この方は自己の感情体験や葛藤をある種の人達には非常に刺さる形で作品に昇華するのが天才的にうまいとおもう。淡々とした第三者的な文章でするので、だれもが自分の内面に重ねながらも、誰かの物語として、淡々と没頭できる。 父との関係や父という人間を作り上げた戦争については、これまで作品の中でたくさんテーマにされ、昇華されており、正面から父をテーマに書いた今作はこれまでの答え合わせ、という腑に落ちる印象を受けた。猫のエピソード（特に最後の）の、メタっぽさと余韻が、村上節全開で好き。

この方は自己の感情体験や葛藤をある種の人達には非常に刺さる形で作品に昇華するのが天才的にうまいとおもう。淡々とした第三者的な文章でするので、だれもが自分の内面に重ねながらも、誰かの物語として、淡々と没頭できる。 父との関係や父という人間を作り上げた戦争については、これまで作品の中でたくさんテーマにされ、昇華されており、正面から父をテーマに書いた今作はこれまでの答え合わせ、という腑に落ちる印象を受けた。猫のエピソード（特に最後の）の、メタっぽさと余韻が、村上節全開で好き。

戦前に、こんなにも多様な子どもたちが一緒になって、伸び伸び学ぶことを許された学校があったなんて、すごいことだと思った。そして何より、他の子とはちょっと違う特性を持つトットちゃんのありのままを認め、枠にはめようとせず、やりたいといったことはそっとさせてくれるお母さん、本当に子どもを信じ愛しているのだろう。こんなふうに子どもの可能性を全肯定して見守ってあげられる親になりたいし、自分自身もまたそうやって育ててもらいたかったと強く思う。