はじめはむかむかすることが多くて苦手だったが、読み終わった今はかなり好き。登場人物が、これまで読んできた本の中でかなりトップレベルで人間味があった。的確すぎて、これがあの絵本からうまれたのかと思うと少しギャップもあって楽しい。

短編集。ベイビー夫妻が特に好きだった。まったく話が入ってこない短編もあった。 だが、訳者村上春樹のあとがきを読んだことで 少しは核心を知れたような気がする。その言葉を引用する。 「一見して寓意のようにとられる要素が多く含まれているようだが、それらの多くは計算された寓意というよりはむしろ、きわめて自発的な「イメージの羅列」に近いのではあるまいか」

題名から惹かれて読んだ。とても筆者と自分の考えが似ていると感じた。恋ではないが、みんなを見ていればそれぞれ個性が見えてくる。愛おしくなって、好きになるという感覚が幾度となく繰り返されてきた人生だと思う。この筆者の他の本も読んでみたいと思った。

言葉で稼ぐ小説家という存在が、どんなに難しい事を行っているのか。それをただただ見せつけられた。私が羨むことを、ただの話の接続語として扱い、私が悩む現状を、時に過去の島田雅彦が共に悩んでいた。言葉で紡いだ世界は、人の五感に働きかけることが可能だという証明を、私も貴方のようにしたい。たとえそれが失敗ばかりの道で自身を失った時があったとしても、温かいこの私小説の元に帰って何度でも自分を取り戻したいと思う。つまりは触発されまくりだったという、異端にも成り切れぬ私からのただの感想だ。