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2024年4月の読書メーターまとめ

印度 洋一郎
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感想・レビュー
11
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54ナイス

2024年4月に読んだ本
12

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

印度 洋一郎
昨年、新潟県立近代美術館で開催されたベル・エポック期のフランスの商業ポスターの展覧会の図録として入手。絵画とは異なり、美術とは見られていなかった商業ポスター(要は広告)だが、19世紀末から20世紀前半にかけて、大衆消費社会と印刷技術の発達によって、当時のロートレックやミュシャといった画家達の活躍の場となった。画家にしてみれば、純粋な創作ではない、生活のためのアルバイト的なものだったが、クライアントの要望に応える制約が多種多様な表現を生む。当時流行のアールヌーボー、アールデコの意匠を取り入れており、楽しい。
西澤 隆
2024/04/22 14:13

なるほど、伊香保で竹久夢二記念館をのぞいていて「今は美術品的扱いだけど、当時は流行雑誌の挿絵とかだったんだなあ」と思ったり。商業ポスターもそういう感じ、あるんですね。そう考えると、三毛猫ホームズの挿絵を描いている友人の絵も、50年後くらいには美術品として扱われるのだろうか…と、ちょっと楽しみになったり(笑)。

印度 洋一郎
2024/04/22 16:44

展覧会の方では、ポスターの横にフランス語で書かれたキャッチコピーの日本語訳が掲示されていて、とても親切でしたね。「○○のおいしいクッキー」とか「○○の塗料は太陽にも負けない」とか「アルザスに出かけよう!」とか、あ~こういう事が書いてあるのかぁ、と面白かったです。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
11

印度 洋一郎
「怪獣と猿と巨匠」というボンクラ男子の好物を三題噺のように並べたキャッチコピーが実に秘宝らしい表紙。公開される「ゴジラxキングコング 新たなる帝国」と「猿の惑星 キングダム」をフィーチャーし、「ゴジラ」の方はシリーズを振り返るレビュー、「猿の惑星」関連では映画史の中の猿をざっと振り返る。又、「オッペンハイマー」に関連して、核テロテーマの「太陽を盗んだ男」の長谷川和彦監督へのインタビューが載っているが、ほぼ罵詈雑言で大変インパクトのある内容。45年間映画が撮れないのは、このキャラクターのためかもしれない。
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印度 洋一郎
30年ほど前の本だが、中身は今でもアメリカを理解するために有効ではないかと思う。例えば「政教分離」という概念が、日本とはかなり異なる(多分、これは国ごとでそれぞれ違うはず)。アメリカの政教分離とは、国家が特定の宗教団体(教会)に肩入れしない、という事を主に意味している。それ以前にアメリカは大変宗教的な国で、キリスト教をベースにした「市民宗教」と研究者に呼ばれる独特の強力な信仰がある。移民によって人工的に作られたアメリカは、この信仰を求心力のコアにし、自らを聖書を再現するための特別な国だという意識がある。
印度 洋一郎
2024/04/29 14:04

この他、アメリカ独特の宗派として、モルモン教、アーミッシュ、人民寺院なども解説されている。当初は危険視されていたが(独自の武力も持っていた)、やがてアメリカ社会に同調する事で生き残ったモルモン。現代文明を拒絶しながらも社会と対立せず、「癒やしのアメリカ原風景」として親しまれるアーミッシュ(実際には同系のメゾナイトの方が人口が多い)。現代社会に絶望した黒人(人種差別と貧困)とリベラル白人(理想と目指した社会改革の挫折)が共に破滅の道を選んだ人民寺院。やはりアメリカは濃厚に宗教的な国だ。

印度 洋一郎
2024/04/29 14:09

進化論への反対や中絶論争のような問題は、その背後にはリベラル化、世俗化する現代社会に疎外感を感じる人々の素朴な反発があり、そこにそれぞれの人生観、人間観が絡んでいるので、対話してもなかなか妥協が出来ない。日本では表層に現れる、中絶論争のようなトピックだけを見ているのでわかりにくいが、その背後にあるものは多分が日本人が引いてしまうような強烈な宗教心なので(それは保守派もリベラル派も実は根っこの部分には共有している)、日本の報道や言論はあえてそこには触れないのだろう、という感じもする。

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印度 洋一郎
2016年の森美術館(六本木ヒルズ)で開催された「宇宙と芸術展」の図録。コンセプトは「芸術は宇宙をどう捉えてきたか?」、そして「人類が宇宙を捉えてきたものの芸術性」というところ。前者は曼荼羅図絵やキリスト教の宗教画のように歴史的宇宙観がかたちになったものから、現在の芸術家の絵画、写真、インスタレーションなど多彩。一番興味深いのは1920~30年代のアメリカのSF雑誌の表紙絵で、フランク・ポウルのエイリアン図は今観ると荒唐無稽だが、イマジネーションの豊かさがある。後者は科学史の分野で、こちらも色々と面白い。
印度 洋一郎
2024/04/28 07:13

コペルニクスの著作の実物やガリレオの望遠鏡のレプリカ、一番おぉ!と思ったのは「宇宙旅行の父」ことロシアのツィオルコフスキーの宇宙飛行に関する論文の手稿。こんなものが展覧会で観られるとは思わなかったから、会場で観た時には興奮した。

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印度 洋一郎
イスラムの中でもレバノンとその周辺に住む宗派ドルーズ派について、実際にシリアやレバノンのドルーズ派居住地域でフィールドワークも行っている著者による、日本では珍しい研究本。シーア派から更に枝分かれしたがその経緯がよくわからない起源、常に少数派として時に権力者から抑圧されていた歴史など、この宗派は常に中東史の片隅にあった。しかし、他の宗派が否定する輪廻転生を信じ、メッカを聖地を見做さない等、スンニー派からは「異端」乃至「異教」と見做される教義も解説している。現在はシリアがドルーズ派の中心らしい
印度 洋一郎
2024/04/26 11:20

イスラエルが占領しているシリア南部のゴラン高原の住民はほぼドルーズ派だとは知らなかった。隣接するイスラエル北部にもドルーズ派がいるが、こちらはイスラエル建国時に中立姿勢を保ったためにユダヤ人からは「親イスラエル勢力」と見做され、今では徴兵義務もある(アラブ系イスラエル人にはない)。そのため、周囲のアラブ諸国やパレスチナ人からは「裏切り者」と見做され、差別される理由にもなっているらしい。著者によると、だからといってドルーズ派の集落は総じて貧しく、特に優遇されているようにも見えないという。

印度 洋一郎
2024/04/26 11:22

このイスラエル北部のドルーズ派とゴラン高原のドルーズ派は、歴史的な経緯から血縁もあるが、イスラエル建国後に国境が出来たことで途絶えていた交流が、皮肉な事に占領によって復活している。イスラエルは両者の交流には便宜を図りつつ、ゴラン高原のドルーズ派にイスラエル国籍を取得するように働きかけているが、それに応じるドルーズ派は少なく、この辺に彼らの置かれた複雑な立ち位置が伺える。

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印度 洋一郎
さしずめイタリア版「この世界の片隅に」。書名に「ファシズム体制下」とあるが、別に暗黒時代だったという内容ではなく、ムッソリーニ政権時代のイタリアの庶民(都市部のプチブル、労働者、農村の農民など)の暮らしを当事者達の証言も交えて紹介している。上下水道の整備が進まず、食器とおまるを流し台で洗っていた台所、今よりも破れやすい(舗装道路の少ない道を長時間歩く事が多かった)靴やズボンのメンテの苦労、お菓子とおもちゃに見る子供達の世界などなど。ファシズムはイタリアの階級社会打破に熱心で、ブルジョア趣味を批判していた。
印度 洋一郎
2024/04/26 10:59

衣服や道具のようにかたちあるものは保存されていれば、今でも見る事が出来るが、それを使っていた人達の価値観は証言として記録しておかないと後世には残らない。ファシスト党は国民メディアとしてラジオを格安で普及させたため、イタリア人はこの時代にラジオに親しむようになった。人気の番組はやはり音楽番組。そして、ナチス同様にファシスト党は国民の行楽提供を政策の大きな柱にしており、「人民列車」と呼ばれる行楽地への格安運賃の列車(しかも客車に等級がない!)は党員ではない人もウェルカムで毎回大混雑したという。

印度 洋一郎
2024/04/26 11:06

この辺の「反対する者は容赦しないが、順応する者には恩恵を惜しまず、積極的に楽しみを与える」のが大衆密着の政治運動であるファシズムの特徴か。ファシズムは同時に、それまで比較的万事にゆるいイタリア社会に「時間通りに列車を動かす」とか「職場に遅刻してはいけない」とか規律をもたらした現代化という面もあった。反対派もいたが、結局多くのイタリア人がこの体制を受け入れて支持したのは、そういうメリットを感じていたからだろう。

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印度 洋一郎
昨年、新潟県立近代美術館で開催されたベル・エポック期のフランスの商業ポスターの展覧会の図録として入手。絵画とは異なり、美術とは見られていなかった商業ポスター(要は広告)だが、19世紀末から20世紀前半にかけて、大衆消費社会と印刷技術の発達によって、当時のロートレックやミュシャといった画家達の活躍の場となった。画家にしてみれば、純粋な創作ではない、生活のためのアルバイト的なものだったが、クライアントの要望に応える制約が多種多様な表現を生む。当時流行のアールヌーボー、アールデコの意匠を取り入れており、楽しい。
西澤 隆
2024/04/22 14:13

なるほど、伊香保で竹久夢二記念館をのぞいていて「今は美術品的扱いだけど、当時は流行雑誌の挿絵とかだったんだなあ」と思ったり。商業ポスターもそういう感じ、あるんですね。そう考えると、三毛猫ホームズの挿絵を描いている友人の絵も、50年後くらいには美術品として扱われるのだろうか…と、ちょっと楽しみになったり(笑)。

印度 洋一郎
2024/04/22 16:44

展覧会の方では、ポスターの横にフランス語で書かれたキャッチコピーの日本語訳が掲示されていて、とても親切でしたね。「○○のおいしいクッキー」とか「○○の塗料は太陽にも負けない」とか「アルザスに出かけよう!」とか、あ~こういう事が書いてあるのかぁ、と面白かったです。

が「ナイス!」と言っています。
印度 洋一郎
一言で表現すると「奇書」。「ヒトラーやナチスはオカルトに傾倒していた」という通俗的な風説について、かなり真面目に語っているのだが、やはり内容が「ロンギヌスの槍に宿る霊感」「トゥーレ協会」「宇宙永久氷説」等、雑誌「ムー」的になる、というか、こちらが元ネタ。大体、若きヒトラーがロンギヌスの槍から霊感を得たというくだりは、どこから出て来た話なのかさっぱりわからず、「見たんか、お前?」という感じ。オカルト関係の文献には、真面目でもこういうところがどうしてもついて回る。「主観」に重きをおくジャンルだからだろうか。
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印度 洋一郎
いわゆるミリタリー劇画(作者ご本人によると「自分の絵は漫画でも劇画でもない」)の第一人者、初の連載作品の単行本。やはり、後年の画に比べると模索している感じも濃厚。ドイツ軍戦車搭乗員である主人公が東部戦線、北アフリカ、西部戦線、ドイツ本土とあちこち異動させられるのは、色んな戦場を舞台にするための都合だろうが、やはりクルスク戦は力が入っている。そして、併載される「ソルジャーブルー」は東西両陣営の穏健派が手を組んで、世界各地で大規模な紛争になる可能性のある事件を秘密裏に処理する冷戦時代らしい作品。細い描線が独特
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印度 洋一郎
ソ連崩壊前後の、ソ連を構成していた色々な民族の動向を取材、分析した本。諸民族としてはバルト三国、カフカス三国、中央アジア諸国、そしてロシアに分かれる。ロシア以外の民族はおしなべてロシア人による支配を嫌い、恨み、ペレストロイカ以降は特に自治、そして独立へと向かって動き出す。しかし、それぞれの民族の歴史的経験値の違いで比較的円滑にいった模範例はやはりヨーロッパ圏に属し、近代に独立した歴史もあるバルト三国。それに比べ、歴史的経験値の少ないカフカスや中央アジアは独立が独裁や紛争に繋がっている。
印度 洋一郎
2024/04/15 15:15

ソ連最大の民族だが、意外と民族意識が強くないのがロシア。何故から事実上ソ連=ロシアという体制だったのに、ソ連的なものが即ちロシアであり、諸民族を統治しつつ統合するという建前からロシア民族主義は控え目にしていた。そんな事をしなくても力関係が圧倒的だったのだ。しかし、諸民族から反発され、共存していた地域では排斥され、遂には大前提だったソ連も消滅し、被害者意識で一杯になる。ロシア人の誇りを取り戻せ、ロシア人の世界を守れ、これは三十年近く前の本だが、ウクライナ戦争の遠因が既に見えている。

が「ナイス!」と言っています。
印度 洋一郎
戦記劇画の代表作家、小林源文がホビージャパン誌上でデビューした頃のドイツ軍テーマの作品を収録した短編集。著者曰く「(この頃の)画力の低さに情けなくなる」というが、ファンには貴重な作品ばかり。ハリコフ戦、ビットマン、ハルトマン、マルセイユ、パイパー、マイヤー、ルーデル等々、この頃は源文劇画もいわゆるマンガ絵に近かったんだな、という印象。兵器の硬質な描線、描き込みの多い黒々とした画風は初期から変わらないところ。やっぱり、作品として読ませるのは孤立無援でソ連軍と戦ったアルフレッド・シュナイダー・ライトの戦いか。
英雄伝説
印度 洋一郎
2024/04/05 15:44

珍しいのは、目次にも載っていない4ページの絵物語「終章の始まり」。ノルマンディー戦テーマの作品で、デッサン用の画材に描いてザラザラした画の質感を出している。吹き出しではなく、画と文章を並んで載せる絵物語はコミックよりも情報量が多いので著者としては好きらしい。この作品は今まで単行本未収録だったので、ファンとしては結構嬉しい。あとがきによると、編集部に原稿を持参する途中に紛失し、「探すよりももう一度描いた方が速い」と一晩で描いたそう。

印度 洋一郎
リベラル派白人の著者が、アメリカには「白人」と「黒人」という扱いの異なる二つの国民がいる、という糾弾の書。30年前の内容ながら、様々な統計を引用して、60年代の公民権運動の後も相変わらず黒人への差別は解消していない、という。元々アメリカ社会に人種差別を前提として、様々な仕組みが成り立っているため(制度的人種差別)、積極的な差別解消が政策として求められる。しかし、これはアファーマティブアクションのように、「黒人に下駄を履かせる」事になるため、白人からの反発も根強い。又、リベラル派白人への辛辣な分析も。
印度 洋一郎
2024/04/05 15:30

そして、制度的人種差別の実態はなかなか深刻。「ある地区に黒人人口が増えてくると白人は離れたところに引っ越してしまうので、後には黒人地区が出来る」「ある商品が黒人に人気に出ると、白人に人気がなくなるのをメーカーは恐れる」「大学に進学した黒人学生は少数派であり、常に孤独感と緊張を強いられているので、結果とし中退者が白人よりも高比率になる」「白人の多い職場に黒人が入ると双方が緊張する。黒人は白人の価値観に合わせることを常に考え、白人は黒人が自分たちに差別されていると思わないかと懸念する」などなど。ストレスフルだ

印度 洋一郎
2024/04/05 17:51

アジア系やヒスパニック(ラテンアメリカ系)は、白人と黒人の間の中間層(中流階級ではなく、白人社会にも黒人社会にも属さない間の人々)であり、アジア系は数は少ないながらも所得や学歴が総じて黒人よりも高く、ヒスパニックはその中に有色人種と見做される人から「白人」と認められる人達も含むという多様な集団で人口比率もじわじわと上がっていた(現在は更に上がっている)。このように黒人は一貫してアメリカ社会の低位に位置づけられる。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2009/11/02(5295日経過)
記録初日
2009/09/18(5340日経過)
読んだ本
1500冊(1日平均0.28冊)
読んだページ
408507ページ(1日平均76ページ)
感想・レビュー
1499件(投稿率99.9%)
本棚
27棚
性別
年齢
56歳
血液型
A型
職業
自営業
現住所
新潟県
自己紹介

 SF、ホラー、軍事、歴史関係の本が好きです。勿論マンガも読みます。
 mixiもやってます。そちらの方に、もっと詳しい書評も書いてます。

 ブログもやってます。 
http://www.moegame.com/movie/archives/cat_印度洋一郎の超映画戦記.html

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