“朝食は、玄米御飯にウォーターソテーのきんぴら、野菜の水なし炊き、ワカメの豆腐ドレッシングという品揃えであった。料理は総じて薄味だが、そのぶん、野菜の味がよくわかり、かぼちゃなどはこんなに甘かったのかと意表を衝かれるくらいだ。おまけに食卓のロハス化以降、通じがよくなった”(妻と玄米御飯 P219)小説家・康夫の家で、とつぜん妻がロハスにはまった。ああ白飯とトンカツが恋しい。強まるロハス信仰に辟易、ついに康夫は密かに反撃の狼煙を上げる。それは妻とそのロハス仲間をモデルに小説を書くこと…
P・D・ジェイムズに始まりシリーズものを少々。〈レビュのない本ガチ再毒企画〉は柴田よしき聖黒関連。コナリー最新刊『警告』に気になるワードが出てきて『スケアクロウ』検証。おかげで最終日のレビュが書けてませんがな。写真はJCT裏の公園で見かけたオブジェ■2022年4月の読書メーター 読んだ本の数:18冊 読んだページ数:7540ページ ナイス数:1812ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/200370/summary/monthly/2022/4
Rui Satoさん、いつもコメント頂いただきながら、なかなかお返事できずスミマセン。花ちゃんシリーズに登場する姐さんたち、みんなかっこええです。聖黒、RIKO、花ちゃんシリーズは一冊手に取ると、感想書かないうちに次々読みたくなるので困りますね。
“妻のやさしさに感謝した。初めて作った味噌汁は、全然おいしくなかったのだ。きっと、だしの素の量も味噌の入れ方もでたらめだ。おまけにアジの干物は焼き過ぎだった。それでいて皮に香ばしい焦げ目がないのだから、料理はミステリーである”(「ここが青山」P56)夫・祐輔の会社が倒産した。翌日、妻・厚子が職場復帰し、祐輔は家事を引き受けることに。当初は当然失敗もあるが、日々の食事や弁当作りが格段に進歩していく。夫婦どちらもが快適に過ごせてる感じが微笑ましい。
“朝食は、玄米御飯にウォーターソテーのきんぴら、野菜の水なし炊き、ワカメの豆腐ドレッシングという品揃えであった。料理は総じて薄味だが、そのぶん、野菜の味がよくわかり、かぼちゃなどはこんなに甘かったのかと意表を衝かれるくらいだ。おまけに食卓のロハス化以降、通じがよくなった”(妻と玄米御飯 P219)小説家・康夫の家で、とつぜん妻がロハスにはまった。ああ白飯とトンカツが恋しい。強まるロハス信仰に辟易、ついに康夫は密かに反撃の狼煙を上げる。それは妻とそのロハス仲間をモデルに小説を書くこと…
“よかったら、カッスーレが残っているんだが、温めるのに時間はかからない” “じゃあ、お言葉に甘えて” “リカーズは膝の上に盆をのせたシチューを、まるで何日ぶりかの食事のように、がつがつと食べた。そして終わるとパンに切れ端で皿のシチューをきれいにこすり取った。一度だけ皿から目を上げて” “ダルグリッシュさん、これはあなたが自分で料理したんですか”(P81)ノーフォーク警察の主任警部リカーズが訪ねてきた。妻が里帰り中と聞いていたA・Dが気を利かせ、夕食をふるまう。リカーズは食べ終わった皿を台所へ運び、洗う。
“雲が低く垂れ込め、地面と空が一つの暗闇にすっぽり包まれて、その中で原子力発電所の冷たい輝きが間近に迫って見える。海面に、新発見の銀河かと見紛うばかりの青白い光が流れていた。暗闇では地面が足に固く感じるだけでも、感覚の混乱を招く。ドアから洩れる明りを受けて危険な地面をゆく長い旅(ルビ=オデッセイ)に思えたのか、二人の男は数秒間ためらった。頭上では風車の羽が力を秘めて堂々と、静かに、白く輝いて”(P100)リカーズが風車小屋を辞去する場面である。どこがどうとも説明できないが、好きな描写。
■そもそもの始まり、旧まよてん『真夜中の鎮魂歌』=真夜鎮で天才トランペッターだった今西良はその後、歌手・今西良とサックス奏者・矢代俊一に分割された。どちらも天才でこの世のものとは思えぬ美貌を持つ。サックス(+フルート)奏者にしたのはおそらく、トランペット吹いてる時どんなイケメンでも顔の変形不可避と気づいたのだろう。 ■『死はやさしく奪う』『黄昏のローレライ』での金井恭平は好きなキャラ。音楽小説としての奥行きをかろうじて金井が保ってた気もするが、本作以降…あらすじだけ読んだ同人誌の展開は個人的には残念かも
“ワインはシャトー・ポテンサック78年。メイン・コースのワインとしては面白い選択だ” “アレックス・メイアーの切り分けた野鴨は、みるからに鴨とわかるし、初めて味わったピリッと辛いピカント・ソースは、鳥の味を抑えずに引き立てた。グリンピースと一緒に小山に盛られたカブとパースニップのクリーム煮も、美味しかった。食後はオレンジ・アイスクリーム、チーズ、果物が”(P122)メイアー姉弟の晩餐会。アリスの料理が素晴らしい。料理研究家にありがちな斬新すぎたり芸術作品とは違う、オーソドックスなメニューを満喫する。
“チャブの店を思い出していた。そこでは、正真正銘のビーフステーキが食べられる。なんせ、厚さ5センチもある霜降り肉は、店の裏庭でまさにその日につぶされたばかりの仔牛の新鮮な肉なのだ。それに、メキシコ料理のタマーレ売りのパブロのこと”(ジェイムスン「行き止まり」P218)生活習慣を改められず、案の定二度目の発作を起こした男。パブロのタマーレをもう一度食べられるなら1万ドル出してもいい〜行き着く先は悪魔との契約。行き先は40年前。モシモシ何かお忘れでは〜契約は慎重に
“毎朝の食事に使うお皿は、焼き目のぷつぷつとした気泡を含んだ透明なバタースコッチ。マジパンでできた半熟のゆでたまごをトフィーの小づちでそっと割ると、中からはレモン入りの黄色いシロップがとろりと流れ出します。飲み物のホットチョコレートは、黒いバニラビーンズでできたマグカップ入り。でも、プラムの砂糖漬けを食べるためのフォークはツバメの骨でできていたので、口にするたびにかならず、甘さのうちにも”(ヴァレンテ「精巧な細工」P287)これは凄いぞお気に入りだぞ。序盤の甘さ、中盤からの苦さ、そして…
いっとう最初のまよてんでは、今西良が天才トランペッター設定だったとは、思いっきり忘れてた。美青年になりたい、誰からも綺麗といわれたい、天才と讃えられたい、大人の男にも女にも護られたい、殺されるほど愛されたい、愛されすぎて殺したい…妄想全開、なりたかったものを網羅してこんなキャラが生まれたのだろうか?
くたくたさん、久しぶりに読んでみたら、なんか矢代俊一主演じゃない方がよかった笑。金井恭平は推しときます。音楽多少なりともやってた経験があると、どうでもいいような場面に揺さぶられたり、昔を思い出してこっ恥ずかしくなったり。。。
いいなあ。うらやましい。私、音楽は好きですし、中学時代から、スウィングジャズのLPを自分用にカセットにして、BGMにしてたりしたけど、自分で演奏するとなったら、ピアノの練習曲を「楽譜通り」に弾くのが限界で。作曲できたり、ジャズアレンジで演奏できる友人を羨望の眼差しで見ておりましたよ。ところで、ポチってきました♪
遅レスすまん。ノベルズ2段組で矢代の追想と作者の妄想ぎうぎう笑。シリーズとして同人誌で綿々と発表されてたとは最近知ったばかり。Kindleとか電子全集でその後のことはいろいろ読めるらしいが、金井恭平までキャラ変するんでやめとく〜本作以前の第1期矢代俊一カルテット時代の話『流星のサドル』と、本作以後40歳になって伊集院大介シリーズに進出する『身も心も』は紙本で読むかなと思うとります。
さら〜っと上っ面をなでてきましたが、後々の同人誌ver.にくらべれば、まだ『キャバレー』俊一の面影が色濃く残ってますね。こちらは。ちゃんと男子してますもん。ここでは、暴行されて前進の打撲と骨折を負って3週間の入院、がいつ、3日間に渡って輪姦されて6ヶ月の入院車椅子、に変容するのかしら。
短篇集のコンセプトというか、かなりややこしい成り立ちの部分は著者本人の解説を読むのがベター。収録作二番目の「あの夏ーMorning Light」は『キャバレー』の登場人物・ホステス英子のモノロオグ。矢代俊一への複雑な想いが綿々と綴られる。英子といえば場末K町のナンバー1なのだが、矢代俊一を一目見るなりその尋常ならざる《綺麗さ》を羨み憎むのである。
“年齢のせい、ということはないと思うのだが茗荷の食べすぎかな” “朝食の納豆に茗荷を入れるのは止めにしておきましょうか” “僕の数少ない楽しみの一つなのだよ、だから、それはやっぱり” “じゃああとで茗荷買っておきます” “でももうそろそろ季節は秋も終わりごろだろう” “最近は何でもありますよ。1月の西瓜3月の栗、10月のタケノコだって。あまりにも季節感がないというのも嫌味なものですがね”(黄昏の名探偵 P136)おぼつかない様子の名探偵・陣内主水之介。先生が機嫌よく過ごせるよう介護?する助手の茜丸少年。
“兄の明もね、同じだったの。自分の中の何かと引きかえに凄い音を手に入れて、それがもっと欲しくなって、どんどんシャープになって行って” “そういう人間だから、ジャズなんかやるんだと思う” “あなた、ひょっとすると南部明になれるかもしれない”(P231)映画オリジナルの登場人物・南部恵を倍賞美津子が演じる。アルトサックスの天才と呼ばれた兄・南部明はクスリで死んだ。恵は滝川が過去に愛したただ一人の女でもある。ジャズのお約束的なエピソードが盛り込まれている。
昭和60年第7版での再毒。オリジナル登録寸前にこの書影を発見できた。右は主人公・矢代俊一役の野村宏伸、左はホステス英子役の三原じゅん子。装画は新版のきらびやかなイラストより、やはり当時もの角川映画がらみの方がしっくりくるかも。
“あのロックグループが華々しく解散してくれたのはありがたかったな。あれと政府内のいざこざで一日二日は一面を飾らずにすむ”(P124)おやん? ちなみに物語は1976年秋の設定。1976年の華々しい解散といえば DEEP PURPLE だが、時期は秋じゃなかったような。流行や世相風俗の盛り込み方がなかなか興味深い。ハワース所長の異母妹ドメニカが赤いジャガーXJ-Sに乗っていたりもするのだ。
“台所に降りていくと、プリッドモアのおかみさんはカリッと焼けた厚切りのパンの間に、焼いたベーコンの薄切りをはさんでいた” “ひと晩じゅう起きてなさったんでしょ。ちょっと腰をかけて、これを食べても毒にはなりませんよ。お茶もいれたてだし”(P456)ふだんは食事とワインを愉しむダルグリッシュなのに、事件の最中は食事時間を無視しがち。そういえば昨夜は宿屋から届けられたサンドイッチだけ。気を利かせたプリッドモア夫人の提案がありがたい。マシンガムは喜んでかぶりつく。自家製ベーコンの塩味がしみるぜ〜
“食事がしたいと言うと、パテとソーセージ、それに温めなおしたウサギ肉を出してくれました。とてもおいしかったわ。いろいろおしゃべりもしました。客は主に釣り人なのだとか”(ジョルジュ・ソムノン「メグレのパイプ」P427)原書が仏語で書かれたという意味でのフレンチ・ミステリが苦手で読むのを躊躇ってきたが、実はメグレ夫人が料理上手。〈料理で読む〉にはかなりな読み応えと聞く。手に取る日は来るのか? そういえば作者シムノンが、市原悦子のメグレ夫人が一番イメージに近いと言っていたなー
“アニータが溶けたマシュマロの白い泡を浮かべた熱いチョコレートのカップを2つ、盆に載せて居間に運ぶとフェイ・アリスンはパジャマに着替えて待っていた”(E・S・ガードナー「緋の接吻」P498)主演レイモンド・バー、懐かしのTVドラマ『ペリー・メイスン』…と言いたいところだが記憶にある映像はというと、レイモンド・バーが終始車椅子に乗っていた。それは同じ当たり役でも『鬼警部アイアンサイド』の方だ。
“焼け焦げの痕を削りとった、疵だらけの樫材のテーブルの上に大きな茶色のティーポットが二つ置かれ、ドロシイ・モクソンがそれを取りしきっている。厚切りの茶色のパンの皿が二枚。パンにはダルグリッシュがマーガリンらしいと見たものが薄く塗ってある。蜂蜜とマーマレードの壺。自家製らしい、黒すぐりの実の点々と混じった丸パンの皿。りんごを盛った鉢もあったが、風で落ちた実らしかった。全員、茶色の陶器の湯呑みでお茶を”(P87)ティーポットと湯呑みという表記を故意に混在させ、ステキではないお茶の時間を過剰に表現?考えすぎ?
“いつものパブで” “あたりまえだ。貧乏人の生活を警視に知っていただくんだ”(P206)“注文もしないうちに、主人がビール2パイント、チーズをぎっしり挟んだロールパン、自家製のチャツネの壺、トマトを盛った大鉢を運んできた。ダルグリッシュは自分も同じものでいいと言った。ビールはすばらしく、チーズはイギリス・チェダー、パンは明らかに土地の製品で、気抜けのした大量生産のふわふわではなかった。バターは無塩、トマトは太陽の味”(P207)地元警察から昼食に招かれる。脂ギッシュな室内かと思いきや、気持ちの良い中庭が。
“いつものように入浴にいらしたので、お風呂のあとでお夕食を作って差し上げました。こちらに入浴にいらした時毎回夕食を召し上がるわけではありませんが、あの夜は召し上がりました。マスタード・ソースをかけたポーク・チョップと、じゃがいもとサヤインゲンのソテーを出しました” “で、そのあとは?” “リンゴのタルトとチーズを召し上がりました”(P214)ダルグリッシュとマシンガムがベロウン邸へ。いつも通り立ちはだかるレディ・アーシュラを日記の件でひるませ、頑固なマティにもスウェインとのスクラブルの件で攻撃を仕掛ける。
“一人暮らしの家に不意に客が来られるとどんなに不都合か、彼はすっかり忘れていた。〈黒鳥亭〉に小舟を出したのも、手紙を出すよりミルクを買いに行くためではなかったか”(P253)“二人で坐って、おしゃべりして、お腹がすいたら、スクランブル・エッグを作って” “あなたは黒髪ですものね。でもよくにてらっしゃるわ。坐っているところとか、手、歩き方、それに声もちょっぴりね”(P265)署名の日付を見逃さなかったケイトのお手柄もあり、パズルの完成に欠かせぬ人物を発見。この後ケイトが別れ際にした質問で、事件がさらに動く。
“アランに本を推薦してもらい、彼が自信なさそうに持ってきた本を頑張って読んでいる自分が、我ながらおかしかった。今、彼女がベッドで読む本はエリザベス・ポーエンである”(P309)んんっ!? 「ポーエン」と記されている…「ボウエン」ではなく。作者が意図的に行った? それとも単なる校正ミス? ■気になる箇所もう一つ、“バーバラは僕の従兄弟でしてね”(P346)あーあ、「いとこ」と開いておけばよかったのに。主語が僕ならいいけど、これは明らかに校正ミス。
“お茶はたっぷりあった。耳のない薄いバターつきパン、キュウリのサンドイッチ、クリームとジャムを添えた手作りスコーン、フルーツケーキ。ダルグリッシュは子供の頃の司祭館のお茶を思い出した” “ゴシップ雑誌に変身させるつもりはないでしょうね”(P393)“思いがけない組み合わせの人物たちが一緒に食事をするんです。たとえばレストラン〈モン・プレジール〉で詩人で刑事のダルグリッシュと麗人コーデリア・グレイ”(P394)友人夫婦を訪ね情報収集。夫コンラッドはベロウン関連の記事を載せた《パタナスター・レヴュー》編集長だ
海外ホラー、ミステリ、SF主食の異形読み。
1999年「死ぬまでに10000冊の毒書」を宣言、
年間250冊を読みすすめるも途中7年の沈黙。
2012年、読メ登録とともに復活を果たす。
短編好き。アンソロジストに憧れを抱く。
紙本主義。装丁など本の佇まいにこだわる。
版ヅラやノンブル位置にキビシイ「組版警察」
密林のドイヒー画像が許せぬ「書影警察」
プラクティス好き「試走警察」
三一書房『サイコミステリーベスト100』を
2019年6月、30年がかりでコンプリート。
2020年11月「おあと6000冊」達成。
2023年3月プロフィール更新。
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“妻のやさしさに感謝した。初めて作った味噌汁は、全然おいしくなかったのだ。きっと、だしの素の量も味噌の入れ方もでたらめだ。おまけにアジの干物は焼き過ぎだった。それでいて皮に香ばしい焦げ目がないのだから、料理はミステリーである”(「ここが青山」P56)夫・祐輔の会社が倒産した。翌日、妻・厚子が職場復帰し、祐輔は家事を引き受けることに。当初は当然失敗もあるが、日々の食事や弁当作りが格段に進歩していく。夫婦どちらもが快適に過ごせてる感じが微笑ましい。