“二丁のハンマーの重さの比率がちょうど二対一か三体二、あるいは四対三の場合、同時に叩いて発せられる音は非常に耳に心地よいハーモニーとなった。のちにピアノの調律の基礎となったわけだ。調和のとれた二つの音とは、もともと衝突する力の比率が作り出した共振だったのだ”

“わたしの信条？考えなんて五分おきに変わる。ピックアップトラックのカーラジオみたいに”

“二丁のハンマーの重さの比率がちょうど二対一か三体二、あるいは四対三の場合、同時に叩いて発せられる音は非常に耳に心地よいハーモニーとなった。のちにピアノの調律の基礎となったわけだ。調和のとれた二つの音とは、もともと衝突する力の比率が作り出した共振だったのだ”

安定の良書、岩波ジュニア新書。ずっと「イギリス国教会って中身はかなりカトリックに見えるが扱いとしてプロテスタントなの…分かるような分からんような…？」という疑問を持っていたのだが、その辺の歴史的経緯についても教義や組織の中身についても、かなり腑に落ちる解説があった。あと、病気や障害が報いや罪のあらわれと解釈される社会だと、手かざしとかで「病気を治す」というタイプの“奇跡”が即物的・現世利益的なものに留まらない意味を持つということに今更ながら気づかされた。

“自分はわりあい信心深い性質だと思う。自然科学を奉じているというよりは、理屈が存在するということを受け入れていて、傾向としてはオカルティストに近い。”あとがきより

前半部分で意味が通る文章は註だけ。

“人種差別の存在論的暴力は、人種差別についての伝統的な論述が示していたような、私たちの主体性に対する暴力ではない。むしろーそしてより切迫的にーそれは私たちの間主体性に対する暴力である。私たちの身体化された共存在に対する暴力なのだ/人種差別は、私たちの主体ーとー対象という必然的に乱雑で両義的な本性にもかかわらず、私たちを主体ー対象の存在論的モデルへと押しやり、一つの世界を（白人の）主体と（人種化された）対象へと分裂させようとする”

“オースレイクはまた、進路を変えるのであれば、もっと強く回さなければだめだよと言う、アリーダは言われた通りにする”

“翻訳された小説を読むとき、みんな、日本語になった海外文学を読んでいると思っている。もちろんそうなんだけど、それは同時に、海外文学をくぐってきた日本語を読むことでもある”

タイトル通り主に女性の名前について江戸から現代までの変遷を追っているが、男性の名前や実印の扱いなど、それ以外の要素の話も多々。ワープロ・パソコン普及以降、本来同じ漢字の異字体にそれそれ別のコードが振られたことなども触れられていたが、マイナ保険証のトラブルの原因のひとつにまさに異字体の話があったんだよな…

“一瞬ののち、ぼくは彼がくずれ落ちる音を聞いた。そして、このような瞬間ごとに、二人は、ただひたすらに耐えしのび、それだけ長く、小さく、果てしのない殺人をおかしているのだ、とぼくは感じた”