【読書メーターの本のプレゼントに応募しました】人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。中島 京子『うらはぐさ風土記』を10名様にプレゼント。応募受付は3月11日(月)の正午まで。応募はこちらから→ https://bookmeter.com/giftbooks/553?track=share
中野のお父さんも四冊目。お父さん元気そうで何よりさ。『漱石と月』は巷で有名な「月が綺麗ですね≒アイラブユー」問題について。実は漱石はそんなこと言ってない、なら何故そんな作り話が発生し流布し定着したのか。まさかの昭和流行歌がネタになっていたかもしれないとは驚きだ。死んだふりで夫を出迎える妻の映画は観たことないけどボカロの歌は知ってるよ。『清張と手おくれ』は社会派ミステリの嚆矢にしてトリックの瑕疵から本格派からは酷評された『点と線』、当の清張自身はどう思っていたのか。あんだけ有名になっちゃうと恥ずかしいよね。
『「白波看板」と語り』は池波正太郎自ら自作小説を脚色した落語の中にベニヤ板という違和感のある単語が出てくる謎。新人社員ちゃんが読んでいた『中島みゆき詩集』が気になるので今度探してみよう。『煙草入れと万葉集』は若き日の圓生師匠も知らなかった幻の十二煙草入れと、消えていく言葉と残しておきたかった言葉について。『芥川と最初の本』は芥川龍之介が最初の本『羅生門』を漱石本にあやかって自装した話。ぱくりじゃないよおまーじゅだよ(byつば九郎)。そして去年のWBCの時は一年後こんな状況になるなんて思ってもいなかったぜ。
善良で不器用だった両親に色々思うことはあったものの、結局その優しさとちょっとズレたとこは間違いなく先生に受け継がれている。『星を編む』は櫂の担当編集だった植木さんと二階堂さんがコミックと文芸の垣根を越えて共闘し、遺作となった小説の出版と絶版にされた漫画の復活を試みる本編の裏話。仕事をバリバリこなしていく有能な二人だけど、どちらも家では不穏な気配が漂っていて、やっぱ家庭と仕事の両立って難しいよね。そして植木さんの名前は渋柿と書いてジュウシと読むそうな。親が昭和の某アイドルトリオのファンだったのもしれないぞ。
『波を渡る』は本編の後日談、暁海と北原先生の穏やかな生活が二人の視点で交互に語られる。北原家の秘密が判明したことで全く世界が違って見えてくるの凄いな。「結婚なんて勢いでするものでしょう?」という名言を発し結ちゃん結婚、偶然再会した明日見さんとの家族ぐるみの交流、家庭崩壊の原因となった瞳子さんとの変わらぬ友情、第二の青春を満喫する母、そして互助関係だったペーパー夫婦が真のパートナーになっていく。傍から見たら確かに常識を超越した関係性だけど、みんなが幸せな人生送れてこっちも嬉しいよ。見てるか櫂、ありがとうね。
加納朋子さんのデビュー作『ななつのこ』シリーズ久々の新作。まえがきにあるようにミステリ色は若干薄めに(ファンタジー色は濃いめ)登場人物たちのその後の暮らしが綴られていて、雰囲気的には『ささらさや』っぽい。ちょっと天然な大学生レイちゃんに飼われ始めた茶色の仔犬ゼロは、強く賢い先輩の黒犬から一人前の勇敢なナイトになるべく英才教育を受けている。そんな中レイちゃんをつけ狙うストーカーが出没し、両親と兄と犬たちは撃退作戦に打って出る。理知的なお父さんとお茶目なお母さんの名前、はっきり明記されなくても分かっちゃうよ。
そして物語は黒い先輩犬に焦点が移る。犬大好きっ子のお兄ちゃんがまだ小さかった頃にクセの強い隣家で飼われていた不遇な白い犬と出会い、ここでも抜群の発想力と行動力を見せてくれるぜお母さん。ろくでもない奴がとうなろうが自業自得だけど、確かにその手はちと危険だねお母さん。そしてちびお兄ちゃんからお母さんへと語り手が代わることでその時の家族の状況が徐々に鮮明になる。一見お気楽極楽に見えるお母さんにも子供たちの知らぬところで辛い思い出や恐ろしい経験があり、それを経て今の家族があるのだ。でもみんな元気そうで何よりだよ。
本が出版されてからは取材や講演依頼も増え(予定が被らなければどんどん引き受けて)、OB川藤氏のYouTubeにも加わって活動の幅を広げていたのに、2022年の6月またも脳腫瘍再発。本当にいい加減にしろよ病魔。今度は入院せずそのまま活動を続ける道を選択。9月には母校グラウンドで始球式、この時点で右目は既に失明状態。2023年2月の講演を最後に動けなくなり、3月に手術後神戸のホスピスへ入所。今度はお父さんも一緒に付き添い、幾度も危篤に陥りながら紙一重で踏み止まり、阪神の優勝を願いつつ7月18日にこの世を去る。
病気と闘う人たちの力になりたい。幼い頃から自分で立てた目標に向かって毎日粘り強く努力してきた横田くん。再発と闘病でどんどん身体が不自由になっていく中、笑顔で勇気と希望の言葉を語り続けた精神力凄いし、ずっと一番近くで支えてきたお母さんも凄いよ。もちろんワンチームとして頑張ったお父さんとお姉さんも。今阪神に残ってる同期入団は梅野・岩崎・岩貞のバリバリ主力、同じく同期組の陽川・よく面倒を見てくれた先輩北條・開幕1番2番コンビを組んだ高山は別の場所で頑張っている。一緒に過ごした時間は長くなくてもずっと仲間だよね。
本書は横田くんの野球人生を綴った自伝。素朴で実直でちと天然な人柄が文章からも感じられる。小学校でソフトボール、中学で軟式、高校は名門鹿実だけど甲子園出場は叶わず、高卒ドラ2で阪神入団。3年目で開幕スタメンを果たすも途中二軍落ち、夏頃から体調不良が目立つようになり、年明け2月のキャンプ中に病気発覚。20歳そこそこで辛すぎる。18時間にも及んだ手術後は一時的に失明状態に陥り、抗がん剤と放射線治療で激しく体力を消耗。そんな彼を病院に寝泊まりしながら支え続けたのは、仕事を辞めて鹿児島からやってきたお母さんだった。
24番を空けて待っている。球団の約束に励まされグラウンドに戻るも、見えにくかったり二重に見えたりする目たけは治らなかった。本人もご家族も感謝しつつも驚いていたように、結果が全ての非情なプロの世界でほぼ実績のない育成選手のために引退試合設けてくれたの、彼が選手として期待されていただけじゃなく、人間として愛されていたってことなんだろうな。そしてその引退試合で起こったのが、今までの努力を結実させたような最高のノーバンバックホーム。鳴尾浜の奇跡に奮い立った一軍も怒濤の連勝で逆転CS進出。ここまではよかったんだよ。
生活するにはちと不便な変な間取りの家。壁やドアの位置や動線の配置が明らかに不自然なそれらは大半が設計ミスに起因するものだろうけど、本書に登場する『変な家』に笑っちゃう要素は一切ない。意図的な計算とどす黒い狂気の共同作業で生まれたホラーな建築物である。元がYouTubeなので小説というよりは脚本っぽく、怪しい建築物の図面を見ながら交わされる筆者と建築家と依頼人との憶測多めの会話で進んでいく。一階台所横の謎の空間と、複数の扉に閉ざされた独房のような二階子供部屋。ミステリ好き建築家の立てた仮説はぶっ飛んでいた。
謎の空間はある目的のために二階と一階を繋ぐ通路かもしれない。いやいやまさかと思ってたら、その話を知った女性が別の変な家の見取り図を持って現れた。台形の庭に増設された不自然な三角形の部屋を持つ第二の変な家にも独房様式子供部屋が存在し、またも恐ろしい憶測が展開する。そして彼女の祖父母宅もまた変な家であり、更に根本には横溝正史もびっくりの呪われた一族の悍ましい過去があったようだ。とんでもねーなここん家、やべー奴しかおらんやん。映画では建築士役は佐藤二朗氏らしく、胡散臭さと鬱陶しさと奇妙な安心感の三位一体パネェ。
万城目学氏に続き森見登美彦氏も京都に凱旋してきたぞ。えっシャーロック・ホームズ?えっヴィクトリア朝京都の寺町通221B?突如天与の才を失い極度のスランプに陥ったホームズが腐れ大学生の如く下宿で管を巻き、同じくしょぼくれたモリアーティ教授と傷を舐め合い、アイリーン・アドラーは向かいで探偵事務所を開業し、相棒に振り回されっぱなしのワトソンにキレ気味の妻メアリは旧友アイリーンとコンビを組む。神社仏閣が点在する京都に英国の家屋が並び、テムズ川の代わりに鴨川が流れ、嵐電と辻馬車が走る和洋折衷パラレルパスティーシュ。
何ともぶっ飛んだ奇抜な舞台設定でありながら不思議と馴染んでる森見色恐るべし。しかしそんな阿呆な日常に過去の超常的未解決事件が不吉な影を落として、遂にワトソンは本家のロンドン版ホームズの存在に気づいてしまう。『夜行』や『熱帯』は夢から夢へと際限なく落ちていく掴みどころのない感じがしたけれど、今回は何故ヴィクトリア朝京都が生まれたのか、ロンドンのワトソンとホームズに何が起こったのか、創造主にとってのホームズとは何なのか、各要素がカチッと嵌っていく。みんなで大文字山にピクニックにいくホームズファミリー可愛いな。
タイプ:どく
分類:ものぐさほんよみ
生息地:カナガワちほう
主な出現場所:としょかん・ふるほんや
特技:ひるね
弱点:あつさ・さむさ・くうふく・ねむけ
持病:かたこり・つかれめ
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善良で不器用だった両親に色々思うことはあったものの、結局その優しさとちょっとズレたとこは間違いなく先生に受け継がれている。『星を編む』は櫂の担当編集だった植木さんと二階堂さんがコミックと文芸の垣根を越えて共闘し、遺作となった小説の出版と絶版にされた漫画の復活を試みる本編の裏話。仕事をバリバリこなしていく有能な二人だけど、どちらも家では不穏な気配が漂っていて、やっぱ家庭と仕事の両立って難しいよね。そして植木さんの名前は渋柿と書いてジュウシと読むそうな。親が昭和の某アイドルトリオのファンだったのもしれないぞ。
『波を渡る』は本編の後日談、暁海と北原先生の穏やかな生活が二人の視点で交互に語られる。北原家の秘密が判明したことで全く世界が違って見えてくるの凄いな。「結婚なんて勢いでするものでしょう?」という名言を発し結ちゃん結婚、偶然再会した明日見さんとの家族ぐるみの交流、家庭崩壊の原因となった瞳子さんとの変わらぬ友情、第二の青春を満喫する母、そして互助関係だったペーパー夫婦が真のパートナーになっていく。傍から見たら確かに常識を超越した関係性だけど、みんなが幸せな人生送れてこっちも嬉しいよ。見てるか櫂、ありがとうね。