ネタバレ『小説新潮』2023年5月号「やめたいクレーマー」、他は書き下ろし。本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」の続編・連作5編。知らぬ間に多くの人に影響を与えながら、我が道を突き進む成瀬あかり。その前途、誰にも予測不能。個性豊かな面々が、新たな成瀬あかり史に名を刻む。①ときめきっ子タイム：「ゼゼカラ」ファンの小学生。②成瀬慶彦の憂鬱：成瀬の受験を見守る父。③やめたいクレーマー：近所のクレーマー（をやめたい）主婦。④コンビーフはうまい：観光大使になるべくして生まれた女子大生・観光大使-1グランプリ2025。

ネタバレJミステリー他2021-23＋書き下ろし。連作6短編。元マジシャンのバーのマスターと彼の魔術（謎解き）で変貌を遂げる女性たちの物語。東野圭吾さんの作品はどれも読み易く好感度高いが、本作は特にお気に入り。書き下ろしの2編⑤⑥が特に良く、前作の話を鮮やかに回収し、すっきり。マジシャンと誰もが直ぐに判る曲は「オリーブの首飾り」①トラップハンド⑥査定する女：婚活アプリで見つけた相手をバー・トラップハンドに連れてきて、暗黙でマスターに査定を依頼するとびきりの美女。マスターに首を振られてばかりだったが、遂に見つけた？

ネタバレ明晰な頭脳と該博な知識で時代を分析する「脳科学者」と、テレビ界、芸能界を40年生き延び、今や日米のメディアの表も裏も知る「謎のガイジン」が、現代日本を覆う「コンプライアンス」や「忖度」が生み出したタブーをテーマに、ジャニーズ問題から統一教会問題までをも語りつくす。見えてくるこの国の問題点、目指すべき未来とは、「ニッポン」の周縁と中心を自在に往還する二人ならではの異能対談。①メディアとタブー。②炎上とリベンジの遺伝子。③カルトの罠。④ニッポンの分岐点。

ネタバレ1年あまりの闘病生活ののち、嘆かず恨まず、泰然と死んでいった妻。それはまさに「あっぱれな最期」だった。決して人格者でもなかった妻が、なぜそのような最期を迎えられたのか。そんな疑問を抱いていた私が出会ったのは、「菫ほどな小さき人に生まれたし」という漱石の句だった。そうか、妻は生涯「小さき人」であろうとしたのか。61歳、癌で逝った妻の人生を振り返りながら、古今東西の文学・哲学を渉猟し、よく死ぬための生き方を問う。①妻のあっぱれな死。②菫のようなふつうの人。③先人に学ぶ様々な死生観。④小さき人として生きるために

ネタバレ走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物はそれぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。背骨と手足を得て、脊椎動物は長距離を移動できるようになった。「ヒトはコケつつ歩くが、めっぽう効率が良くて速いのはなぜ?」「渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べるのはなぜ?」など、動くための驚きの仕組みを解説。①歩く・走る。②歩く力・走る力。③歩行の進化。④車輪。⑤筋肉－移動運動のエンジン。⑥泳ぐ。⑦流体力学ちょこっと入門。⑧飛ぶ。⑨飛ぶ力。⑩さまざまな飛行。⑪ウニの走行。ウナギ型／アジ型／マグロ型。

ネタバレ『文學界』2021年。2作：①「Schoolgirl」166回芥川賞候補作、②「悪い音楽」。①「小説なんて現実世界の敵」と断じる社会派YouTuberの14歳の娘。私（母）のことを「小説に思考を侵されたかわいそうな女」だと思っている。そんな娘の最新投稿は、なぜか太宰治の「女生徒」について。芥川賞候補作にしては、後半は分かり易かったかなぁ、終わらせ方はあまりすっきりしないが。

ネタバレ「ひと」「まち」「いえ」に続く青春譚。わたし・絹枝は、母・君枝を傷つけた。たった一人の肉親を、言葉のナイフで。中学生の頃、地域の合唱団コーロ・チューロに所属する母から「一緒に歌おうよ」と誘われたのに、撥ねつけてしまったのだ。母が秘めていた想いも知らずに、母はそれから間もなく子宮体がんで亡くなってしまった。あれから13年、後悔ばかりで大人になった。でも、孤独に負けずにいられたのは、母の、仲間の「うた」があったから。大学時代にボーカル担当の絹江が組んでいたバンド「カニザノビー」蟹座のB。

ネタバレ『新潮』掲載。第170回芥川賞受賞作。寛容論が浸透したもう一つの日本で、71階建ての新しい刑務所が建てられることに。犯罪者に寛容になれない建築家・牧名沙羅は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求する。2030年、少しでも差別表現、侮蔑表現に類するものは排除すべく、刑務所⇒同情塔。東京にあるから東京同情塔、リズム・響きを重視して東京都同情塔⇒シンパシータワートーキョー。東京タワーも投票数一位は昭和橙だったが、鶴の一声で決めて正解だった。男性、女性、区別しないのが全性別、響き悪くジェンダーレス

ネタバレ『読楽』2021-23。神田川護岸の排水口から遺体が発見された。遺体は地下水路の「暗渠」を通って流れ着いたらしい。和泉署に合同捜査本部が立てられ、宮下は久しぶりに真壁と組むことになるのだが、真壁が宮下を指名した理由は、警察庁審議官の姪・小牧グレース未歩（大学院論文ネタとして捜査参加志願するも暗渠や下水にやたら詳しい）の御守りを一緒にやって欲しいから。その後、同じように水脈を流れ着いた男女2体の死体が新たに発見され、（世間一般には公表されていない、警察官僚一族にまつわる）過去の事件の復讐のための犯行の疑いが

ネタバレ『毎日新聞』2021-22。本屋大賞第２位。人々が織りなす希望と再生の物語。助け合い、支え合う人々の40年を描く長編小説。身勝手な親から逃れ、姉妹で生きることに決めた18歳の理佐と8歳の律。たどり着いた町で出会った、しゃべる鳥<ネネ>に見守られ、人生が変転していく。ネネはオウムよりも知能が高いヨウムで平均寿命は50年。本作は10年毎の5話構成で1981年、1991年、2001年、2011年、2021年。山下理佐と律の姉妹は全作を通じて登場し、途中から登場するのが、水車小屋の番人（理佐の後任者）として働き

ネタバレ『ランティエ』2023連載。道警・大通警察署シリーズ・第1シーズン完。道警不祥事暴露の反感を買い、捜査の第一線から外され続けた佐伯宏一（と直属部下の新宮昌樹）だが、重大事案の検挙実績で道警一。冷遇を疑問視する声も多く、度重なる警部昇進試験受験の説得に心が揺れていた。その頃、競走馬の育成牧場に強盗に入った4人は計画とは異なり、家人を撲殺してしまう。強盗殺人犯となった男たちは札幌方面に逃走を図る。直ぐに手配が回ることを恐れ、空路利用を躊躇う3人に対し、1人だけ賭けに出て利用。本小説の記述外だが、果たして逃走に

ネタバレ『小説新潮』2019-22＋書き下ろし。本屋大賞候補作。「僕」（小川哲）が怪しげな人物たちと遭遇する6連作短篇。①プロローグ：。② 三月十日：311震災の前日に何をしていたのか思い出せず、友人との会話から記憶を手繰る、失われた時を求めて・勝者による歴史の改竄。③小説家の鏡。④君が手にするはずだった黄金について：黄金律（自分がして欲しいことを他人にしましょう）と銀色律（その裏返し）。片桐は、真逆の価値観を持つ（余計なお世話をする）高校の同級生だった。怪しげな情報商材を売りつけていたが、今や有名投資家。

ネタバレ今世紀最大規模の虐殺が起きているガザ。「それでも停戦をさせられない国際社会」「ネタニヤフが「根絶やし」にこだわる本当の理由」など、「負の歴史」の積み重ねを、中東研究の第一人者が最新事情を交えて解説。池上彰を読んでも理解に苦しんだイスラエルとパレスチナ、特にガザのことが本書ですっと入ってきた。パレスチナに平和をもたらすために必要なのはイスラエル側の譲歩である。この紛争で土地を奪われ人間としての尊厳も無視され続けてきたパレスチナ側には、もはや譲るべきものは何も残されていないから。またパレスチナ人の譲歩という

ネタバレ集英社文庫・書き下ろし。シリーズ第3弾（主人公は順に変わり、八神、最上に続き、本作は朝比奈）。警視庁初の女性部長を目指す刑事が、葛藤を抱えながらも仲間の力を得て事件解決に邁進。SCU(特殊事件対策班)の朝比奈由宇は警部補昇進研修から現場復帰。特殊詐欺犯秋山の尾行中、爆発に巻き込まれ、左鎖骨を骨折。爆破犯は1億円分の宝石を強奪。由宇は爆破現場の対応問題で監察官聴取を受ける。「はっきり言って私はミスしたとは思っていません」「いずれにせよミスはミスだ」「分かっています」：旧知の監察官・古賀との印象的なやりとり。

ネタバレ漱石亡きあと、遺された夏目家の人々はどう生きたのか、個性豊かな親族たちとのエピソードを、日本近代文学の巨人・夏目漱石の孫にして、作家・半藤一利の妻でもある著者・半藤末利子が綴った、滋味あふれるエッセイ集。 それ以上でもそれ以下でもないが、漱石に特別な思い入れのない私には退屈な話だったかなぁ。 【1】ああ漱石山房。 【2】祖母・鏡子の「それから」の人生。 【3】松岡譲・筆子　父母の春秋。 【4】夏目家をめぐる小事件。 【あとがき】夫の遺言？

ネタバレ『小説新潮』2023年5月号「やめたいクレーマー」、他は書き下ろし。本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」の続編・連作5編。知らぬ間に多くの人に影響を与えながら、我が道を突き進む成瀬あかり。その前途、誰にも予測不能。個性豊かな面々が、新たな成瀬あかり史に名を刻む。①ときめきっ子タイム：「ゼゼカラ」ファンの小学生。②成瀬慶彦の憂鬱：成瀬の受験を見守る父。③やめたいクレーマー：近所のクレーマー（をやめたい）主婦。④コンビーフはうまい：観光大使になるべくして生まれた女子大生・観光大使-1グランプリ2025。

ネタバレ『産経新聞』2023年1月8日～7月20日。23年直木賞「木挽町のあだ討ち」受賞第1作。エンタメで幕府の圧政に逆らい東西文化の懸け橋となった自由人・鬼卵を描く痛快長編。絵も歌も戯作もこなし「尼子十勇士」を世に知らしめた栗杖亭鬼卵。寛政の改革で一度は天下人となった元老中・松平定信。身分も考えも正反対な二人の問答は、読み手の人生をも問いかける、自由と反骨で幕政の束縛に抗った文化人の生涯を描く。鬼卵の昔語りはやがて定信の半生をも照らし大きな決意を促す。共に風月を愛で、人生を楽しむとしよう。煙となって後に会おうぞ

ネタバレ書き下ろし。直木賞受賞作。大正から戦後を舞台にした、二人の女性の不思議な絆。裕福な家に嫁いだ千代と、女中頭の初衣。「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。仲間のような、師弟のような関係だった。良家の若奥さまの千代と、元芸者で女中頭の初枝。戦後すべてを失った千代は住み込みの女中に、視力を失った初衣は三味線の師匠となり、立場は逆転するが二人の仲は変わらなかった。①再会：昭和24年。②嫁入：大正15年。③噂話：昭和4年。④秘密：昭和7年。⑤身体：昭和8年。⑥戦禍：昭和16年。⑦自立：昭和24年

ネタバレ『小説すばる』2022-23。脚本家の波多野吉弥は、少年時代に阿倍定事件に遭遇（阿部定の愛人で一物切り取り被害者・石田吉蔵の息子）。以来、脚本家としてゆえあって定の関係者を探し出し、証言を集め続け、阿部定にも伝え、阿部定からも証言を得た。それぞれの証言が交錯する果てに、定の胸に宿る“真実”が溢れ出す。【証言】①佐藤もと：待合「満佐喜」女中。②山本（久野）仙子：幼なじみ。③小堀健太郎（健坊）：雑貨商・小学同級。④森本（桜井）健：元K大学生・現中学教師。⑤小島（奥田）波子：幼なじみ・主婦・二児の母。

ネタバレ『オール讀物』2022-23。性にまつわる犯罪（ジェンダークライム）は連鎖する。誰もが容疑者。誰もが当事者。これは我々の罪だ。裸で縛られ殺されていた男の息子は、集団レイプ事件の加害者だった。土手下に転がされていた無残な男性の遺体。暴行の痕が残る体にはメッセージが残されていた：「目には目を」。明かされる悲しい過去、次々と現れる容疑者、そして新たな殺人。罪を償うべきは、あなたかもしれない。【捜査本部】【八王子南署】◎鞍岡直矢：警部補42歳・妻彩乃・娘悠奈・息子蓮、篠崎亮平：巡査部長、依田澄子：課長・警部38歳

ネタバレ「STORY BOX」2023年9月号（序章、1章）＋書き下ろし（2章以降）。奇跡のロングセラー「本を守ろうとする猫の話」シリーズ第2弾。お前なら、きっと本を取り戻せるはずだ。なぜ本を燃やすんですか？幸崎ナナミは中学2年生。喘息の持病があるため、あちこち遊びに出かける訳にはいかず、学校が終わるとひとりで図書館に足を運ぶ生活を送っている。その図書館で、最近本がなくなっているらしい。館内の探索を始めたナナミは、青白く輝いている書棚の前で、翡翠色の目をした猫と出会う。

ネタバレ身体性に結びつけられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの声で語り、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説。ひとはケアなしでは生きていけない。ではケアをするのは誰なのか。

ネタバレDNAには不思議な魅力がある。大ヒット映画「ジェラシックパーク」では、琥珀の中に遺されたDNAから恐竜を現代に蘇らせた。それは絵空事とは言い切れない。マンモスなど絶滅動物の復活をめざす取り組みは今なお続けられている。古代DNAの研究を進展させた新技術はどのようなものか。生命を操作することに重大なリスクはないのか。科学者たちが織りなしたドラマとともに、起伏に富んだ研究史をたどる。

ネタバレ思考法（マインドセット）が高い生産性を形作っている。圧倒的なパフォーマンスは思考法から生まれていると理解した時、仕事のスタイルは激変し、人生が変わった。圧倒的な生産性を生む最前線の仕事術や、アメリカで見つけたマインドセットを紹介。手を動かす前に理解に時間をかける、準備も持ち帰りもやめる、脳を酷使しない。【1】世界一流エンジニアは何が違うのだろう？生産性の高さの秘密：試行錯誤は悪。理解には時間がかかる。感覚で判断せずファクトを積み重ねる。小さなドキュメントをコードの前に書く。まずエキスパートに頼る。

ネタバレ『小説BOC』2016-18。舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが、まさかの大スランプ。天から与えられた才能はどこへ消えた。ホームズに代わり、探偵業を直ぐ近くで始めた元舞台女優のアイリーン・アドラーの名声は高まるばかり。しかもその助手で事件記録を執筆しているのはワトソンの妻メアリ。リッチボロウ夫人の降霊会。＜東の東の間＞に出現した階段、あたりを白昼のように照らしだす巨大な月、月ロケット発射基地の草原、リッチボロウ夫人の逮捕、マスグレーヴ嬢の帰還、モリアーティ教授の失踪、黒の祭典

ネタバレ『小説新潮』2022-23。祝・第27回日本ミステリー文学大賞受賞。人気シリーズ第10弾。竜崎伸也Xミステリ作家、誘拐事件に挑む！　竜崎のもとに、著名作家・北上輝記が小田原で誘拐されたという一報が入る。犯人も目的も安否も不明の中、北上の友人でミステリ作家の梅林も絡み、一風変わった捜査が進む。一方、警視庁管内では殺人事件が発生。さらに息子の邦彦がポーランド1年留学後に、浪人までして入学した東京大学を中退したいと言い出す。誘拐したのに、犯人から何の要求もないのはおかしい。