照本としてこの本は役に立つだろう。
zunzun
2024/06/23 14:40

○17世紀~19世紀

が「ナイス!」と言っています。
zunzun
数十年ぶりに買い直して読んだ。この本を以前読んだとき、まだ新潮文庫の文字は小さかった。多くの評者がいうとおり、本書は晦渋な内容もさることながら、非常に難解な漢語が駆使される。また表現も俳句、漢詩、古諺、英詩などがこれでもかというほど引かれ、それについての論評なども行われている。あらゆる文学表現の宝庫ともいえる小説なのである。解説は江藤淳と柄谷行人という豪華さだが、さすがに現代の漱石研究者にしてもらいたかったりもする。『草枕』は「俳句的小説」といわれていたがこれでは何のことか普通はわからないのではないか。
zunzun
2024/06/23 14:14

そして私ズンダはこれは「俳句的小説」ではなくて「俳文」といわれるジャンルに属すると再読しながら思っていた。今なら岩波文庫において松尾芭蕉の弟子であった各務支考の孫弟子の横井也有『鶉衣』が手に入るので『草枕』という近代文学ではない、前近代文学の系譜を感じたい人はこれを読んでみるといい。『草枕』に近いものを感じるだろう。このように捉えてみると小説というのは実に批評要素が強いものだとわかるはずだ。そこにあるのは物語だけではない。作者が把持している現実への激しい批判精神なのである。

zunzun
2024/06/23 14:21

様々に意匠を凝らし、批判する。そのための意匠として俳句、漢詩、古諺、英詩は利用される。『草枕』のなかでも主役と那美との間で小説の「筋」について語られているが、これは本書自体に「筋があまりない」からである。そして、画工である主役の藝術論は「言葉にできそうだができない段階に藝術の極地がある」といったものだ。「言語化と非言語化の際」なのである。この曖昧な、つまり依稀こそが『草枕』であったといえる。これは漱石の死後、谷崎潤一郎と芥川龍之介の間で始まることになる論争『文芸的な、余りに文芸的な』に引き継がれる。

が「ナイス!」と言っています。
zunzun
作者であるハインリヒ・マンはノーベル文学賞受賞者トーマス・マンの兄である。弟トーマスと同じく文学を志、耽溺のあまりギムナジウムを退学、父の遺言には「文学という夢見がちなものよりも実学を学ばせよ」とかかれるほどにこの兄弟は文学に魅了されていた。そんな二人だが、ハインリヒのほうはあまり名前をきかない。20年ほど前に訳された本作『ウンラート教授』も漸く岩波文庫にはいったことで、彼の名も周知されていくのかもしれない。無名といってよいハインリヒだが、ウンラート教授は素晴らしい作である。
zunzun
2024/06/05 17:13

トーマスと異なり諧謔を交えつつ淫猥な雰囲気を醸したこの作は生真面目で堅物、石部金吉といってよいウンラート(ドイツ語で汚物の意味)が学生達にその名前もあって小馬鹿にされている。そんな中、学生らがお目当ての女芸人フレーリヒと知り合い、彼女に心惹かれ、いつしか恋人、結婚へと至る。だが、学生と戯れていた女が塚を壊したことで訴えられ、それを弁護した廉で彼は職を解かれてしまう。その後、彼と彼女の住まう場所は私娼窟のような魔魅がゾンする場となり、小市民たちに刺激と興奮とを与える鄭声あふれる館となり、

zunzun
2024/06/05 17:26

街は風紀紊乱、淫祠邪教に染められ、アナーキーが横溢する魔境へと変貌してしまうのだった。これだけきくと、ライトノベルやエロゲーなどでありそうだが、兪り!といっていいだろう。その名前ゆえに貶められていたウンラート、道徳的かつ文学的な教養を持ち得ていた彼にとって大衆一般は侮蔑の対象である。どこかで復讐を望んでいた彼は社交的で官能的な女であるフレーリヒを出汁に数々の男を手玉にとらせ、勝負が付いているはずの輸贏を争い、彼等を屈服させ意地悪に嗤う。支配欲と裏腹である道徳の恐ろしさを剔出した小説なのだ。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2023/09/16(316日経過)
記録初日
2023/02/23(521日経過)
読んだ本
75冊(1日平均0.14冊)
読んだページ
20804ページ(1日平均39ページ)
感想・レビュー
63件(投稿率84.0%)
本棚
1棚
自己紹介

ズンダと申します。Twitter、youtube、はてなブログ、noteをやってます。よかったら全部にきてみてください。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう